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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「二階の他人」(1961)山田洋次監督のデビュー作。

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二階の他人」(1961)を見た。「幸福の黄色いハンカチ」「男はつらいよ」シリーズ、「東京家族」などの山田洋次監督の記念すべきデビュー作。モノクロ、56分。サラリーマン新婚夫婦の間貸し騒動をコミカルに描いたホーム・コメディ。

野村芳太郎監督の助監督を務めた山田洋次監督の映画監督デビュー作ということで、のちの家族をテーマにしたコメディの原型のような作品。

新婚サラリーマン夫婦の葉室正己(小坂一也)と明子(葵京子)は、方々から借金をして、新築の二階建ての家を建てた。二人は二階を貸して、借金の返済にあてる計画だったが、間借り人たちは次々と問題を引き起こす。そんな問題だらけの間貸し人たちに、気弱な夫婦は、毎日、悩まされる…といったストーリー。

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ローンで新築した家の二階を、借金返済のため若い夫婦(平尾昌章,関千恵子)に間貸しするサラリーマン夫妻(小坂一也、葵京子)だが、家賃を2ヶ月も滞納するなど下宿人の行動が腑に落ちない。ふたりをなかなか追い出せないでいる夫。やっとの思いで催促をすると目下失業中という返事。正巳は止むなく勤めている会社の守衛に小泉を推薦することにした。

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しばらくして、葉室家には、豊橋に住んでいる兄・鉄平(野々浩介)と喧嘩をして出てきた、母のとみ(高橋とよ)がやってきて泊まることになった。

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小泉夫妻と親しくなったとみは、二階に遊びに行くので正巳には面白くなかった。また、せっかく世話をした守衛の勤めを小泉が怠けていると知ったとき正巳の忍耐も限界に達した。

正巳が、滞納家賃はいらないからすぐに出て行ってくれと立ち退きを迫ると小泉たちの態度がガラッと変った。彼らは下宿荒しの常習犯だったのだ。粘りに粘って下宿代を踏み倒して、あちこち転々としてきたのだった。小泉たちがようやく引越しをし、とみが帰った時、葉室家には平和が訪れた(かに見えた)。

次の間借人の来島泰造(永井達郎)・葉子(瞳麗子)夫婦は評論家だという。

葉子によると、泰造は銭湯が嫌いだから風呂場を作ってくれといってきた。費用の10万円は自分たちで出すというのだ。正巳たちとはケタ違いの豪華さだ。風呂場が出来た日、とみがまた兄のところから飛び出してきた。

正巳兄弟が集って母の身のふり方について家族会議が開かれた。しかし、結論がなかなかでず、とみは再び鉄平に引き取られた。

しかし、正巳が家を建てる時に鉄平から借りた20万円の返済を迫られた正巳は、やむなく来島から借りて返済した。

その直後、正巳は週刊誌を見て来島が500万円を横領して逃亡した犯人と知った。正巳たちは悩んだ。警察に訴えるにしても風呂場の設置費用の10万円と合わせて30万円は返さねばならない。知らん顔をしているのも口止め料をもらったようで気がとがめるのだった。

クリスマスの夜、正巳たちを来島夫婦が招待した。2階で、音楽に合わせて楽しく来島夫婦は踊りまわった。正巳たちは複雑な気持でみつめていた。自殺でも考えて、その前にドンチャン騒ぎをしているのかとも想像した。

翌日、彼らは自首した。来島から「お世話になった。貸した金は黙っている」といった内容のメモが届けられた。しかし、正巳夫婦は何か気が晴れなかった。妻の明子が「自分達の家を建ててみて、楽しいことは余りなかったわね」というと正巳は頷いた。しかし、二人は二階をまた貸さなくてはならないだろう。「二階のことで喧嘩するのは止めよう」という正巳のことばに明子は頷いた。

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二階の間借り人と家主との騒動をコミカルに淡々と描いている。小坂一也の不器用で情けないサラリーマンが同情を誘う。そんな情けないサラリーマンを試すかのように、様々な試練が続発。後年の山田作品に見られるような主人公を試すかのような加虐性が早くも現れている。新人らしい弾けたところがないのが物足りない。2階のある家ということでは、その後の「男はつらいよ」でも、とらやの2階は、風来坊の寅さんが戻った時に使っていたし、空いている時には、曲がり人がいたこともある(「純情篇」で美人の人妻・若尾文子が間借り、など)。

主人公の母親・とみ(高橋とよ)がケッ作。子供たちから邪魔者扱いされるが、食べ方にも品がなく、花札賭博しか趣味がない、など、昔のあるある。

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