「クリミナル 2人の記憶を持つ男」(原題:Criminal, 2016)を見た。テロ計画を阻止するため当局は殺されたCIAエージェントの記憶と技能を凶悪な囚人に移植。内なる変化に混乱しながら男がテロとの戦いに巻き込まれていくといったストーリー。監督は実録犯罪映画「THE ICEMAN 氷の処刑人」における確かな演出力が絶賛されたアリエル・ヴロメン監督。
“2人の記憶を持つ男”ジェリコを演じるのは、ハリウッドのスーパースターから円熟の演技派へと転身したケヴィン・コスナー。凶悪な死刑囚として収監中の道徳心のかけらも持たず、人を愛したことすらなかったジェリコ(ケヴィン・コスナー)が、CIAエージェントのビル(ライアン・レイノルズ)の記憶の影響を受けて未知の温かな感情に目覚め、新たなアイデンティティーを探し求めていく姿を荒々しくも繊細に体現している。ビルの若き妻役には翌2017年公開の超大作「ワンダーウーマン」の主役に抜擢されたガル・ガドットが出演。脇役には、ゲイリー・オールドマン、トミー・リー・ジョーンズといった大物俳優も出演。
・・・
CIAロンドン支局のエージェント、ビル・ポープ(ライアン・レイノルズ)が、極秘任務の最中に非業の死を遂げた。それを知ったロンドン支局長のクウェイカー(ゲイリー・オールドマン)は動揺を隠せない。
ビルは米軍のあらゆる兵器を思うがままに遠隔操作し、核ミサイルさえも発射できるプログラムを持つ謎のハッカー、ダッチマン(マイケル・ピット)の居場所を知る唯一の人物だったのだ。
世界の秩序を守るために何としてもダッチマンを捜し出し、恐るべきプログラムを回収する必要に迫られたクウェイカーは、記憶の移植実験を研究中の脳外科医フランクス(トミー・リー・ジョーンズ)に協力を要請する。
・・・
刑務所内のジェリコ
ケヴィン・コスナーが珍しく凶悪犯を演じる。グレゴリー・ペックが極悪人を演じるというイメージはわかないが、コスナーは監督からの指名に最初は戸惑ったらしい。しかし、凶悪人物の反面、別の優しい人物の記憶が埋め込まれてもがき苦しむ複雑な心理、人間描写に興味があり挑戦したという。ビルの記憶も時間的制限もある中で、様々な葛藤、苦悩を描かれるところが面白い。
ビルの妻のジルも心中穏やかではなくなる。外見は別人だが、その記憶は、過去の共通の記憶を蘇らせるのだ。ガル・ガドットの美貌も印象的だった。
記憶の移植という奇抜なアイデアだが、説得力もあり、見ごたえはあった。