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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「ガープの世界」(1982)

 
ガープの世界」(原題:The World According to Garp,1982)は長年、未見作品の1本だったが、ようやく見た。一筋縄ではいかない、様々な問題を含んだ映画だ。
 
ジョン・アービングのベストセラー小説の映画化で、監督は「明日に向かって撃て」(1969)「スティング」(1973)などのジョージ・ロイ・ヒル

映画は、クレジットタイトルのバックで宙を舞う赤ん坊の姿が映し出され、バックにビートルズの楽曲「64歳になっても(When I’m  Sixty-Four)」が流れる。この曲は、エンディングでも流れている。
 
曲の内容は「僕が年老いて髪の毛が抜け落ちても愛しておくれ。日曜日はドライブを。つつましくお金を貯めて。別荘に行って。孫を膝に抱き。君が年を重ねても僕は愛し続ける。64歳になっても~」というもの。

オープニングに出てくる赤ん坊、その名はT.S.ガープ、この映画の主人公である。
T.S.というのはTechnical Sergeant (3等軍曹)の略で、空軍飛行士であったガープの父にちなんで命名。母は看護婦で戦傷兵の男を「強姦」して妊娠、T.S.ガープは私生子として生まれた。しかし、出自を悲観することなく、母ジェニーの教えにそって「死ぬまでしっかり生きていこう」する

T.S.ガープは空想好きで、冒険心が旺盛。幼少の頃はパイロットになることを夢見ている。「若死にする家系に生まれたから、その前にニューヨークで作家になる」。
大学卒業後はその希望を叶え、同級生と結婚し自分の家庭を持。ところが、性と暴力に関係した悲劇は常にガープの人生について回ることになる・・・
 
映画では、逆説、パロディ、寓話に満ちたエピソードが次から次に描かれ、ガープという人間を取り巻く人たちを一幅の縮図にしているガープが出会う女たちに、T.S.の意味を説明するのだが、これが字幕の見せ所だ。昔は「とても(T)シャイ(S)」だったが、今は「とても(T)セクシー(S)」といったり、「とても(T)さびしい(S)」などと使い分けている。
 
そんな主人公のガープは、ラストで「プー」という女に拳銃で撃たれ、ヘリコプターで空を飛ぶガープは、そのまま冒頭の赤ん坊のシーンにリンクしているように見えるエンディングだった

・・・
よくよく見ると、登場人物それぞれ奔放な人間ばかり
勤務先の病院で私生児を生む母親グレン・クローズ
性転換して女になったジョン・リスゴーアカデミー助演男優賞にノミネート)。
2メートル近い大男ジョン・リスゴーのオカマ役は気持ち悪いほどだがはまり役。
主役のロビン・ウィリアムスは、童心を持ち続ける表情が憎めない愛すべき人間。
 
物語:
看護婦のジェニー・フィールズ(グレン・クローズ)は赤ん坊を連れ実家に戻ってきた。「T・Sガープよ」 ジェニーは赤ん坊を両親に紹介した。
 
「父親はドイツから瀕死の重傷で運び込まれた軍曹よ、脳をやられていたわ。なのにどういう訳かいつも勃起していた、私がまたがると彼はたちまち射精してベビーが出来たの、彼はそのまま死んだわ」ジェニーがこう説明すると、母(ジェシカ・タンディ)は卒倒し、父(ヒューム・クローニン)はおろおろするばかりだった。

ジェニーはエベレット・ステアリング・アカデミーという男子学校に住み込みの看護婦として働き始めた。ガープは想像力逞しい少年に育っていた。父親はパイロットだったと信じており、絵を描いては空を飛ぶ空想に耽っていた。近所に住むおませな女の子クッシーと遊ぶガープ。それを物陰から見ていたクッシーの妹プーが犬のボンカーズをけしかけた。
 
ボンカーズはガープの耳に噛み付いた。ガープの手当てをしたジェニーは怒りクッシーの父親に食って掛かった。「犬を出しなさい、安楽死の注射をしてやる!」「味が良かったんだろう」と、彼は取り合わなかった。

ある夜、パイロットを夢想するガープが屋根の上で飛行訓練の真似をしていて足を滑らした。雨樋にぶら下るガープを窓から身を乗り出したジェニーがガープの片足をつかんだ瞬間、雨樋が落ちた。
 
ガープはジェニーによって一命をくい止めたが下にいた校長は落ちてきた雨樋に当たり怪我をした。校長を看病しながらジェニーは話した。「軍曹が勃起しているのを見て、私は思ったの、夫婦の務めに縛られず妊娠するチャンスだと当直の夜、私はまたがったの

校長は「君は、死にかけてる男をレイプしたのか!こんな酷い話は初めてだ!」 憤り、手当てもそこそこに部屋から出て行った。

ジェニーは「ママの両親もお前のパパも死んだいつか、私もお前も死ぬのよ死ぬ前にしっかり人生を生きるのよ、生きていくって素敵な冒険よ」ェガープを抱き締めて諭した。

場面は、青年になったガープ(ロビン・ウィリアムズのシーンに変わる。
ガープレスリング部に入り、それと共にレスリングコーチの娘ヘレン(メアリー・ベス・ハート)に恋をした。レリングの試合でもガープは応援席のヘレンに見とれている。ジェニーはそんなガープを見て不快だった。肉欲の塊だわ」。
 
 

ガープはヘレンに近づいていく。「結婚するなら作家がいいわ」ヘレンは言った。ある日、相変わらずセクシーなクッシーがガープを繁みに誘った。二人が抱き合っていると、クッシーの妹のプーが覗いており、通りかかったヘレンを手招きした。ヘレンはガープたちの行為を目撃し幻滅した。

ヘレンに見せようと書いた原稿用紙をヘレンは空中にばら撒いた。あわてて原稿をかき集めているガープを犬のボンカーズが襲った。怒り心頭のガープは今度は負けていない。反対にボンカーズの耳を噛み切ったのだ。「思い知ったか!命だけは助けてやる!」。
 
そんなこんなでジェニーとガープはニューヨークに移り住んだ。
ジェニーもガープ同様、小説を書きたいと思っていた。ガープと町を歩き、街娼に取材するジェニー。ジェニーは自分をモデルにした性の容疑者という小説を書き、それが出版されるやそのショッキングな内容がベストセラーになる。自立した女性の話だった。
 
 

女性集会が開かれ、「ジェニー・フィールズこそ我等のヒロインです!」とあいさつするジェニー。サイン会でサインするジェニーは満足だった。ジェニーは女性解放運動の闘士に持ち上げられていく。

ガープの書いた小説も批評家から絶賛され、ガープはヘレンと結婚した。
ガープがヘレンと家探しに出かけると、ほどよい家が見つかったが、たまたま、どこからか飛んで来たセスナ機が突っ込んだ。「家を買うよ、飛行機が同じ場所に落ちる確率はゼロに近い」ガープは案内した不動産屋に言った。やがてヘレンに男児が産まれ、ダンカンと名づけた。ガープは小説を書き、ヘレンは教壇に立った。

ジェニーの住居には奇妙な女たちが居ついていた。みな何かしら傷を持つ女たちだった。その中にひときわ大きな女がいた。イーグルスフットボール選手から性転換して女になったロバータジョン・リスゴー)だ。「私も子供を持ちたいわ、でも産めないし養子の許可も出ない。男の時に作れば良かった。ジェニーの力を借りて法廷に訴えるつもりよ」ロバータは言う。

さらに、エレン・ジェームシャンという奇妙な女たちもいた。
12歳の時に強姦され、犯人に舌を切り取られたエレン・ジェームズ事件に怒った彼女たちは抗議のため自ら自分の舌を切り取った女たちだった。ガープはそんな彼女たちに批判的だ。自分の肉体を傷つける運動なんてまともとは思えない。

ヘレンは次男ウォルトを産んだ。数年後、ヘレンは男子生徒マイケルと不倫の関係に陥っていく。ある日、ヘレンの教え子からの密告で妻の不倫を知ったガープは、二人の子を連れ映画館に行った。気になり途中で家に電話をかけたが誰も出ないので急ぎ車で引き返した。
 
その頃、マイケルが家に押しかけヘレンに最後の密会を迫っていた。ヘレンはこれで本当に最後よ、と言い車の中でマイケルの要求に応じていた。ガープは子供を乗せ車を飛ばした。そして家の前に止めてあった車に激突した
 
結果、ウォルトは死にダンカンは片目を失明した。ガープとヘレンはむち打ち症になった。そしてヘレンの不倫相手のマイケルも悲惨なことになった。駆けつけた性転換のロバータが言った。「私は麻酔をかけて切り取ったけど車の中で噛み切られるなんて」

ガープとヘレンの間はしばらくギクシャクして気まずい空気が流れたが「お前は看護婦の息子よ、自分で傷を治すのよ」ジェニーの取り成しで修復していく。そして二人の間に女児が生まれ、“ジェニー”と名づけた。ガープは女の子に母親と同じ名前を付けたのだ。ガープはエレン・ジェームズ事件を題材にエレンを出版した。

 母親ジェニーは女性知事候補の応援の為にヘリコプターに乗る。それを見送るガープが叫ぶ。「ママ!父親は必要なかったよ!」だがその声は騒音でジェニーの耳には届かない。

ジェニーが応援演説に立った。演説の途中、ロバータは向かいの建物の窓から銃口らしき影を見つけたその瞬間、ジェニーが胸を撃ち抜かれていた。

「『エレン』運動の支持者たちが君の本に抗議してるぞ」出版社の社長が言った。エベレット・ステアリング・アカデミーレスリング部のコーチになったガープ。彼がコーチをしている時、近づいた看護婦姿の女が拳銃を向けた。「プー!」ガープが見た時、眼鏡をかけたプーがガープを撃った。いつかプーはエレン・ジャームシャンになっていたのだ。

ヘレンに付き添われヘリコプターで病院に運ばれるガープはうわ言のように言った。「空を飛んでる」「そうよ」「飛んでる」私生児ガープの一生が終わろうとしていた。
 
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自分の舌を切って結束するという運動に共鳴するという、なかなか理解しにくい過激な行動をとる女たち。ガープにしても、自分に向かってきたボンカーズという犬に対して、得意のレスリングで押さえつけて、犬の耳を噛み切ってしまうのだ。そういえば、犬が人間を噛んでもニュースにならないが、人間が犬を噛むとニュースになる」という言葉もあった。
 
映画としては、時代背景(ウーマンリブフェミニズム)といった風潮などを理解しないと面食らうことも多い。政治的なメッセージ性もあるようだ。
 
グレン・クローズといえばサスペンス映画「危険な情事」(Fatal Attraction1987)を真っ先に思い浮かべるが「ガープの世界」が代表作といえるかもしれない。
 
メアリー・ベス・ハートは、ヤング≒アダルトYoung Adult、2011などに出演している。ジェシカ・タンディも脇役で登場するが、数年後に「ドライビングMissデイジー」でアカデミー賞助演女優賞を受賞しているべテラン女優だ。
 
一見の価値のある映画だった。
 
☆☆☆
 
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