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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「仁義」(1970)再見。メルヴィル監督の傑作フイルムノワール。



 
 
フランス・フイルムノワールの傑作「仁義」(原題:Le Cercle Rouge「赤い輪」)を再見。1970年12月公開時に日比谷映画で見たので40数年ぶり。
 
決して会ってはならぬ五人の男が、運命の糸に繰られて対決へ追いこまれる。
友情と裏切りがあやなす意地と仁義の男の世界の物語。
 
映画の冒頭で、釈迦の言葉の引用が有り、この映画の原題(赤い輪)の説明がある。
それは・・・。
 
ガウタマ・シッダールタまたの名を釈迦は ひとくれの赤い粘土をつかみ
輪を描き こう言った。 ”人はそれと知らずにめぐり逢うものだ。互いの身に
何が起ころうとも どのような道を歩もうとも その日が来れば 必ずや
その赤い輪の中で結ばれる  ラーマ・クリシュナ」
 
・・・
原題の「赤い輪」を邦題「仁義」としたのは、よく考え抜いたと言えるかもしれない。
このブログで「センスのある邦題」の投票のなかで押している人もいたようだ。
 
それはともかく、この映画は、男同士の友情、信頼、絆を描いている。
宝石強盗で重要な役割を果たす射撃の名手・ジャンセン(イヴ・モンタン)は、
分け前はいらないという。それは、”仕事”を通して苦しんでいたアル中の幻覚から
抜け出すことができたからだし、かつての仲間に対する友情だった。
 
 
 
ストーリーは以下のとおりだが、映像がクールで、寒々とした雰囲気で素晴らしい。
 
西マルセイユ駅発パリ行きの特急列車に、手錠でつながれた二人の男が飛び乗る。
その二人、マテイ警視(ブールヴィル)と容疑者のヴォージェル(ジャン・マリア・
ボロンテ)は寝台車の個室に入り、23時40分、列車は出発。

ちょうど同じ頃、マルセイユに程遠からぬ、ある刑務所の独房の中。
ベッドに横になっているコーレイ(アラン・ドロン)のところへ、看守のシルバンが
そっと入ってくる。シルバンはコーレイに明日が出所だと知らせると、宝石強盗の
“仕事”を持ちかけるのだった。

マテイとヴォージェルの乗った列車の中。
安全ピンで手錠の鍵を密かに外したヴォージェルは、いきなり足から窓を蹴り割ると
外に逃げ去る。列車を止めたマテイは自らも外へ飛び出し、逃げるヴォージェルを
拳銃で狙うが、捉えることはできない。マテイは付近一帯に非常線を張り、検問所
を設けるように手配する。

早朝、シャバに出たコーレイは、あるアパルトマンの一室のブザーを押す。
ブザーに気づいたリコは覗き穴からコーレイを認め、躊躇いながらもドアを開け、
作り笑いでコーレイを迎える。コーレイの昔の仲間であるリコは、コーレイが5年も
刑に服している間、コーレイの昔の女を手に入れていた。
 
リコに金を要求したコーレイは、強引に金庫を開けさせると、札束と拳銃を
奪い取る。

ビリヤード場で一人遊ぶコーレイの元に、リコの手下二人が来て金を返せと脅す。
コーレイは隙を突いて一人を殴り倒し、その流れの中で手下が拳銃を発砲、
別の男の頭に命中する。その拳銃をも手に入れたコーレイは、近くの車屋
中古車を買う。買った車でパリに向かって高速道路を飛ばすコーレイは、途中で
二丁の拳銃をトランクの鞄の中にほうり込む。

ヴォージェルの逃走現場には手配された警官たちが山狩りのためにぞくぞくと
集まっている。警察犬を先頭にヴォージェルの後を追う警官たちの様子は、
さながら人間狩りの体である。
 
コーレイの走る高速では、ヴォージェルを捕らえるための検問所が作られ、コーレイ
も検問を受けるが、ドライブインでの食事の最中、逃走中のヴォージェルが偶然
コーレイの車のトランクの中に忍び込む。

次の検問所で、コーレイはトランクがなぜか閉まっていないことに気づくが、
そこを運よく通過すると、やがて人影のない泥だらけの草原地帯に車を停め、
トランクの中に声をかける。
 
トランクの中から拳銃を構えながら出てきたヴォージェルは、コーレイに銃を向け
つつ、助けた理由を聞くが、コーレイは仮出所証を見せ、ラジオを聴いて事情は
察していると言い、タバコとライターを投げて渡す。お互いに奇妙な友情を感じた
二人は、パリなら安全と、パリに向かって再び走り出す。

リコの手下は、車で先回りして強引にコーレイの車を停めると、コーレイに拳銃を
向け札束を取り返す。そのままコーレイを殺そうと森の中に入れた手下二人だが、
その後ろへ密かにトランクからヴォージェルが拳銃を構えて出てきて、手下二人を
撃ち殺す。手下が懐に入れていた札束は血だらけとなり、それを投げ捨てて、
二人は再びパリへと向かう。

パリ警視庁の監査局長室にて、マテイとその上司が監査局長に事の顛末を説明
している。いかなる容疑者にも無罪の可能性ありと語るマテイに対して、警官も
含めあらゆる人間は有罪なりとの自論を述べる監査局長は、その能力を疑い
つつもマテイにヴォージェル逮捕の任を命ずる。

サンティズというナイトクラブに向かったマテイは、経営者サンティ(フランソワ・
ペリエ)にヴォージェルと友人である証拠の写真を見せ、ヴォージェルの情報提供を
要求する。

コーレイは、看守に聞いた話を元に、ヴォージェルを宝石強盗に誘い、射撃手を
やってくれないかと持ちかけるが、ヴォージェルは俺には無理とそれを断り、
元警官の凄腕の友人を仲間に引き入れることを提案する。

元警官のジャンセン(イヴ・モンタン)は郊外に一人で暮らしているが、今はアル中
特有の幻覚や幻聴に悩まされている。そこへコーレイから電話が入り、二人で会う
約束をする。
                 
森にてリコの手下が殺された現場が検証され、マテイはヴォージェルの逃走と何か
関連があるのではと疑う。

サンティズでコーレイがジャンセンに“仕事”を依頼しているその場に刑事が現れ、
サンティを連行してゆく。サンティを迎えたマテイは、この逮捕はサンティが警察
の“いぬ”であるという評判を立たせないためのでっち上げで、狙いはヴォージェル
の情報提供であると告げるが、サンティはそれをキッパリと拒絶する。

コーレイを介して、車の中で久々の再会をするジャンセンとヴォージェル。
ヴォージェルは、自分は逃走中の身で、相手はジャンセンの警官時代の同期で
あるマテイであると言う。
 
コーレイは今回の“仕事”を知っているのが自分たち3人と刑務所の看守、故買屋
の5人であることを説明し、ジャンセンに現場の下見を依頼する。
 
 

その現場とは、ヴァンドーム広場にあるビルの中のモーブッサン宝石店。
そこへ向かったジャンセンは、同じビルの4階にプルヴィエ家があり、入口に管理人
室があることをチェックしつつ店内へと入ると、ブレスレットや時計を見るふりを
しながら、店内の天井の四隅の警報装置、ケースのロックなどをくまなくチェック、
特に、シャッター奥の壁のキーに鋭く目を光らせる。

店を後にしたジャンセンは、他の二人に対し、看守の情報は正確で、宝石ケースは
防弾ガラスで、開閉もロックもすべて電動式だが、壁のキーがそのケースと通路に
仕掛けた警報装置を制御している、そして、陳列室への通路はその一ヶ所のみで、
さらに防犯カメラがある・・・と説明する。

郊外にある故買屋の家に出向いたコーレイは、今度の仕事で得る宝石が
2千万フランに上ると説明するが、故買屋は細工に手間がかかるので、せいぜい
4分の1の500万フランぐらいしか払えない、支払いはブツを預かった翌日になると
語り、詳細はいずれ新聞で、と二人は別れる。

森に射撃練習のため出向いたジャンセンだが、ブランクのせいか標的を中々
完璧には捉えられない・・・。

閉店後のモーブッサン宝石店では、店主らしき人物と警備員が店の中を点検して
警備装置をセットしている。ジャンセンは家で弾薬を調合、特殊な弾丸を鋳造し、
一方のコーレイとヴォージェルは出掛ける準備をする。

コーレイに宝石強盗を持ちかけた看守に対しリコは、コーレイが出所するとなぜ
報告しなかった?と詰問する。事情を知らなかった、知ってたら・・・と口を濁す看守
に、どういう意味だ?説明しろ!とリコは脅し上げる・・・。

深夜とおぼしき時刻、ある路地裏に車を停めたコーレイとヴォージェルは、近くの
あるビルに忍び込むと、さまざまなビルを伝い歩いて、ヴァンドーム広場を一望
できる、ビルの天井へと出る。
                 
一方、ジャンセンは正装し、見たところ楽器用と思われるケースを持って家を出る。
コーレイとヴォージェルは目的の宝石店の屋根の上まで来ると、縄梯子で宝石店の
トイレの裏へと降りる。トイレの窓から中に浸入した二人は、隙を突いて警備員を
襲って縛り上げると、ジャンセンの到着を待つ。

宝石店のビルの前まで来たジャンセンは、入口で管理人に4階の住人プルヴィエ
だと騙ると、4階まで上がる振りをし、靴を脱いで2階の宝石店まで静かに降り、
約束の午前3時に他の二人に宝石店の中に入れてもらう。

ジャンセンの持ってきた楽器ケースの中には三脚とライフルが入れてあり、
ジャンセンはライフルを三脚にセットし一旦は照準を合わせるが、突然三脚から
ライフルを外すと、自分の腕に抱えて壁のキーに向かって撃つ。
 
 

これは見事に一発で命中し、特殊な弾丸によってキーが塞がった状態となり、
全ての防護設備は無力と化す。

コーレイとヴォージェルは宝石類を次々と袋に詰め、ジャンセンは一足早く店を後に
する。コーレイの車に乗ったジャンセンが、ヴァンドーム広場に乗り付けたその時、
警備員が防犯ブザーを鳴らす。
 
ジャンセンは他の二人を車に乗せると、猛スピードでその場を後にする。

事件の後、マテイの元には“強盗犯人を知っている”という匿名の密告状が届く。
(これが看守から強盗の計画話を聞いたリコによる仕業であることは明らかで
あろう) コーレイは、故買屋に約束通りブツの買取を依頼するが、騒ぎが大きすぎ
て買い手が付かない、と断られる。実は、これもリコが裏から手を回していた仕業で
あった。

新たな故買屋を探す羽目となった3人は、サンティは信頼できる男だから、仲介を
頼んでみては?と相談する。仲介を依頼されたサンティは、ある故買屋に電話し、
コーレイと会う約束を取り付ける。

そして、刑事がサンティの息子らを捕らえて警察に連行、麻薬をやってる
だろうと
尋問。警察に乗り込んだサンティは、俺を吐かせるために罪のない息子を
しょっ引いたんだろうとマテイに怒る。
 
事実、息子らの逮捕は、サンティに情報を吐かせるための偽装逮捕だった。
刑事の尋問に息子は罪状を吐き、挙句はアスピリンを大量に飲んで自殺未遂を
する。予想外の事態に動揺したマテイだが、クロの息子を助けられるのは親の
君だけだとサンティに語る・・・。

ジャンセンはコーレイに対し、あの特殊な弾薬の作り方は現在は監査局長である
上司に20年前に教わったのだ、また、自分の分け前は要らないからお前ら二人で
分けろ、片がつくまで責任は持つ、と語る。ジャンセンは今回の件をキッカケに
アル中を克服したことで満足だったのだ・・・。
 
 

サンティの仲介で新たな故買屋とナイトクラブで待ち合わせたコーレイ。
現れた故買屋は捌く手順を説明し、引渡し場所の家の地図を書くが、その風貌は
どこかマテイに似ている・・・。

コーレイはヴォージェルに、今度の故買屋は信頼できそうな男で、これから
ジャンセンとその家へ向かう、明日は高飛びだ、と語るが、ヴォージェルの表情は
どこか不安げである・・・。

雨の中、コーレイとジャンセンは車で故買屋の邸宅へと向かう。
邸宅の門前でジャンセンを車中に残し、コーレイだけが中に入り、故買屋に扮した
マテイの出迎えを受ける。
                 
奥に通されたコーレイは宝石を見せ、それに対しマテイは感嘆の口笛を吹き、
サングラスを外してコーレイの顔をジロリと見る・・・ちょうどその瞬間、ガラスの
砕ける音がして、拳銃を構えたヴォージェルが中に入ってくる。

ヴォージェル「コーレイ、ブツをさらって逃げろ!」
一瞬、事態が呑み込めず、呆然と立ちつくすコーレイ。
ヴォージェル「鞄を持って早くズラかれ!!」
コーレイは、その場を急いで逃げ去る。
驚いた表情のマテイ「なぜ俺が誰だか言わなかった?」
ヴォージェル「言えば逃げねえに決まってるさ・・・」

邸宅の木立の中を逃げるコーレイとヴォージェルだが、刑事たちとの撃ち合い
の中、ヴォージェルは倒れる。
 
ジャンセンも警察に向かって銃を構えるが、一瞬早くマテイの銃弾に倒れる。
「君か・・・」自分の銃弾に倒れたのが、かつての同僚ジャンセンであることを知って
驚くマテイ。 先に走り去ったコーレイも逃げ切れず、刑事の銃弾に倒れる。

重い気分で邸宅の門前に出たマテイを、パイプを咥えた監査局長が出迎える。
監査局長「人は皆、罪人だ。マテイ君・・・」 険しい表情のマテイ・・・。


 
・・・
宝石店の厳重な鍵穴をめがけて、ライフルの名手ジャンセンが、発砲するシーン
などはうならせる。アラン・ドロンイヴ・モンタンなどのトレンチコートの着こなし、
タバコの吸い方などが様になっている。(そのうちに、タバコを吸うシーンも映画
ではなくなるかもしれない・・・という時代になってきたが)。
 

「仁義」
原題=LE CERCLE ROUGE
(THE RED CIRCLE)
1970年フランス作品
監督: ジャン=ピエール・メルヴィル
脚本: ジャン=ピエール・メルヴィル
撮影: アンリ・ドカエ 
音楽: エリック・ドゥマルサン 
 
出演: アラン・ドロン
イヴ・モンタン
ジャン・マリア・ヴォロンテ
フランソワ・ペリエ
ブールヴィル

 
 
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