映画「同棲時代 今日子と次郎」(1973)は見ているはずと思ったが、あまりにもヒットした主題曲が刷り込まれて、未見だったようだ。40年前の時代を反映していて面白かった。今見ても、由美かおるがキュートで、大胆なヌードを見せている。
映画は、やや漫画チックなところもある。
セリフや感情(思っていること)が、突然画面にあらわれたりする。
当時の時代背景では、厭世主義や、あきらめ、生きる意味を見失った若者の無気力などが主人公に反映していたようだ。
「同棲」という言葉は、今では手垢がついた言葉だが、当時としては新鮮で、どことなくジメジメした印象があり、反面、その響きには妄想を起こさせるものがあり、自分には無縁だがいいなというなにかあこがれのような響きがあったことも事実。
この映画の関連記事によると、今でこそ、独身男女が一緒に暮らすのはよくあることだが、1970年代は「結婚前の男女が一緒に暮らすなんて、ふしだらだ」という人が多数派。同棲というと「婚前交渉」が前提になり、当時は「もってのほか」が多かった。
NHKが1973年から実施している「日本人の意識」調査によると、同棲がブームになった1973年に、「結婚式がすむまでは性的まじわりをすべきでない」と考える人が58.2%と圧倒的だった。ところが、2013年には「愛し合っているならよい」が46.2%で最多と逆転。40年前に青春を送った若者にとって、同棲は許されない、がちょっと憧れるライフスタイルだったという記事で結んでいる。
当時は100万枚を超えるセールスを記録した「神田川」が流行った時代。
大学生と、印刷工場で働く少女の恋愛物語(映画「神田川」1974年)。4畳半で暮らして、銭湯に二人でかけて、外で待ち合わせて・・・という世界。その頃、1972~73年、双葉社「漫画アクション」では、上村一夫の「同棲時代」(双葉社)が大ヒットした。
売れないイラストレーター、次郎(23)と、小さな広告会社に勤める今日子(21)。
ともに地方から上京してきた2人が恋に落ち、ひとつ屋根の下で暮らし始めるというストーリー。映画化、ドラマ化され、「同棲ブーム」を巻き起こした。
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「同棲時代」の舞台は、古い木造アパート。狭い部屋に、ちゃぶ台と布団と机、タンスが共存。ふすまには穴が開いている。売れないイラストレーターと、しがないOLの
2人暮らしは、どことなく湿っぽい。
のんきな次郎とは対照的に、今日子は不安を抱えている。仕事や結婚、セックスなど、全てを曖昧にしていられる同棲生活。「結婚」となると互いに責任も生まれるが、2人の同棲は、単に様々な決断を先送りにしているだけ、とも取れる。
今日子は、のほほんと生きていくのがいい、と自分に言い聞かせているよう。
そのうち今日子が妊娠すると、次郎はうろたえ、今日子は堕胎を選ぶ。
だんだんと精神を病んでいく今日子。電車が走ってくる踏切で、一瞬、飛び込もうかという衝動にも駆られる。1970年代の同棲は、「自由恋愛」の開放的なイメージとは裏腹に、女性の茫漠とした不安、堕胎という悲しい結末がつきまとっていたようだ。
当時の20代は、今の団塊世代や、その少し下の世代(fpdなど)に当たる。
同棲生活は、いつか終りを迎える。今は楽しいが、いつまでもこうしてはいられない。甘い夢ばかり見ているわけにはいかない。必ず不幸な結末を迎える「同棲物語」は、当時の若者の気分と相まって広く受け入れられた。
映画にも出演している大信田礼子の主題歌が大ヒットした。
こちら↓。
主題歌
(再生は不可のようで、中央のYouTubeをクリック)
四谷、新宿、銀座の風景など1970年代の風景も懐かしい。映画は記録としても時代背景や風俗を写す資料としても価値があると言えそうだ。
「同棲時代」の山根成之監督は、本作がデビュー2作目だが、このあと「愛と誠」「さらば夏の光よ」「パーマネント・ブルー 真夏の恋」「おとうと」など青春映画の佳作を残した。なかでも「さらば夏の光よ」での秋吉久美子と郷ひろみのフレッシュコンビは鮮烈な印象を残した。
山根監督作品:
「復讐の歌が聞こえる」(1968年)
「同棲時代 今日子と次郎」(1973年) ☆☆☆
「新・同棲時代 愛のくらし」(1973年) ※脚本も担当
「しあわせの一番星」(1974年)
「愛と誠」(1974年) ※脚本も担当
「あした輝く」(1974年) ※脚本も担当
「続・愛と誠」(1975年) ※脚本も担当
「おれの行く道」(1975年) ※脚本も担当
「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」(1975年) ※脚本も担当
「さらば夏の光よ」(1976年) ☆☆☆☆
「忍術 猿飛佐助」(1976年) ※脚本も担当
「パーマネント・ブルー 真夏の恋」(1976年)☆☆☆
「おとうと」(1976年) ☆☆☆
「突然、嵐のように」(1977年) ※脚本も担当
「愛情の設計」(1977年)
「ワニと鸚鵡とオットセイ」(1977年)
「ダブル・クラッチ」(1978年)
「九月の空」(1978年)
「黄金の犬」(1979年)
「五番町夕霧楼」(1980年)☆☆☆
「ヘッドフォン・ララバイ」(1983年)
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