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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「地獄に堕ちた勇者ども」(1969)


ルキノ・ヴィスコンティ監督
のイタリア映画「地獄に堕ちた勇者ども」(原題:イタリア語: La Caduta degli dei=神々の没落、
英語: The Damned1969、日本公開1970年)をようやく見た。何度かトライしたことがあったが挫折(笑)。
 
1960年代から1970年初頭にかけてイタリア映画で、デカダンス(退廃的なこと)という言葉に代表されるような映画が流行っていた。貴族の没落や、芸術至上主義を描いた作品だった。ちなみに、右の写真のガーターの踊り子は男である(笑)。
 
中でも古代ローマ時代の退廃を描いたフェデリコ・フェリー二の「サテリコン」(1969)がデカダンスの最たるものだったろう。
 
キネマ旬報・外国映画ベストテン(1970年)は、以下の通りだった。
1位:「イージーライダー」(監督:デニス・ホッパー)☆☆☆☆
2位:「サテリコン」(監督:フェデリコ・フェリー二) ☆☆☆☆
3位:「Z」 (監督:コスタ・ガヴラス)       ☆☆☆☆☆
4位:「明日に向かって撃て」(監督:ジョージ・ロイ・ヒル)☆☆☆☆
5位:「M★A★S★H」(監督・ロバート・アルトマン) ☆☆☆☆
6位:「テオレマ」(監督:ピエル・パオロ・パゾリーニ) ☆☆☆
7位:「王女メディア」(監督:ピエル・パオロ・パゾリーニ) ☆☆☆
8位:「冬のライオン」(監督:アンソニー・ハーヴィー) ☆☆☆☆
9位:「地獄に落ちた勇者ども」(監督:ルキノ・ヴィスコンティ) ☆☆☆
10位:「ひとりぼっちの青春」(監督:シドニー・ポラック) ☆☆☆
(1970年のキネ旬ベストテンで唯一「地獄に堕ちた勇者ども」が未見だった。学生のころで小難しいのではという先入観もあった。ようやく完遂!それにしてもこの頃は、パゾリーニの異色作が目白押しで「テオレマ」「王女メディア」のほか「アポロンの地獄」「豚小屋」など空恐ろしい”異常な”映画が多かった。)
 
地獄に堕ちた勇者ども」は、鉄鋼王国一家の悲劇的葛藤を描いた野心作で、当主亡き後の地位を狙う陰謀、策謀、嫉妬が渦巻く狂気をナチスの台頭と合わせて描いている。
 

主演は「できごと」のダーク・ボガードと「野いちご」などのイングマル・ベルイマンの作品を支えたイングリッド・チューリンだが、チューリン演じる未亡人ソフィの息子マーテインを演じたヘルムート・バーガーが圧巻。二枚目でブルーの瞳のヘルムート・バーガーは日本で絶大な人気を誇っていたアラン・ドロンの再来といわれた。「地獄に堕ちた~」では異常性格者を演じた。「個人教授」「さらば夏の日」などで日本で大人気となったルノー・べルレーも出演している。シャーロット・ランプリング(当時23歳)が若い。
 
・・・
1933年、ナチス台頭の時代。ドイツの一大商圏地帯であるルール地方に巨大な権勢を誇る、製鉄王ヨアヒム・フォン・エッセンベック男爵(アルブレヒト・シェーンハルス)一族の上にも、その暗雲が忍び寄ってきていた。
 
総支配人フリードリッヒ(ダーク・ボガード)は、男爵の子息の未亡人ソフィ(イングリッド・チューリン)と愛人関係にあり、性格異常のその息子マーチン(ヘルムート・バーガー)をおとりに男爵の地位を狙っていた。
 
この一族には、ほかにも、姪の娘エリザベートシャーロット・ランブリング)と自由主義者の夫ヘルベルト(ウンベルト・オルシーニ)、虎視耽々と社主を狙う甥のコンスタンチン男爵(ラインハルト・コルデホフ)とその息子ギュンター(ルノー・ベルレー)などがいた。
 
コンスタンチンはナチ突撃隊の幹部でもあった。だが一族の陰には、エッセンベック男爵の従兄であり、ナチ親衛隊の幹部アシェンバッハ(ヘルムート・グリーム)が暗躍していた。
 
ナチスの国会焼打ちの日。フリードリッヒは、アッシェンバッハの命令で計画を実行した。老ヨアヒム男爵は血に染まって倒れ罪は国外へ逃亡したヘルベルトに被せられた。
 
やがて遺言によりマーチンが相続人となったが、実権はフリードリッヒとソフィにあった。これに激怒したコンスタンチンは、ソフィとマーチンを脅迫したが、歴史に名高い〈血の粛清〉の日、突撃隊員は親衛隊によって急襲され、全員射殺されてしまった。
 
その中には、コンスタンチンの無残な死体と、それを冷やかに見下すアッシェンバッハの姿があった。アッシェンバッハの魔手は最後にフリードリッヒとソフィに向けられた。
 
まず母への異常な愛憎に苦しむマーチンを巧みに利用、コンスタンチンの息子ギュンターの純粋な心に家族の醜くい野望の毒をそそぎ込みナチ党員に引き入れてしまった。
 
そんな時に、逃亡していたヘルベルトが戻り、妻と娘を強制収容所に渡したフリードリッヒとソフィを激しく非難した。これも、アッシェンバツハの指金であった。
 
権力をうばわれたフリードリッヒと、息子の肉欲に蹂りんされたソフィはいまや廃人のようになっていた。そんな二人に、親衛隊の黒制服を身につけたマーチンは、結婚式をあげてやった。
 
だが、これは娼婦などを狩り集めた狂宴だった。最後に渡された毒入りカプセルを、残された望みであるかのように、フリードリッヒとソフィは口にするのだった。
 
ナチス・ドイツの恐怖の軍靴の音は、もはやドイツ中に響き渡っていた。
 
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かなり異様で、少女姦淫、男色趣味、乱交など刺激的シーンやナチス親衛隊による全裸の男どもの一斉銃殺といった残虐なシーンもあるので、見る人を選ぶ作品でもある。
 

ダーク・ボガードは、紳士のような役柄が多いが、この映画では、野心をのぞかせ、鉄鋼王国の平取(一介の取締役)に過ぎなかったが、一族の当主の娘の愛人の立場から徐々に地歩を築き上げ、中心者になっていくが、会合などで、席を立とうとするものがいると一喝するシーンがあるが迫力がある。イングリッド・チューリン(写真)は、風格さえ漂わせていた。
 
ヴィスコンティ作品としては、「ベニスに死す」「ルートヴィヒ」へと続く「ドイツ三部作」の第1作である。
 
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