淀長さん風に言えば「これぞ映画。これこそハリウッド映画ですね」か(笑)。
VHSビデオ(字幕なし)を持っていたが見ることなく処分(ガラクタ処分で、GH字幕さんに10本くらい無理やり送り込んだ)、DVDで見た。
おかげで”特典映像”として、この映画のハリウッド・チャイニーズ・シアターのプレミア上映の様子の映像を見ることができた。
プレミア上映に参加した銀幕スター、セレブは受付で「サイン」が必要で、MC(司会者)から、一言感想を求められていた。
参加者の中には、ウォルター・ヒューストン、ルイス・B・メイヤー、エドワード・G・ロビンソン、クラーク・ゲイブル、ダグラス・フェアバンクスJr.、マレーネ・ディートリッヒ、ジーン・ハーローなどがいたが、MCによると、”最大の主役”は、ノーマ・シアラー(1930年に「結婚双紙」でアカデミー主演女優賞を受賞)だった。当時の映画界の人気ぶりがうかがえる。
MGMの映画といえば、あのライオンが吠える映画。このMGMのライオンは、”いい映画だと吠えるが、駄作だと、観客が吠える”といわれるので、安心はできない(笑)。ロゴも時代により変わってきたが、上の写真の左が「グランド・ホテル」のころのロゴ。
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ホテルはいわば人生の縮図。ベルリンの一流ホテルグランド・ホテルには様々な悩みや孤独を抱えた人々が投宿する。
今日も男爵と名乗りながら借金を抱えるニセ紳士や、余命いくばくもない男性、かつては名声を欲しいままにしたバレリーナ、入り婿社長や女性速記者。
そんな人生の虚無を引きずった人間模様の交錯を同時進行で描く方式「グランド・ホテル」形式を生むきっかけとなった極上の人間ドラマ。
映画の最初と最後にナレーションが入ることば「”グランド・ホテル” 人々が集まり、去っていく。すべてはもとのままだ」が、象徴的だ。
本作品の大ヒットを受けて、同様の手法を用いた映画作品(「大空港」「タワーリング・インフェルノ」「ポセイドン・アドベンチャー」「大地震」など)がホテル・空港・港から駅、災害や海難事故に至るまで、さまざまなモチーフを元に製作されるようになり、本作品はいわばグランド・ホテル形式の元祖と呼べる存在となった。
ライオネル・バリモア(左)とジョーン・クロフォード
主なストーリー:
場所はベルリンでも超一流の「グランド・ホテル」。
人気バレリーナだったがいまは落ち目のグルシンスカヤ(グレタ・ガルボ)、大企業の社長だが、会社が危機に瀕し、合併工作を図っている最中のプライシング(ウォレス・ビアリー)とたまたま彼に雇われた秘書フレムヒェン(ジョーン・クロフォード)、借金で首が回らなくなっている自称「男爵」のフォン・ガイゲルン(ジョン・バリモア)、プライシングの会社の経理係だったがクビになり、一生の思い出作りにとこのホテルに泊まりに来た老人クリンゲライン(ライオネル・バリモア)といった客が様々に交錯する。
男爵はグルシンスカヤの宝石を盗もうと彼女の留守をねらうが、本気で彼女を愛してしまい宝石を盗めず、一緒に旅立とうと彼女に約束したものの、金がほしいのでプライシングの部屋に忍び込んだところを発見されて格闘の末、死んでしまう。
一方フレムヒェンはクリンゲラインとお互いに新しい人生を生きようとパリに向かい、男爵の愛を得て生き生きと甦ったグルシンスカヤは彼との待ち合わせの駅へとさっそうたる足どりでホテルを出て行く。
この映画が評判になったのはMGMのドル箱スターが顔を合わせたことに主な原因があるが、映画としても巧い構成でつくられ、人生の縮図を端的に浮かび上がらせたのがなによりといわれる。
登場人物の絡まれさせ方と捌(さば)き方の巧さは舞台劇が土台にあるから当然としても、映像のつなぎ方は当時としては抜群で、悲惨なプロットが多い中でさまざまな人間模様をリレー・タッチで描いて面白さを盛り上げており、そのような印象は抑えられている。
驚いたことに、映画の撮影中、グレタ・ガルボとジョーン・クロフォードが同一シーンに出てくることはなかった。これは彼女たちがお互いに牽制しあったためという。この時、ガルボもクロフォードもともに27歳。ガルボの美貌は目立ったが、出番としてはクロフォードの方が多い印象で、むしろ主役のように感じた。
ガルボは1941年に35歳で引退し1990年に84歳で亡くなるまで表舞台に出ることはなかった。ちなみに1963年に完全引退した原節子は「日本のグレタ・ガルボ」と言われている。94歳で鎌倉でいまも健在という。
一方、ジョーン・クロフォードは、「グランド・ホテル」では、生き生きした現代的な女性で、”速記”タイピストが仕事。金持ちのおっさん達の仕事にかこつけた下心をあっさりと交わすところなど見事に演じていた。
「グランド・ホテル」のキャスティングに関しては、ライオネル・バリモアがつとめた老人クリンゲライン役は当初バスター・キートンが選ばれていた。さらに、ガルボ自身は最初ジョン・ギルバートと演ずる予定だったが彼の人気が下降線になったので見送られたとされ、結局ガルボはMGMにおいてジョン・バリモアと3度の共演を果たすことになった。
出演:
クリンゲライン:ライオネル・バリモア
オッテルンシュラーク医師:ルイス・ストーン
ポーター:レオ・ホワイト
「お気に召すまま(1932)」のグレタ・ガルボ。
「雨」「蜃気楼の女」のジョーン・クローフォード。
「チャンプ(1931)」「肉体」のウォーレス・ビアリー。
「アルセーヌ・ルパン」のジョン・バリモア。
「男子戦はざる可らず」のルイス・ストーン。
「ビール万歳」のジーン・ハーショルト。
その他、バーネル・ブラット、ロバート・マクウェード、モーガン・ウォーレス、タリー・マーシャル、フェルディナンド・ゴットシャルク等も出演。
映画の中に、印象的なセリフが多かったが、ライオネル・バリモアが、自身の身体が病であることから、いつ死んでもいいようにと、全財産を持ち歩き、語るセリフは「死を知らんものに、生などわからん。人生は楽しいが、危険でもある」。
ジョーン・クロフォードは、大会社の社長の口述速記をしている時に、社長が「さらに(Moreover)」といいかけて、速記者(クロフォード)の脚線に見とれて、言葉が詰まるが、クロフォードは、お構いなしに「さらに」「さらに(何?)」と数回、ビジネスライクに言うところもおかしい。バーで飲んでいる時に、声をかけられて来た時に、職業を聞かれて、「しがないお金の奴隷よ」というのもいい。
「fpdは?」「しがない映画の奴隷よ」か(笑)。
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