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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「トラ・トラ・トラ!」(1970)再見。

 
 トラ・トラ・トラ!」(原題:Tora! Tora! Tora!)は、初公開時の1970年9月に、東京・新宿に前年1969年末にオープンしたばかりの大劇場「新宿プラザ劇場」で見た。
 きょう、BS-TBSで放送されていたので、40数年ぶりに再見した。
 
この映画を一言で言えば、史実にはない創作ということだが、最後の山本五十六長官(山村聰)が語る一言に尽きる。
 
眠れる巨人を起こし、奮い立たせたも同然である。である。
 
 
この映画はもともと、20世紀フォックスが、ノルマンディー上陸作戦を描いた大作「史上最大の作戦」が成功したことから、”2匹目のドジョウ”かは知らないが、太平洋戦争の戦端を切った日本による真珠湾攻撃の映画化を企画したものだった。
 
日米双方の視点から真珠湾攻撃を描くことを主眼として、日米の両監督を予定し、アメリカ側の監督はリチャード・フライシャー、日本側は黒澤明が担当することになった。 しかし、当時大々的に報道されたように、”完全主義者”の黒澤監督のやり方についていけないアメリカ側(トップは、天下のダリル・F・ザナック)が、黒澤監督を解任し、後任選びに難航する中、舛田利雄深作欣二のふたりが選ばれた。
 
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出演俳優も、黒澤監督の元、素人中心に進めていたキャスティングもほとんどが変更となり、プロの俳優が中心となって進められた。黒澤明監督降板という映画界にとっては激震ともいうべき一大スキャンダルについては「黒澤明vs.ハリウッド 『トラ・トラ・トラ』その謎のすべて」(田草川弘、文春文庫)に詳しい。
 
内容の一部受け売りだが、臨場感を出すため、主要な俳優を知り合いの元海軍だった企業の重役やらの素人を起用。役になりきってもらうために、撮影入りするときスタッフは全員、この素人の山本五十六や南雲中将を敬礼で迎えるように強要。
 
のちに控室から赤ジュータンまでひかせるようにエスカレートするが、実際に撮影がはじまると、あまりの演技の下手さ加減に、おまえそれでも海軍か!と怒鳴りつけたという。演技経験がないので、当然といえば当然だが。

黒澤監督は、前日朝まで酒を飲んで撮影所入りし、睡眠薬も服用し、ささないことでスタッフに激昂。そこへ頭上から照明が落ちてくる事件などがあったという。「病気」を理由に首にされたが、後に自殺未遂も起こした黒澤監督。かなりノイローゼ気味になっていたのか。
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脱線するのでこの辺で。
 

 
映画は今見ても、CGのない時代に、戦闘機の撮影などリアルに再現。
最近の「永遠の0」など特撮とわかっているので、リアリティでは「トラ・トラ・トラ」を見てしまうと、格段の違いは否定できない。
 
 トラ・トラ・トラ!」は日本ではヒットしたが、アメリカでは、内容が”アメリカ側の不手際”の対応が描かれていることが不満に思われたのか、ヒットはしなかった。それどころか、20世紀フォックスは大赤字だったとか。唯一の救いは、1970年度「アカデミー賞」で特殊視覚効果賞を受賞したこと。
 

 
その後、アメリカは、2001年に「パール・ハーバー」という映画をつくり、日本軍による真珠湾攻撃を経てアメリカ初の日本本土に対する攻撃ドーリットル空襲に至るまでの時代背景をモチーフとして描いたが、戦闘シーンにはSFXとして当時最先端のCGが多用され、迫力のある音響演出と相まってそのリアルさは話題になった。
 
しかし、一方で戦争映画としては設定・考証面で史実を無視あるいは大幅に脚色した演出として、日本軍の描写が滑稽に描かれるなど、物議を醸した。2001年のアカデミー賞では音響効果賞を受賞する一方、同年のゴールデンラズベリー賞(最低映画賞)にノミネートされた。
 

映画のタイトルの”トラ・トラ・トラ”というのは、雷撃隊隊長、淵田少佐(田村高廣)が打電した”トラ連装暗号電文”で、(ト)突撃セヨ、(ラ)雷撃隊のことであり、”我、真珠湾奇襲ニ成功セリ”のこと。決して、阪神タイガースが優勝して、ファンが熱狂して叫んだ言葉ではない(笑)。
 
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スタッフ
製作総指揮: ダリル・F・ザナック
制作: エルモ・ウイリアム
原作: ゴードン・W・プランゲトラ・トラ・トラ!」/ラディスラス・ファラーゴ
    「破られた封印」
監督:
日本側: 外田利雄/深作欣二 ; アメリカ側: リチャード・フライシャー

脚色:
日本側: 小国英雄/菊島隆三; アメリカ側: ラリー・フォレスター

撮影:
日本側: 姫田真佐久/佐藤昌道/古谷伸; アメリカ側: チャールズ・ウィーラー

音楽: ジェリー・ゴールドスミス

【キャスト】
「日本側」
山本五十六連合艦隊司令長官山村聡
源田中佐: 三橋達也
淵田中佐: 田村高廣
南雲海軍中将: 東野英治郎
野村駐米大使: 島田正吾
首相近衛公爵: 千田是也
東条英機: 内田朝雄
大西参謀: 安部徹
吉川猛夫: マコ

アメリカ側」
キンメル太平洋艦隊司令長官: マーティン・バルサム
スチムソン陸軍長官: ジョセフ・コットン
ブラットン大佐: E・G・マーシャル
ハルゼイ中将: ジェームズ・ウィットモア
マーシャル大将: キース・アンデス
スターク海軍作戦部長: エドワード・アンドリュース
ハル国務長官: ジョージ・マクレディ
ベリンジャー中将: エドモン・ライアン
ショート将軍: ジェイソン・ロバーズ
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