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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「赤い砂漠」(1964)・・・40年ぶり再見。

 
ミケランジェロ・アントニオーニ監督の初のカラー作品「赤い砂漠」を初めて見たのは、リバイバル公開の時で、40年も前の二番館の映画館だったろう。その当時に見たから難解だったのか(たぶんそうだ。)よくわからなかった。荒涼とした風景ばかりが印象的だった。
 
学生仲間で、アントニオーニが好きな友人がいて、「アンニュイ(倦怠感)」がいいとか「愛の不毛」だとか、わかったように話すのが学生の特権だったのか(笑)。
 
近くのビデオ・レンタル店で、最近ヨーロッパの名作が、並ぶようになった。
かつての名作、特にヨーロッパ映画が少なかったが、”シニア層”などの取り込みか「太陽がいっぱい」などもいっぱい並んでいる。
 
赤い砂漠」は二度目だが、理屈で見るよりも、情景や映画の画面や雰囲気、人間模様などを見る映画だと思った。迷いや不安を常に抱えた人間。生きる目的。
 
ある程度、社会人として人生経験を経てから見ると「ベニスに死す」にしても「時計仕掛けのオレンジ」にしても、さらに理解が深まったり、見方が変わってくるかもしれない。逆に青春の多感期に感動しても、再見して感動なしというのもあるかもしれない。いつの時代に見ても感動が薄れない作品というのが名作なのかもしれない。ブログのサブタイトル「名作に進路を取れ」をなかなか外せないのもそのためだ(笑)。
 

 
主演のモニカ・ヴィッティは、あまり表情の変化がなく、感情を表に表わさないが、時折笑顔を見せるところは、かわいい。髪が風になびいて前髪がくしゃくしゃになったりした時の顔だったり、特別に美人というのではないが、涼しげなまなざしとか、儚(はなな)そうで、物憂げな雰囲気がいい。
 
モニカ・ヴィッティをブログのアバターに使っているジュリアンさんの入れ込みようも理解できる(笑)。
 
ジュリアーナ(モニカ・ヴィッティ)がみる周りの光景はなぜか、ぼんやりしている。
まるでスモッグでもかかっているようだ。「心ここにあらず」というような精神的に不安定な状態だからのようだ。 
 

 
映画のオープニングは、イタリアの工場都市ラベンナ。
林立する煙突からは絶え間なく煙がふきあげ、暗い冬の空をいっそう重苦しく淀ませている。
 
ジュリアーナ(モニカ・ヴィッティ)は夫である工場の技師ウーゴ(カルロ・キオネッティ)と、息子バレリオの親子三人でこの街に住んでいる。彼女は交通事故にあい、そのショックからノイローゼで、一カ月入院したが、まだ完全に治ってはいない。
 
ある日、彼女は夫を工場に訪ね、彼の友人コラド(リチャード・ハリス)を紹介された。コラドは南米パタゴニアに新しく工場をたてるため、ウーゴの力を借りにきたのだ。
 
ウーゴからジュリアーナの病気のことを聞いたコラドは、彼女の底深い孤独が痛ましくてならなかった(HPより)。
 
・・・
数日後、コラドはウーゴ夫婦やその友人たちと海辺の小屋へ遊びに出かけた。
そこでの乱痴気さわぎは、ジュリアーナにとっても楽しく、その顔はいつになく明るかった。たわいのない話が続く。男が「精力をつけるには卵がいい」というと、ジュリアーナは小さい卵を続けて2個食べる。すると「急に発情してきたわ」(ジュリアーナ)となった。
 
そんな中、やがて近くに碇泊していた船に伝染病が発生したらしいとわかった時、ジュリアーナの神経は乱れてしまう。小屋をとびだしたジュリアーナが、車を桟橋の突端に急停車させたのを見た友人たちは、ただ黙って痛ましげに見守っているばかりだった。
 
何故なら彼らは、ジュリアーナが、幼い頃自殺を図ったことを知っていたからだ。ウーゴが出張したあと、心細さと空しさが、ジュリアーナをコラドに近づけた。
 
ジュリアーナ:「私の目が濡れている。何を見ればいいの?」
コラド:「僕はどう生きるか」それと同じことだ。
 
そして最愛の息子バレリオが急に歩くことが出来なくなったときのジュリアーナは半狂乱だった。しかし、それからほどなくバレリオがケロリとして歩きまわっているのをみた彼女は裏切られた思いだった。
 
息子でさえ自分を必要としない・・・。
彼女はコラドの腕の中に身を投じるのだった。しかし、かりそめの情事で心が満たされるわけもない。孤独や不安の影のない世の中があるだろうか・・・。
彼女はこれが自分の人生だと、自らに言いきかせるのだった。
 
ラストシーン。
ジュリアーナが息子と歩いていると煙突に黄色い煙が。
「なぜ煙が黄色いの?」と子供が聞くと、「毒だからよ」と答えるジュリアーナ。
「鳥たちは死んじゃうの?」「鳥は知っているから、黄色い煙の上は飛ばないの」。
 
・・・
アントニー二作品は、未見の「情事」、全編通しては見ていない「太陽はひとりぼっち」など見ないわけにはいかない。”名作へ進路を!”