「唇からナイフ」(原題:Modesty Blaise、1966)を見る。原題はイギリスの作家ピーター・オドンネルの人気漫画「Modesty Blaise」の女スパイの名前。それがなぜ、”唇からナイフ”なのか。邦画「ザ・マジック・アワー」で佐藤浩市がナイフをなめるシーンは、お笑い芸人がマネをするほど有名だが。
映画を見たが、まったく内容とは関係のないタイトルだった。しいて言えば、主演のモニカ・ヴィッティの唇が肉感的で、映画の中で、ナイフを持って男と戦うシーンがあるということからか。
(ストーリー)
中東マサラ国に贈るダイアモンドが盗賊団に狙われていると知ったイギリスの秘密情報部は、その護衛として女スパイ、モデスティ・ブレイズ(モニカ・ヴィッティ)を雇う。
モデスティは相棒にウィリー(テレンス・スタンプ)を指名し、ダイアのあるアムステルダムへ向かう。様々な暗号を解読し辿り着いたアパートで敵に捕まるも、ウィリーらの助けにより解放されたモデスティは、ダイヤを狙っている盗賊が因縁の相手、ガブリエル(ダーク・ボガート)だと知る。
ガブリエルに騙され、再び捕まったモデスティとウィリーは、ガブリエルの指示でイギリスの船からダイヤを盗むと、ガブリエルの基地である孤島に監禁されてしまう。
ところが色仕掛けで基地から抜け出したモデスティは、以前にクーデター事件で助けて以来信頼されていたマサラ国王の助けのもと、見事ガブリエルからダイヤを奪い返すのだった。
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ミケランジェロ・アントニオーニ作品の「情事」「赤い砂漠」などでアンニュイ(倦怠)な香りを振りまいた美女モニカ・ヴィッティが、それまでのイメージとはまったく違ったコミカルな演技をみせている。テレンス・スタンプとデュエットで歌うシーンはまるでミュージカルのよう。
銀髪(金髪でない)のかつらをしたダーク・ボガードが気楽に盗賊のボスを演じている。
1960年代のファッション(モニカ・ヴィッティ)、車、アナログ的な機械、テレックス、アナログレコードなど今から見ると郷愁をそそる映画ではある。サスペンス、スリラー的な要素は全くないナンセンス・コメディアクションとしてみれば、それなりに楽しめる。
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原作の漫画
「唇からナイフ」(原題:Modesty Blaise、1966)
監督:ジョセフ・ロージー
原作:ピーター・オドンネル
脚色:エヴァン・ジョーンズ
音楽:ジョン・ダンクワース
出演:モニカ・ヴィッティ、テレンス・スタンプ、ダーク・ボガード、ハリー・アンドリュース、マイケル・クレイグ