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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「暖簾(のれん)」(1958):山崎豊子原作の初映画化作品。

社会派作家として先ごろ亡くなった山崎豊子の作家デビュー作「暖簾(のれん)」を「洲崎パラダイス」「幕末太陽傳」の川島雄三が監督、森繁久弥主演で大阪商人の生き様を描いた1958年の東宝映画。昭和初期から終戦後までを描いた一代記。
森繁久彌一人二役を演じているが、二人で会話するシーンなど当時どのように処理したのか。

原作は、山崎豊子が、生家である大阪老舗の昆布問屋の父や兄の姿をモデルにして明治から戦後まもなくまで時代とともに追っていく。故郷大阪を舞台にした初期の作品で、当時の時代背景などが良く描かれていて、味がある。
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物語は、淡路島から一人故郷を離れ、大阪で丁稚奉公をする15歳の八田吾平が、その生真面目さを店主に認められて、暖簾分けをしてもらう。町で見つけたこれはと思ったご主人の後を追いかけ、働かせてくれと強引に頼みこむ。それは昆布屋の主人、浪花屋利兵衛(中村鴈治郎)だった。
 
話してみると、同郷ということがわかり利兵衛は店に連れてきた。そこにはおかみさん(浪花千栄子)と大勢の奉公人がいた。そこで拾われてから十年、吾平はまじめに働いた。

吾平(森繁久弥)が25歳の時、先輩たちをさしおいて主人利兵衛が暖簾を分けてくれた。吾平は、丁稚のころから仲の良いお松(乙羽信子)と一緒になろうと思っていた。ところが、利兵衛は、吾平を見込んで姪の千代(山田五十鈴)を押しつけて来た。これには吾平は困ったが、お松が身を引き結局千代と結ばれた。
 
昭和9年、3人の子供も大きくなったころには、吾平は昆布屋の事業を広げており、加工工場を作っていた。ある時、強烈な台風が来て、工場が面する川が決壊、水害が工場を襲った。
 
最悪の被害となり、損害から原状回復をしようとしたが、事業を拡大するために資金は借りきっていて、担保もない状況。本家に事業資金を借りに行ったが断られ、旧知のお松の嫁入り先に世話にならねばならない状況になった。
 
しかし千代の助言で、「暖簾が最高の担保」と吾平がもう一度銀行へ交渉に行き、融資がついて切り抜けた。
 
それから10年、戦争となって、息子たちは出征した。
しかも、昆布が国家による統制の対象となり商売ができなくなった。
 
建物も空襲で燃えてしまいすべてを失う。戦後、吾平は昆布の荷受組合で働いていた。長男の辰平は戻ってこない。しかし、学生時代ラグビーに明け暮れていたのんびり屋の次男孝平(森繁久弥2役)が商売を継ぐと決意し、仕入れの昆布を調達してくる。そして株式会社浪花屋を設立して商売を広げていったのだが。
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この時代の映画を見ていると、映画は時代を切り取る鏡のようなものという印象を受ける。昭和初期の社会状況や、戦後の焼け野原の風景や、闇市、生活環境、車、などが描かれ、資料として価値がある。
 
後の「白い巨塔」「不毛地帯」などの社会派作品を描いた山崎豊子のデビュー作品として記憶される作品となった。東宝シネマスコープの初の作品でもある。
 
製 作 宝塚映画
配 給 東宝
公開日 1958.06.15
形 式 123分 白黒 東宝スコープ
 
製 作 滝村和男
監 督 川島雄三
脚 本 八住利雄 川島雄三
原 作 山崎豊子
撮 影 岡崎宏三
音 楽 真鍋理一郎
美 術 小島基司
録 音 長岡憲治
照 明 下村一夫
出 演 森繁久弥 山田五十鈴
中村鴈治郎 乙羽信子
中村メイ子 浪花千栄子
山茶花究 頭師孝雄
 
 
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