フランス映画「タイピスト!」(2013)は、昨年夏に公開されたのを見逃していたがようやく見ることができた。時代背景など、1950年代の映画を見ているような錯覚を覚える。オープニングがアニメを使ったデザインでしゃれていた。
タイプの早打ち以外には取りえのないヒロインが、タイプ早打ち世界大会優勝を目指して奮闘するラブコメ。主演はオーディションで選ばれたデボラ・フランソワ(「譜めくりの女」)と、「ロシアン・ドールズ」「戦場のピアニスト」などのロマン・デュリス。
ファッションなど1950年代当時のテイスト満載の映像美や、競技さながらの激戦が展開するタイプ早打ちシーンに目を奪われる。デボラ・フランソワは、50年代のスタイルや身のこなしなどを知るためにオードリー・ヘプバーンの「麗しのサブリナ」を参考にしたという。初々しさなど、ヘプバーンをほうふつとさせるところもある。
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舞台は1958年-1959年のフランス。
田舎で父親と暮らしているローズ・バンフィル(デボラ・フランソワ)は、父親から地元の縁談を持ちかけられる。ローズは田舎の町を離れ、ルイ・エシャール(ロマン・デュリス)が経営する保険代理店の秘書として働くことになる。
しかもタイプ打ちは、ブラインドタッチ(キーボードを見ないで打つ)ではなく、両方の人差指で早打ちをするという打ち方。
ルイは、仕事を続けたいのなら、その条件として、タイプライター早打ち大会に出場することを命じる。そして、フランスでの大会に優勝してしまう。フランスのタイプライター・メーカーが目をつけスポンサーとなり、専門のトレーナーをつけ、自社のタイプライターのCMにもパンフィルを起用し、人気を得る。アメリカでの世界大会も自社製品で参戦することになった。
アメリカでのタイプ早打ちでは世界記録を持つスーザンという女性は負け知らずだった。
第一回目は、パンフィルの勝利、第2回はスーザンの勝利。ここで、パンフィルは、これまでのタイプライターではなく、かつて使っていた古いタイプライター(上写真左)を持ちだしてきて、第三回戦を戦うことにしたのだった。
果たしてそんな古いタイプライターで優勝はできるのか・・・。
予告編
ここに登場する1950年代のタイプライターは機械式タイプライター。
パンフィルの使っていたタイプライターは、父親が店で使っていたタイプライターで、
「Triumph」ブランドは西ドイツ(当時)のトライアンフ社の製品だ。
タイピストのほうがスピードが速いと、一語一語の文字に連動したアームのようなパーツが絡(から)まってしまう。パンフィルは、1分当たり世界最高の515ワードで、機械の反応が追いつかなかった。
この映画の最後のほうで、これからはゴルフ・ボールのような円形の形のものを回転させることで、高速にできるという話が出ていた。(IBMなどが開発した)電動式タイプライターである。アメリカの開発メーカーは、電動式タイプライターをさっそくフランスに売り込もうとする。フランス人は、「なぜ我々に売るのか」というと、アメリカ人は答える。
「アメリカ人は、ビジネスを目指すが。フランス人は、ラブ(愛)だ」と。
大会が終わった後、パンフィルの前にルイが現われる。
ルイは、初めて自分の気持ちをパンフィルに伝える。
この時、大会を見学していた多くの女性たちは、パンフィルとルイの会話に耳を傾けていた。フランス語で愛の言葉を交わしていたのだが、アジア、ヨーロッパの女性たちがそれぞれの国の言葉で、友人に通訳をしていたシーンが、この映画で一番面白かった。特にドイツ婦人の会話である。
言葉がわからないドイツ人女性が、「今、なんて言っているの?」(Was sagen Sie?=ヴァス・ザーゲン・ズィー?)とフランス語のわかるドイツ人に聞くと、「”愛してる”よ」 (Ich liebe dich=イッヒ・リーベ・ディヒ:写真)や、「君こそ僕の幸せ」などと、いちいち説明するのがおかしい。しかも、自分が言われているような、乙女チックな表情となって(笑)。イタリア人は、「愛してる」(ティアーモ!)、その他の国の言語も飛び交っていた。
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1950年代末の時代のタイプライターの早打ちコンテストのために当時のタイプライター200台を集めたという。
小道具として、パンフィルの部屋の壁に貼ってある女性の写真なども面白い。
左から、マリリン・モンローの写真、次にオードリーヘプバーンの写真と記事の切り抜き、最後に女優のような女性の写真があった。
パンフィルが、ルイに、この中では「どの女性がタイプ。やはり(男だから)グラマー
(モンロー)でしょう?」と聞くと、意外なことに、一番右の人がいい、という返事。
パンフィルは答える。「あ、それは私の母。きれいでしょう」(笑)。
ハッピーエンドの後味のいい映画ではある。
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