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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

<span itemprop="headline">映画「マザーウォーター」(2010)</span>

 

 
かもめ食堂」が好みの人は「マザーウォーター」(2010)もその流れで、お勧めです。
 
かもめ食堂「めがね」「プール」と同じプロジェクトチームの作品である。出演は「かもめ」以来常連の小林聡美たいまさこに、「めがね」光石研加瀬亮など。
 
荻上直子監督の「かもめ食堂」(2006)が、あまりにも面白かったので、その後、同監督で、主要キャストが同じ「めがね」も見た。大森美香監督の「プール」は未見。
 
マザーウォーター」は、この流れをくむ「人と場所との関係」をテーマにした同一プロジェクト作品。今回は、豊かな水の流れを持つ街・京都が舞台。監督は本作が長編デビューとなる新鋭・松本佳奈。
 
一連の映画で共通しているのは、全体の流れがスローペース。カメラを据えっぱなしで、会話も少なく延々と同じシーンが続くが、苦にならない(笑)。事件は何も起きない。
 


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ウイスキーしか置いていないバーを営むセツコ(小林聡美)。コーヒー店を開いたタカコ(小泉今日子)。豆腐屋を営むハツミ(市川実日子=みかこ)。それぞれ手際よく、慣れた手つきで自分の仕事をこなしている。いずれも“水”にこだわる3人の女性たち。
 


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

小泉今日子キョンキョン)は、アイドル歌手の頃とちがって、落ち着いたアラフォーの女性を演じている。

ハツミを家に呼んで、「グラタン」料理を作るが、ハツミが「料理も得意なんですね」というと「自分で食べたいものだけを作る」と合理的なタカコ。ハツミが豆腐店を始めたのは、小さいときから豆腐が好きだったというのが理由だが「ハツミさんも、好きなものをつくっているじゃない」と言われて「そういえばそうだ」と納得するハツミ。
 
銭湯の主人オトメ(光石研)は、自分の1歳半になる赤ん坊、ポプラの面倒を見ているが、オトメの銭湯を手伝うジン(永山絢斗)、お守を近所のマコトさん(もたいまさこ)が手伝っている。このマコトさんは、顔見知りの人には、いつも「きょうも機嫌良くやんなさいよ」と声をかける。
 
そういえば、映画のファーストシーンから、登場人物は、青い空を見て、笑顔で幸せそうな雰囲気だった。
 
この映画でも「かもめ食堂「めがね」と同様、食べ物がよく登場する。
 

最初に「豆腐」。豆腐屋に、マコトさんがやってきて、「豆腐を、1丁ください。ここでいただいていいかしら?」と聞く。店の軒先で、豆腐を食べたいというので、長椅子を用意して、豆腐と醤油を渡す。
 
その後は、豆腐を買いに来る客(セツコやタカコなど)に、ここで食べますか?と聞くようになる。一度、店先で豆腐を食べると、必ず次もそこで食べている光景がある。冷ややっこだけでも、おいしそうだ(笑)。
 
そこに銭湯の着替え場所にいつも寝ている「ポプラ」をマコトさんが連れてくると、ポプラが話の中心となって、セツコ、タカコなども言葉を交わして、顔なじみになっていく。
 
こうしたことが縁でタカコの自宅に、ハツミや、セツコを招待して、食事をいっしょにする。この3人は、独り身で、どこからか現在の場所に移ってきたが、「今の場所が楽しければいい」(セツコとタカコ)に、ハツミは、刹那主義だと、冗談と批判をこめて言う。
 
「豆腐」の次は、マコトがランチに作った「カツサンド」や、家でつくる「かき揚げ」もおいしそうだ。
 
きわめて日常的なことが、静かに淡々と描かれていく。セツコのバーの店は、バーといっても、4-5人座れるカウンターがあるだけ。出てくるのは、ウイスキーの水割りかロックだけ。セツコは、オーダーが入るたびにグラスに大きな氷を入れ、マドラーで丁寧にかき混ぜてから水を注ぐ。
 
家具職人のヤマノハ(加瀬亮)は、セツコが言う「適当にやっているだけ」が、本当は適当でないことを知り、毎日のように店に来ては、その日に考えたことを話すのだった。
 
映画の重要な役割を果たしているのが赤ん坊。いろいろな人に赤ん坊はあやされるが、父親のオトメは「このポプラ(赤ん坊)は、この街みんなの子供だね」といわれる。
 
この子の母親はどうしたのか、まったくわからない。
 
ところが、ラストシーン。
 
バーで、ポプラを中心に、皆でわいわいがやがやとしていると、店に顔は見えないが、一人の客の声が。全員がドアの方を向くと、その声の主は・・・
 
「・・・・・・・・・・」。
 
で、終わり(笑)。
 
「えっ」「あっ」と思う幕切れだった。
 
最後に「マザーウォーター」の曲が流れる。
 
印象に残るのは、「水は流れている」という言葉。
 
人間も、毎日同じことの繰り返しのように見えるが、実際は、常に進化
している。この映画でも、最初は知らない人たちが、知り合いになり、
一緒に食事をしたり、バーで飲んだり・・・。
 
☆☆☆