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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「フェイブルマンズ」(原題:The Fabelmans、2022)スピルバーグ監督の自伝的映画。

フェイブルマンズ」(原題:The Fabelmans、2022)は、監督のスティーヴン・スピルバーグの自伝的作品。

自伝だが、虚実混交ともいわれ、どこまでが脚色かわからない。映画評論家・町山智浩によると、スピルバーグは「嘘つき」(笑)だそうだ。スピルバーグ自身が「この映画はたとえ話ではなく私の記憶なのです」と語っている。作品は、ゴールデングローブ(GG)賞で作品賞(ドラマ部門)と監督賞を受賞。

主人公のサミー・フェイブルズマンは、スピルバーグの7歳から18歳くらいまでの子供時代を反映。小学校低学年で、映画館に響き渡る列車の激突シーンをを見て衝撃を受け、恐怖を覚えるが8mm映写機に映したものなら怖くないと8mm映写機を与えられ、撮影に興味を抱いていく。

プロム(プロムナードの略称。アメリカの高校生活における最大のイベントで卒業を目前にした高校生のために開かれるダンスパーティ)などで失恋も経験するサミー。

ハリウッドの映画会社でテレビの撮影の仕事にありつき、そのプロデューサーから「映画を撮りたいのか?向かいの部屋に世界一の監督がいるが、会ってみるか」とまさかの巨匠を紹介され、わずか数分の出会いがサミーにとっては計り知れない、おそらく将来の原動力になっていくのだった。

家族の描写、プロムなど、エピソードなどが単調で面白みに欠けるのが残念だが、この映画のラストの数分間が見ごたえがあった。

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1952年、ユダヤ系のフェイブルマン一家はニュージャージー州のハドンタウンシップで暮らしていた。ある日、母のミッツィと父のバートは息子のサミー(マテオ・ゾリアン・フランシス=フォード、子役)を初めて映画館に連れて行く。

彼が見たのは「地上最大のショウ」。映画の中で列車が脱線事故を起こす衝撃的なシーンがあり、そのシーンがサミーにトラウマとも感動ともいえるショックを与える。

まもなくしてサミーは電車の玩具を両親に買ってもらうが、映画の脱線シーンを再現したいと強く思うようになる。しかしそれをするとせっかくの玩具の電車が壊れてしまう。見かねた母親はサミーにビデオカメラを買い与え、脱線シーンを録画するように助言する。

サミーの父バート(ポール・ダノ)は最新技術であるコンピューターの優秀なエンジニアだが、生活は厳しく、元ピアニストの母ミッツィ(ミシェル・ウィリアムズ)はサミーや妹たちの世話に忙殺される専業主婦として生活していた。

やがて時代がコンピューターを認知すると、父バートは大企業に引き抜かれ、一家はアリゾナに転居することになった。助手は招かれていないと聞き激怒するミッツィ。 助手のベニー(セス・ローゲン)は父バートの親友であり、サミーたちにとっても家族同然の独身男だったのだ。

ベニーも共に就職する形でアリゾナに移る一家。その地で高校生になったサミーは撮影の腕を磨き、映画監督になる夢を膨らませて行った。

だが、家族のファミリーキャンプの映像を編集したサミーは、母ミッツィと助手ベニーのキスシーンが写り込んでいることに気が付いた。予期せぬものを撮影してしまい、一時は映画への情熱まで失いかけるサミー。

父バートは滅多に怒らず、母ミッツィを深く愛する優しい男だが、感情を表すことが苦手で、人の話しを黙って受け止めるタイプだった。

芸術家で感性が人一倍豊かなミッツィは、喜怒哀楽を表に出すベニーに惹かれてしまったのだ。そんな時に父バートの更なる転職が決まり、一家はベニーを残してカリフォルニアに引っ越した。

1964年、カリフォルニアで高校3年の最後の数ヶ月を過ごすサミー(ブリエル・ラベル)。新しい高校にはユダヤ嫌いを公言するローガンら男子がいて、いじめられるサミー。

たが、サミーにキリストを信じさせたいクリスチャンのモニカ(クロエ・イース)と恋仲になり、高校の行事である「おサボり日」(卒業学年の海岸への遠足)の撮影も任された。

母ミッツィはついにベニーと暮らしたいと口にし、父バートは静かに離婚を受け入れた。妹たちは母と去ることになり、サミーは高卒で映像の仕事を探す決心をした。

高校最後のプロムの夜に、モニカに一緒にハリウッドへとプロポーズするサミー。だが、大学進学が決まっているモニカは断った。

プロムの出し物として「おサボり日」の記録映画を上映しながら涙するサミー。その映画の主役は、いじめっ子のローガン(サム・レヒナー)だった。

美男子な上に逞しいスポーツマンで、見るからに主役タイプのローガンを、サミーは作品の要として使わずにいられなかったのだ。

映画は大好評だったが不機嫌そうなローガンは、無人の校舎で座り込むサミーを見つけて「いじめの仕返しか!」と詰め寄った。

自分の足の速さは努力して身に付けたと叫ぶローガン。だが周囲の人々はヒーローだから当然としか見ず、正当に認められない事がローガンの悩みだったのだ。

泣いて本心を吐露したローガンは、映画のためなら大嫌いな反ユダヤ主義者とも友達になると言うサミーを少し見直し、立ち去った。

一年後、父の許しを得て大学を中退したサミーは、ハリウッドで就職活動に励み、テレビ映画制作の下っ端の仕事にありついた。

撮影スタジオでサミーを面接し、熱心な彼を向いのオフィスに連れて行くプロデューサーのバーナード・ファイン(グレッグ・グランバーグ)。

そこで巨匠のジョン・フォード監督(デヴィッド・リンチ)に会ったサミーは、ほんの数分の会話だったが、将来への希望に包まれた。

 

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ラストシーンの主人公のシルエットはチャップリンの「モダン・タイムス」を連想させた。希望に満ちたエンディングだった。

物語は、子供時代を終盤まで淡々と描いていて睡魔に襲われそうになったが、ラストの数分間は、ハッとさせられ、見ごたえがあった。

  「映画を撮りたいなら、向かいの部屋に最高の監督がいるから紹介する」

面接したプロデューサーが、「テレビの仕事がある」と告げた後「映画を撮りたいのか? だったら、向かいの部屋にいる最高の監督に会わせよう」とサミーが通された有名監督の部屋でみた映画ポスターの「あっ」という衝撃

その映画監督が誰かが一目瞭然となった瞬間は、サミーならずとも、見ているこちら側が胸が熱くなるものがあった。

なんと映画のポスターは歴史的西部劇の傑作「駅馬車」だった。

もう、わかった、と思う間もなく壁一面には、その監督のポスターが…。

 

駅馬車」「わが谷は緑なりき」「男の敵」「捜索者」「三人の名付け親」「黄色いリボン」「怒りの葡萄」「リバティ・バランスの撃った男」のポスターが壁一面に貼られていた。

監督の秘書ノナは「(食事に出たが)いつ戻るかわからない。会えるのは5分か、1分ね」という。ドアが開き、目の前を通り過ぎる黒のアイパッチの男。まさに巨匠本人ががそこにいた!

   

 

ノナは、監督のもとにティッシュを運び、汚れなどをぬぐって戻ってくる。

サミーに対して「ネクタイは外して」と忠告する。

監督を前にして緊張するサミー。葉巻を吸うためのルーティーンの時間が長い。

監督が言葉を発する。「映画を作りたいだって? ずたずたになるぞ」といい、映画のシーンの写真の前にサミーを行かせて「地平線はどこにある?」と質問する監督。

 

「そちらの絵はどうだ?地平線は?」「こちらです」と応えるサミー。

監督の「地平線の位置」で映画が良くも悪くもなると聞かされたサミーは、映画界への一歩を踏み出すのである。どこに自分だけの地平線があるのかを目指して…。

 

監督が「とっとと失せろ」といいサミーを追い出すが、サミーは最後に「(貴重な時間をいただき)ありがとうございました」というと監督が「こっちこそ(My pleasure)」というのだった(本当かいな…「スピのウソツキ」と思うが。笑)。

19世紀生まれのジョン・フォード(1894年2月1日生まれ - 1973年8月31日没)が、21世紀にも超一流監督として活躍するスティーブン・スピルバーグ(1946年12月18日生まれ)とが数分間、会話を交わし、未来を託すバトンを渡すような光景はインパクトがある。スピルバーグの生涯の宝なのか、嘘から出た実なのか…。

ユダヤ系に対する差別も描かれる。ユダヤ人のサミーは恋人のモニカが熱心なクリスチャンであることから、キリストの十字架のネックレスを用意してプロポーズするが断られてしまうといったシーンもある。同級生からは、人種差別も受けていた。

ジョン・フォード監督を、鬼才デヴィッド・リンチが演じているが、気難しくこだわりに強いとみられるフォードをまるで本人がいるかのように演じている。

 

<主の登場人物>
■サミー・フェイブルマン:ブリエル・ラベル…主人公。映画少年でスティーヴン・スピルバーグ本人がモデル。
■幼少期のサミー:マテオ・ゾリアン・フランシス=フォード
■ミッツィ・フェイブルマン:ミシェル・ウィリアムズ…サミーの母。ピアニスト。ピアニストゆえか料理はしないようで、食事の後は、残り物はテーブルクロスごとまとめて捨てる。
■バート・フェイブルマン:ポール・ダノ…サミーの父。堅物でメカオタク。メカのことになると他のことは目に入らない。小さな電気メーカーからGEに引き抜かれ、やがてIBMに転職する。
ジョン・フォードデイヴィッド・リンチ…アカデミー監督賞を歴代最多の4度受賞した映画監督。
■ベニー:セス・ローゲン…バートの助手を務めるエンジニアで親友。フェイブルマン家とは家族ぐるみで親しく親戚ではないが「ベニーおじさん」と呼ばれている。
■ボリス・シルドクラート:ジャド・ハーシュ…サミーの大伯父(ミッツィの実母の兄)。
■モニカ・シャーウッド:クロエ・イースト…カリフォルニアの高校における、サミーの同級生の少女。
■ローガン・ホール:サム・レヒナー…高校のサミーの同級生の少年。イケメンで運動神経抜群のジョック。ユダヤ人嫌いを公言しているいじめっ子。
■チャド・トーマス:オークスフェグリー…高校のサミーの同級生の少年。ユダヤ人嫌いを公言するいじめっ子。
■レジー・フェイブルマン:ジュリア・バターズ…サミーの妹でフェイブルマン家長女。
■幼少期のレジー:バーディー・ボリア
■ナタリー・フェイブルマン:キーリー・カルステン…サミーの2人目の妹でフェイブルマン家次女。
■幼少期のナタリー:アリーナ・ブレイス
■リサ・フェイブルマン:ソフィア・コペラ…サミーの3人目の妹でフェイブルマン家末っ子。
■ハダサー・フェイブルマン:ジーニー・バーリン…サミーの祖母で、バートの実母。
■ロジャー:ガブリエル・ベイトマン…サミーの自主制作映画に参加するボーイスカウトの1人。
■バーナード・ファイン:グレッグ・グランバーグ…サミーに仕事の機会を与えたCBSのプロデューサー。
■ノナ…ジョン・フォード監督のベテラン秘書。

 

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