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映画「哀れなるものたち」(2023)を朝一で見る。アカデミー賞11部門ノミネート。

哀れなるものたち」(原題:Poor Things, 2023)を朝一で見る。さいたま新都心シネコン「MOVIXさいたま」。一言でいえば「フランケンシュタイン」の女性版。倫理を超越した科学的医学的実験で生まれた「無垢(イノセンス)」な女性の自分探しのロードムービー。壮大なファンタジー・ブラックコメディでもある。

ただ、嘔吐があったり、下品な言葉が多かったり「バビロン」並みで、エマ・ストーンヘアヌードやアダルト映画並みの描写もありR-18指定。よく言われるような観客を選ぶ映画と言えそう(※劇場公開初日も、中盤で席を立って出て行った人もいた)。

これまで様々な賞レースを勝ち抜き、いよいよ勝戦アカデミー賞に挑むという段階。作品賞は「オッペンハイマー」に譲るとしても、主演のエマ・ストーンの全身全霊の体当たり演技を見ると「ラ・ラ・ランド」に続いて2回目の主演女優賞受賞はまちがいなさそう。

第80回ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞(最高賞)を受賞。アカデミー賞の前哨戦の第81回ゴールデングローブ(GG)賞では作品賞(ミュージカル・コメディ部門)と主演女優賞(エマ・ストーン)を受賞

そして、アカデミー賞でも作品賞、監督賞、主演女優賞など11部門でノミネート。最大の強敵「オッペンハイマー」の13部門ノミネートには及ばないが2番目に多い作品。

映画のモチーフは「フランケンシュタイン。顔がつぎはぎだらけの天才外科医の手によって不幸な死からよみがえった若い女性が、世界を知るための冒険の旅を通じて成長していく姿を描いている。

本作は「女王陛下のお気に入り」(2018)を手がけたヨルゴス・ランティモスが監督。この映画でも出演していたエマ・ストーンを招いての冒険譚。

クルーズ船の女性客の一人マダム・マーサを演じていたのが、あとで知ったが、ハンナ・シグラだったとは!(「マリア・ブラウンの結婚」のマリア・ブラウン)。

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舞台は19世紀、ヴィクトリア女王時代とおぼしき英国ロンドン医学生のマックス(ラミー・ユセフ)は、解剖学を教えているゴッドウィン・バクスター(通称ゴッド)博士(ウィレム・デフォー)に住み込みの助手として雇われ、博士の自邸へ向かう。

怪しげな実験設備が立ち並ぶその家には、家政婦のほか、ベラ(エマ・ストーン)と呼ばれる世にも美しい女性が暮らしていた。ベラは見た目は成人だが、その振る舞いは、まだよちよち歩きを始めたばかりの赤ん坊そのもの。

それもそのはず、ベラの脳は赤ん坊のそれなのだ。入水自殺した女性を博士が引き揚げ、損傷していた脳の代わりに、彼女の胎内にいた胎児の脳を移植したのである。

赤ん坊から幼児へ、さらには小学生程度へと、精神も運動能力も急速に発達したベラはマックスと婚約に至るが、放蕩者の弁護士、ダンカン(マーク・ラファロ)が彼女を誘惑する。

ダンカンの性的魅力への好奇心と「世界を自分の目で見たい」という思いが抑えられないベラは、彼に連れられてリスボンへ。そこから「」の旅、アレクサンドリアを経てパリへ、そして再びロンドンへとベラの奇想天外な冒険が始まるのだった…。

大人の体でありながら、新生児の目線で物事を見つめるベラは、ゲーテの書物や哲学など多くのことを学んでいく中で、平等や自由を知り、時代の偏見から解放され成長していく。一方で、ゴッドは、ベラの代わりに別の女性フェリシティ(マーガレット・クォーリー)に脳を移植して実験を続けていた。

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(ネタバレ少々あり)食べものは食い散らかし、かんしゃくを起こすと食器を投げて割ってしまい、駄々っ子のように手が付けられベラの行動でも、子ども(胎児)の脳を移植したゴッド博士にとっては、想定内のことだった。

ベラは、船の旅やパリで様々な経験を積み世の中を知り、パリでは、娼館の女主人の「お金を稼ぐにはこれ」と巧みな言葉に誘われて、ベラは娼婦になってしまい、お金を稼ぐことになる。客から30フランを受け取り、10フランを娼館に渡す仕組み。ベラを指名する男たちが変わり者が多く抱腹絶倒。

それ以前に、ダンカンによって”熱烈ジャンプ”(ベラが使う言葉でセックスの隠語)に目覚めていたので、抵抗はなかったようだ。

船から外を見ると、飢餓の子供たちを見て、稼いだお金をボックスに入れて、船のコンシェルジェに伝えると「預かる」と言って、結局お金はだまし取られたようだが…。

飛行船が飛んでいたり、空中ケーブルが走っていたりとファンタジーな世界も描かれる。

笑いのツボだったのは豪華客船の乗客の一人、マダム・マーサ(マーサおばさん)。落ち着いておだやかで、ベラが変わり者であっても、眉を顰めることなくすべて正面から受け止め理解を示し、ベラの言葉、行動にいいんじゃないといった表情で共感する。

マーサも過去には、ベラのように「ぶっ飛んでいた」時代があったようなのだ。ただ「この20年間は”清らか”よ。(たまに)手は使っているけど」とマーサが言うと、ベラは同類、お仲間と感じたのか「それを聞いて安心した」といったセリフのやり取り。

■字幕は松浦美奈…洋画ポルノから字幕翻訳をスタートしたとかで、そうした字幕は慣れているようだ(笑)。

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ラストシーンは超・ケッサク(笑)>

この映画はブルーの衣装を着た女性の飛び降り自殺から始まる(カラー)。

その後、場面はしばらくモノクロ。この女性の死体が実験台に載せられるが、身ごもっていて、その胎児の脳みそを女性の脳と入れ替える。電気を当てるとビビビと生き返り…。

この女性が生きていることを知った社会的地位のありそうな男(夫)アルフィーが現れて、様々なことを学び知的にもなっていたベラに「お前は私の妻だった」というのだが…。

ベラに思いを寄せ婚約した医学生マックス、ベラを誘惑したダンカン、ベラを蘇生させたゴッド、自殺を図る前の夫アルフィー、ベラを娼婦として買春した客の男たち…これら男どもはみな、なんと「哀れなるものたち(Poor Things)」か!

中でも自殺にまで追い込んだかつての夫アルフィーの姿は、哀れなる…を通り越して、トンでもない姿となっていた!(笑)。

<主な登場人物>

■ベラ・バクスター/ビクトリア・ブレシントン:エマ・ストーン…自ら命を絶つが、生まれたばかりの”大人の女性”として蘇り、世界への冒険で知性に目覚め真の自由と平等を見つけ始める。パリで娼婦を経験し、ゴッドの具合が悪いというので、ロンドンに戻ると、まわりからは売女(ばいた)呼ばわりされる。

■ゴッドウィン”ゴッド”バクスターウィレム・デフォー…ベラを奇跡的に蘇生させた天才外科医。彼女に娘に対するような愛情と、研究対象としての執着を抱く。

■マックス・マキャンドレス:ラミ―・ユセフ…ゴッドウィンの助手。ベラの成長を観察して記録をとるうちに恋に落ち婚約するが、置いていかれる。

■ダンカン・ウェダバーン:マーク・ラファロ…ベラを誘惑し冒険の旅に誘い出した放蕩者の弁護士。だが、ベラの本気になり束縛しようとする。

■ハリー・アストレイジェロッド・カーマイケル…旅先で知り合い友達になったベラに、彼女の人生を大きく変えることになる<ある真実>を突きつける。

アルフィー・ブレシントン:クリストファー・アボット…ベラが生まれ変わる前の総てを知る男。暴力的でサディスティックな性格。そのためベラは自殺を図った。

■マダム・マーサ・フォン・カーツロック:ハンナ・シグラ…ベラに理解を示す優雅な雰囲気で高齢のクルーズ船の旅行客。

■マダム・スウィーニー:キャスリン・ハンター…売春宿の女主人。体中に入れ墨。

■トワネット:スージー・ベンバ…売春宿の娼婦の一人でベラと友達になり話し相手となる。

■フェリシティ:マーガレット・クォーリー…ベラが出て行った後にゴッドにより脳を入れ替えられた女性。

■アリソン:キーリー・フォーサイス…女中。

■デヴィッド:ジョン・ロック…執事。

モノクロ映像が続き、途中からカラーに変わる。背景の映像がすばらしく、美術関連の賞も獲りそうだ。

 

予告記事:

fpd.hatenablog.com

【おまけ】ゆりやん淀川長治になって解説すると…。

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