fpdの映画スクラップ貼

「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「関の弥太ッぺ」(1963、東映、山下耕作監督)を見る(初見)。涙腺緩む。

関の弥太ッぺ」(1963、東映山下耕作監督)を見る(初見)。主演は中村錦之助。上映時間89分。長谷川伸の傑作股旅文学の映画化。

顔に大きな刀傷、生き別れの妹を探して旅から旅の関の彌太ッぺ。旅の途中、ふとしたことで助けた親を失くした一人ぼっちの少女に妹の面影を見い出した。

そして10年。再会した少女は美しい娘に成長していた。ヤクザ渡世に生きてきた男の苦渋と心の優しさを、悲しく美しくうたい上げた作品。

・・・

(あらすじ)ふとしたきっかけから、孤児のお小夜を旅篭“沢井屋”に届け、名も告げず去っていった旅人・関の弥太ッぺ(中村錦之助)。

10年後、お小夜一家が彼を命の恩人として探していると知らされるが、ヤクザ渡世の身をはばかって立ち寄ろうともしない。

しかし、同じヤクザ仲間の箱田の森介(木村功)が、昔の恩人と偽って沢井屋に乗り込み、お小夜を苦しめていると知るや、弥太ッぺは素性を隠してお小夜の前に現れる…。

・・・
最大の見せ場は弥太ッぺとお小夜の再会のシーン。
お小夜の前に変わり果てた姿で現れた弥太ッぺに対して「どうかお名前を?」と尋ねるお小夜に対し「旅人には名前はありません」と弥太ッぺは立ち去ろうとする。

この娑婆(しゃば)にゃあ、悲しいこと辛えことがたくさんある。だが、忘れるこった。忘れて日が暮れりゃ、あしたになる」…この言葉は、お小夜が10年前に聞いた言葉そのものだった。弥太ッぺはその言葉を残すと、さっと立ち去っていく。

ハッと気づいたお小夜が家人たちに「あの人です!あの人です!」と叫び「旅人さん」と呼び止めようとする場面は涙腺を緩ませる。

        「忘れて日が暮れりゃ、あしたになる

弥太ッぺ(中村錦之助)の殺陣シーンも迫力がある。森介(木村功)と対峙したシーンで、森介が刀を抜くと、弥太ッぺが「抜いたな。血迷ったな」といい、一瞬のうちに森介を斬り倒すのだ。

・・・
常陸の国結城在、関本に生れた、若くていなせな弥太ッぺ(中村錦之助)は、10年前両親に死に別れ、祭りの晩にはぐれた当時8つの妹・お糸を探して旅を続けていた。

途中、甲州街道吉野の宿で、旅の娘・お小夜(上木三津子)が溺れかかっているのを救ったが、お糸のためにと肌み離さず持っていた50両の大金を、お小夜の父・和吉(大坂志郎)にすり盗られた。

が、その和吉も箱田の森介(木村功)に斬られた。弥太ッぺに対して、訳あって自分の名前は名乗れないが、お小夜を旅篭“沢井屋”に届けてくれと頼みながら息をひきとった。

沢井屋の女主人・お金(夏川静江)は、緑もゆかりもない子供と拒絶したが、お小夜が13年前に誘拐された娘の落し子と知って驚喜した。

それから10年後。弥太ッぺは、お糸の病死を賭博・田毎の才兵衛(月形龍之介)から知らされ、すさんだ生活に身をおとし、飯岡の助五郎(安部徹)一家の客人となっていた。
笹川の繁蔵一家との喧嘩に加わった弥太ッぺは10両が縁で兄弟分の契(ちぎり)を結んだ森介(木村功)の姿をみつけた。

一緒に大綱楼にくりこんだ弥太ッぺに、才兵衛は、お小夜の恩人を探してくれるよう依頼されたと話した。

弥太ッぺは知らないそぶりをした。森介と別れた弥太ッぺは、吉野宿の祭礼でお小夜らしい娘を見つけてハッとした。

沢井屋の裏手で、夕闇の中にお小夜の姿を認めて身じろぎもできない、純心な弥太ッぺなのだった。

才兵衛から話を聞いた森介は、お金に目がくらみ、自分がお小夜の恩人だと名のり出た。そしてお小夜を嫁にときり出すのだった。恩人と信じこんでいたお金(夏川静江)も、あまりのたけだけしい森介に当惑する毎日だった。

腕ずくでもと血迷う森介の噂を聞いてかけつけた弥太ッぺは、宝物のように大切にしてきたお小夜のために、兄弟分の縁を切って、森介を斬り捨てた。

そして森介が詐し取った45両の金を返す弥太ッぺをじっとみつめるお小夜の脳裏に、10年前の弥太ッぺの面影がよみがえって来た。

弥太ッぺこそ恩人と悟り「待って下さい」と追いすがるお小夜(十朱幸代)をあとに、かねて約束の助五郎一家との果し合いをせかせる暮六つの鐘の音が鳴り響いた。

一本松へといそぐ弥太ッぺの姿も心もちか、淋しい日暮れであった。

<主な登場人物>
■関の弥太郎:中村錦之助 (萬屋錦之介)…常州常陸国=ひたちのくに=現茨城県)出身で、人ひとり斬って1両の股旅の渡世人
■箱田の森介:木村功…最初は弥太郎を兄ぃと慕っていたが、打算的で腹黒い。
■お小夜(21歳):十朱幸代、(11歳):上木三津子…亡き母の面影をしのび母が好きだった歌を口ずさむ。11歳の時に助けられた恩人との再会を願っている。
■堺の和吉(お小夜の父):大坂志郎…盗人とされ、箱田の森介に斬られる。
沢井屋お金(お小夜の祖母):夏川静江…お小夜が孫と知り大事にする。
■銀太郎(お小夜の叔父):武内亨
■おすみ(銀太郎の女房):鳳八千代…お小夜の叔母。
■飯岡の助五郎:安部徹
茶店の親父:坂本武
■田毎の才兵衛:月形龍之介
■お由良:岩崎加根子
・・・
映画やテレビドラマでもたびたび作品化されている。映画化は5回。ドラマ化(テレビ)は3回(1959、1960、1972)。
■映画「関の弥太っぺ」(1935、日活京都)…主演:大河内傳次郎/監督:稲垣浩山中貞雄。フイルム現存せず)
■映画「関の弥太っぺ」(1953、大映)…主演:黒川弥太郎/監督:田坂勝彦。
■映画「関の弥太っぺ」(1955、新東宝)…主演:島田正吾/監督:渡辺邦男
■映画「関の弥太っぺ」(1959、大映)…主演:長谷川一夫/監督:加戸敏。
■映画「関の弥太っぺ」(1963、東映)…主演:中村錦之助/監督:山下耕作
■ドラマ「鶴田浩二シリーズ」(1959、フジ)…主演:鶴田浩二
■ドラマ「新国劇アワー」(1960、KRテレビ)…主演:島田省吾
■ドラマ「長谷川伸シリーズ」(1972)…主演:萬屋錦之介

「DVD」で鑑賞。

■「にほんブログ村」にポチッと!。

https://movie.blogmura.com/ranking/in   

https://movie.blogmura.com/moviereview/ranking/in