映画「マエストロ:その音楽と愛と」(原題:Maestro, 2023)を見る。
「ウエスト・サイド物語」の作曲で知られる20世紀の偉大な名指揮者で作曲家の一人、レナード・バーンスタインと妻フェリシアが歩んだ紆余曲折に満ちた愛と葛藤の人生を描いている。
監督は「アリー スター誕生」で高い評価を得たされたブラッドリー・クーパーで、長編第2作でもある。クーパーは、俳優・監督で成功を収めているクリント・イーストウッドを追う勢い。
若いころから晩年までのバーンスタインを演じ、共同脚本のほか、製作にもマーティン・スコセッシ、スティーブン・スピルバーグとともに名を連ねている。
バーンスタインの妻フェリシアを演じるのは「ドライヴ」「華麗なるギャツビー」「プロミシング・ヤング・ウーマン」のキャリー・マリガン。
キュートなイメージのマリガンだったが、実年齢30代だが、この映画では、病魔に侵される晩年までを堂々とした佇まいで演じている。
ゴールデングローブ(GG)賞では作品賞、監督賞、主演女優賞、主演男優賞と主要部門すべてにノミネート。これから始まるアカデミー賞を含む賞レースシーズンをにぎわす作品の1本になりそうだ。
バーンスタインは、3人の子供がいたが、同性愛者でもあったということが描かれ、最近ハリウッドの映画テーマではもういいというほど多いLGBTを扱っている。
共演はドラマ「ホワイトカラー」のマット・ボマー、ドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」のマヤ・ホークなど。
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映画は、モノクロで始まり1950年代末期以降の時代背景を映し出していた。中盤からカラーに変わり、画面が華麗な雰囲気になる。
目や鼻など風貌・メイクからバーンスタインに見えてきてしまうブラッドリー・クーパーの鬼気迫る指揮を行うシーンは圧巻。
「ウエスト・サイド物語」に関する作曲などは登場せず、わずかにワンシーンで、ジェット団がフィンガースナップで鳴らして登場するシーンにかかる音楽が流れていただけ(このシーンだけは、キタ~と思ったが。笑)
妻のフェリシアともどもヘビースモーカーという点は同じだが、夫が同性愛者であることを黙認しつつ、また様々ぶつかり合うことがあっても、病魔に襲われ最後まで添い遂げるフェリシア。
この映画の中心はタイトルロールの一番手に上がっているのが妻役のキャリー・マリガン(フェリシア)。この映画は妻や娘の視点から見た、夫であり父親のバーンスタインを描いていると見える。
30代後半のマリガンだが、中年以降の年輪を重ねたような顔立ちは、ベテランの雰囲気で、主演女優賞の最有力候補かも知れない。
チリ出身のフェリシアが夫との暮らしの不満をバーンスタインに言うセリフが印象に残る。
「”クソしかしない鳥の下に立つな”というチリの格言がある。私はまさにその下にいた。笑えるくらい長い間」
というものだ。
このセリフは、フェリシアがベッドから、夫の枕とスリッパなどを部屋の外に出したことから、バーンスタインが「随分と思い切ったやり方だ」と非難めいたことを言ったことに対する言葉だった。
フェリシアは、気丈ではあったが、やがて病魔に襲われる。乳房の腫瘍摘出・手術や肺の手術などだ。ヘビースモーカーの影響か。
娘たちが病院に見舞いに来た時には、毛糸の帽子をかぶっていたので、髪が抜け落ちていたようだ。子供たちが見舞いから帰った後、夫と静かにベッドに戻るが、悲しそうな表情だった。
やがて、妻の荷物などを持ち出す風景があり、妻が亡くなったことを示していた。
バーンスタインは、相変わらず、指揮の指導を続けていたが、若者の指揮にあれこれ注文を付けていたが、文句というよりも、またまた同性愛の感情が湧き上がってきたようだった。
指揮者に限らず芸術家は「ベニスに死す」にしろ「TAR/ター」にしろ、凡人とは異なる性分があるという(傾向がある)のは言い過ぎか。
町山智浩によると、レナード・バーンスタインは「ウエスト・サイド物語」では、それまで白人中心の映画や音楽の中に、プエルトリコ系やイタリア系といった多民族や音楽を最初に取り入れた作曲家だという。
レナード・バーンスタインは、もともとクラシック系の作曲家だったが、ラテン系(サルサなど)、ジャズ系(黒人)、チェコ系などの曲を一人ですべて作曲するところがすごいという。
バーンスタインもスピルバーグもユダヤ系で、もともとスピルバーグが監督を予定していたが、「アリー/スター誕生」を見たスピルバーグが、同じ音楽映画で、ブラッドリーに監督を勧めたという。
主な登場人物:
■フェリシア・モンテアレグレ・コーン・バーンスタイン:キャリー・マリガン
■レナード・バーンスタイン:ブラッドリー・クーパー
■デヴィッド・オッペンハイム:マット・ボマー
■ジェイミー・バーンスタイン:マヤ・ホーク
■シャーリー・バーンスタイン:サラ・シルヴァーマン
■ジェローム・ロビンズ:マイケル・ユーリー
■ジョシュ・ハミルトン
■スコット・エリス
■サム・ニヴォラ
■トミー・コスラン:ギデオン・グリック
■ニーナ・バーンスタイン:アレクサ・スウィントン
■ミリアム・ショア
見事なオーケストラの指揮を見せたブラッドリー・クーパーだが、指揮の練習に6年を費やしたというから驚きだ。
試写イベントに出席したブラッドリーが、心配なシーンがあったとコメント。「ロンドン交響楽団のシーンで、ライブ撮影をする予定でした。指揮をする必要があったんです。6分21秒音楽を指揮するために、指揮の練習に6年費やしました」と語った。
指揮の勉強には、メトロポリタン・オペラのディレクター、ヤニック・ネゼ=セガンらが先生となり、助けてくれたという(Yahooニュースより)。
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ピアノにしても、トイレ掃除(「PERFECT DAYS」)にしても、1日2日練習して、「ハイ、スタート!」でできるわけがない(笑)。
「Netflix」配信で鑑賞。
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