fpdの映画スクラップ貼

「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

「コーヒーブレイク」このブログのタイトルの由来…?(どうでもいい。笑)

    

このブログは「fpdの映画スクラップ帖」(名作に進路を取れ!)というタイトルで17年以上続いている。当初は、たしか「たかが映画、されど映画」(映画と台湾の二刀流のブログだった)。

fpdってなに?と当初、百回くらい聞かれた(笑)。

よく間違われるのが…。

pdf…かつてguchさんから。

fad…数年前にtosaさん猫姫さんから。

dpd…つい3、4日前に猫姫さんから。

わたしでさえ「犬姫さん」と間違えたことはない(笑)。

(証拠写真

なかなか覚えてもらえないのである。

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「スクラップ」は「スクラップ帳」でないのか…。

「帖」は諸説あるものの「黒革の手帖」説よりも「舞踏会の手帖」が有力。

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「フランス映画っていいな」と思わせてくれた古典的名作「舞踏会の手帖」。

一部、修正し再掲。

 

   

フランスの名監督ジュリアン・デュヴィヴィエの「舞踏会の手帖」(1937)は、富豪で年配の夫に死別した女性が、20年前の手帖に残した8人の男性を次々とを訪ねて歩く、まさに舞台劇を思わせる物語である。
36歳で未亡人となった若いクリスティーヌが、16歳の時に初めて参加した時の舞踏会で、クリスチーヌに一度は「一生、愛する」という言葉をかけてきた踊り相手の男たちは、20年の時を経てどうなっているのか…。20年前の面影やいかに…。
この映画には、当時の映画界では最高の俳優・女優が出演している。「ミモザ館」「女だけの都」「外人部隊」などの大女優フランソワーズ・ロゼーのほか、「どん底」などのルイ・ジューヴェ、フェルナンデルなどである。
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秋も終わろうとする11月のコモ湖畔(イタリア)にある厳かな古城は、霧が立ち込めて憂愁な雰囲気だった。湖畔にヨットが浮かんでいた。
36歳になるクリスチーヌ(マリー・ベル)は、年の離れた夫の葬儀を済ませたばかりである。非常に人の良い夫ではあったが、年の差によるものかクリスチーヌは夫に愛情を感じないままに終わった。
美しい若妻をいとおしむ余りに、生前の夫は彼女に誰とも交際も許さなかった。クリスチーヌは過ぎた20年間の結婚生活に、青春の悦びを味わった事のない淋しさを感じていた。
夫を失ったクリスチーヌは誰ひとりの身寄りもなく、訪ねるべき友いなかった。だが、まだ若い。もう一度人生を新しく出直そう。彼女は、そう決心したのだった。
クリスチーヌは夫の形見をすべて召使達に与え、思い出の品を暖炉に投げた。その中から、ふと取り落とした一冊の手帖があった。
それは、クリスチーヌが一人前の女として初めて舞踏会に出た時の、ダンスをした相手の男の名前を書き記したものである。彼らの誰もが、若いクリスチーヌに愛の言葉をささやいたのだった。「一生、愛します」という言葉が、クリスチーヌにかけられたのだった。
あの時の10人の若者たちは、今はどうしているのだろう。想い出そうとしても20年の歳月は、すっかり記憶を消してしまっていた。
いや、そうではない。あのジェラールを、どうして忘れられることができようか。
彼は、その時18歳だった。金髪で、ギリシャ神話の神の様に美しかったジェラール。16歳のクリスチーヌが秘かに愛を感じたジェラールである。
クリスチーヌは目を閉じた。まぶたに浮かぶのは美しいシャンデリヤの下で、甘いワルツの曲に乗って、白いレースの裳も軽く踊りに酔った20年も昔の舞踏会だった。
亡き夫の秘書であったブレモン(ベナール)に頼んで、10人の男たちの住所を調べてもらうと、その内の2人はすでに他界。そして皮肉にも、ジェラールだけが住所が解らないという。
クリスチーヌは旅装を整えた。
最初に訪問したのは、ジョルジュ・オーディエの家だった。出迎えたのはジョルジュの母のオーディエ夫人(フランソワーズ・ロゼー)だった。
夫人はクリスチーヌと対座すると「あなたはクリスチーヌでしょう、いまジョルジュは戻ります、是非会って、あなたの娘さんと結婚させて下さい」と言う。
ジョルジュは、20年前、クリスチーヌが婚約すると聞いた時に自殺したのだった。
動転した母親はその死亡通知も出さなかったので、クリスチーヌも今初めて知ったのだ。気の狂(ふ)れた母は、息子が生きていると思い込み、息子の亡霊と暮らしていたのだった。
10数年前に思考の止まった息子の母親は、苦悩を紛らわせるために狂気を装っているだけなのか。
次にピエール・ヴェルディエを訪ねていくと、ピエールは、キャバレーの経営者となっていて、名前もジョー(ルイ・ジューヴェ)と変えていた。
ナイトクラブを経営するかたわら、強盗団の親分となって、前科者になっていた。クリスチーヌが訪問すると「金かい?困ったとき、客を取りたければ、名前をクリクリに変えて、若作りしろ」と言う始末。「勘違いしていた」とクリスチーヌが言うと「昔のよしみで、金の無心かと思った」とピエール。
ヴェルレーヌの詩を熱烈に暗誦した20年前の面影は、完全になくなっていた。弁護士は2年でやめて、出所後、今の仕事を始めたというピエール。
クリスチーヌが「凍てつける公園を、影ふたつ過ぎ去りぬ」という詩を伝えると覚えていて、その後半の部分「古き愛を 今も思うやと・・・我が名に胸が高鳴るか」と口にした。
さらに、クリスチーヌは続けて「草分けて行きし ふたりの 風のみぞ知る その言葉」。
その時、警官が踏み込んできた。ジョーは、クリスチーヌに「連行されるのはジョーだ。ピエールはきみに残す」。
悪徳酒場を経営する元弁護士で、クリスチーヌが金の無心に来たのだと思い込む。自分を尺度にして他人を観る、人間の浅ましい習性が皮肉。やがて旧交を取り戻したのも束の間、目の前で警官に逮捕され連行されて行く。
ピアニストだったアラン・レニョオル(アリ・ボール)を訪ねると、今は髪の毛もなく神父ドミニックと変身していた。当時は40歳の音楽家志望だった。
こうしてクリスチーヌは、次々にかつての男たちとあっていくが、生まれ故郷で理髪師になっているファビアン(フェルナンデル)と会った。
ファビアンは、自分の娘に、クリスチーヌという名前をつけていた。日曜の夜の舞踏会へ出て見た。寂れた舞踏会だった。
幻滅と共に帰宅したクリスチーヌは、ジェラールが湖の対岸に住むと初めて知って訪れた。しかし、彼は1週間前に死んでいた。
クリスチーヌは、その忘れ形見のジャック(ロベール・リナン)を養子に迎えた。ジャックは、亡きジェラールに瓜二つだった。クリスチーヌの心には、何か母性愛に似た愛情が芽生え始めていた。
ジャックは、今夜が初舞踏会だった。クリスチーヌは「初舞踏会は、初タバコのようなものよ」と笑顔で、ジャックを送り出すのだった。