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【高崎映画祭】映画「偶然と想像」(3話オムニバス、2021)を見る。濱口竜介監督(「ドライブ・マイ・カー」)。

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偶然と想像」(2021)を高崎映画祭授賞式会場の高崎芸術劇場で見た。監督は「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介。第71回ベルリン国際映画祭審査員グランプリを受賞を受賞。3話からなるオムニバス・ドラマ。セリフが舞台劇を思わせるような違和感のある会話劇だが、なぜかしっくりくるし緊張感もある。

第1話「魔法(よりもっと不確か)

カメラマンがモデル撮影を行って、パソコン画面で出来栄えを確認。OKが出て、モデルの芽衣子(古川琴音)は、親友でヘアメイクアーティストのつぐみ(玄理)とタクシーで帰宅の途につく。

車中で、芽衣子はつぐみから最近あった男が不思議にも似た境遇だからか波長が合ったと聞かされる。相手とは、これまでにないほど生い立ちからすべてを話せるほど「魔法のような出会い」だったという。会ったその日に、エロい雰囲気もあったが、次に会う約束をして別れたという。話を聞いて、その男が2年前に別れた自分の元カレであることに気づいてしまった芽衣子。

元恋人の和明(中島歩)のところに行き、つぐみから聞いたことを和明に伝える。親友への嫉妬か、元彼への怒りか…。矛盾する感情だがたどり着く場所は不確か。

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f:id:fpd:20220327152328j:plain 火花が散りそうなシーン。

第2話「扉は開けたままで

芥川賞を受賞した大学教授・瀬川(渋川清彦)に留年させられた大学生・佐々木(甲斐翔真)は、逆恨みし、セフレの奈緒(森郁月)にハニートラップを仕掛けるよう持ちかける。奈緒は復讐のため、瀬川の部屋を訪れる。瀬川の前で土下座をしてなにか懇願している男がいた。大学関係者が扉を締めようとすると、瀬川は「扉は開けたままにして」と伝える。

f:id:fpd:20220327152503j:plain 特別な箇所を朗読する奈緒

奈緒は、瀬川の部屋に入り、小説で、独特な表現の箇所が印象的で、朗読させて欲しいと伝え、そのページにサインを頼む。その箇所は、エロティックな表現があり、奈緒がドアを締めようとすると、瀬川が近づき、扉を開ける。

独身で堅物の瀬川は、朗読の部分など会話が録音されていたことを知り、怒りよりもむしろ、自分の文章が声のいい女性の声で聞き興奮を覚え、録音をメールで送るように奈緒に頼む。

奈緒が家のパソコンから録音を大学のメールアドレスに、segawaと入力するべきところを、家族の「佐川」から宅配便というのが耳に入り、無意識にsagawaと入力してしまい、教授と学生のやり取りが大学の別の部署に届き、スキャンダルとなり、教授は職を追われ、奈緒も離婚することになる。

第3話「もう一度

高校時代の友人である夏子(占部房子)とあや(河井青葉)が、20年ぶりに仙台で再会。当時のことで盛り上がるが、出身校も違うことが分かり、徐々にすれ違っていく。

互いに勘違いが重なるという偶然によって、本来出会うはずのない赤の他人の2人が、かつての親友、パートナーの立場を想像して演技することで、親密な関係を築いていく。

f:id:fpd:20220327152552j:plain 他人同士が互いのパートナーを演じる

・・・

会話劇が舞台劇のような棒読みにも聞こえるが、妙にリアル。1話は3角関係の緊張感。第2話は滑稽さ。第3話は見ず知らずの相手に「今幸せか」と聞く唐突さがあるが偶然から希望の光が見えはじめる。

製作コストがほとんどかかっていないような映画でもずっしりと残る映画。それぞれ2、3人の登場人物と少なく、スケールの小さな3話のオムニバス構成ながら、散りばめられたユーモアが軽やかさと、これからどうなるという予測不能な展開まで引き込まれる。

第2話の女子大生役の森郁月(もり・かつき)という女優は「検察側の罪人」にも出ていたというが気付かなかった。なかなか魅力的な、隣のお姉さんという雰囲気でいい。

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濱口竜介の脚本と演出が素晴らしく、平凡な日常から人物の核となる内面までも抉り出す非凡なストーリーを見せつけられて満足な映画だった。

 

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