一癖も二癖もあるクエンティン・タランティーノ監督が「ジャンゴ 繋がれざる者」(2012)以来3年ぶりの作品となる第8作目「ヘイトフル・エイト」(原題:The Hateful Eight、2015)を見た。”密室劇”はおもしろい。2016年2月27日公開。
タイトルは「荒野の七人」「七人の侍」などにインスパイアされたといい、”憎むべき8人”あるいは”8人の悪人”といったところか。
猛吹雪の中の家屋に閉じ込められた8人を主題に”密室劇”を描いたミステリー映画・西部劇。「アカデミー賞大本命!」とうたっていたが、音楽を担当したエンニオ・モリコーネのアカデミー賞作曲賞のみ受賞。
この映画で女囚を演じたジェニファー・ジェイソン・リーという女優がすごすぎる!これまでに見たこともないほどの圧倒的”神業的”演技で、この映画でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされた。
手錠をかけられ、何度顔面を殴られて血を吐いても平然として、口汚くののしる、この女優の一挙手一投足を見るだけでも価値がある映画だった。
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舞台は南北戦争から約10年後、雪の降るワイオミング。賞金稼ぎのジョン・ルース(カート・ラッセル)と女囚人のデイジー・ドメルグ(ジェニファー・ジェイソン・リー)を乗せた馬車は、デイジーを処刑するためにレッドロックという町に向かっていた。
その道中で連邦軍兵士上がりの悪名高き賞金稼ぎのマーキス・ウォーレン(サミュエル・L・ジャクソン)と、町の新しい保安官だと言う南軍の裏切り者のクリス・マニックス(ウォルトン・ゴギンズ)に出会い、馬車は4人を乗せて再び走り出す。
しかし吹雪にあってしまったため、その馬車は避難の為に「ミニーの店」に向かう。
「ミニーの店」に到着すると、女店主ミニーはおらず、留守番のボブ(デミアン・ビチル)とレッドロックの絞首刑執行人オズワルド・モブレー(ティム・ロス)、南軍将軍サンフォード・スミサーズ(ブルース・ダーン)、カウボーイのジョー・ゲージ(マイケル・マドセン)の4人がいた。
吹雪が激しさを増す中、ロッジに集まった訳アリの8人の男女。偶然集まったように見えた8人の過去がつながりはじめ、予想もできないようなことが起こる・・・。
前半が雪山を走る駅馬車のシーンなど静かな展開だったが、後半は、一転してサスペンスとバイオレンスに包まれる展開。特にラスト・シーンは壮絶で、誰にでもおすすめという映画ではない。
後味の悪い映画で、救いもなければ、登場人物の誰にも感情移入はできない、悪党ばかりが登場する映画だった。賛否両論があっても、それでもクセになるところは、さすがはタランティーノ監督と言うべきか。
アッと言わせるシーンや、サスペンスが展開する。ほんの一例は、コーヒーポットのシーン。コーヒー湯沸かしポットに毒を入れる手元のシーンだけが映る。ほとんどの人間がののしり騒いでいる中で、一人だけ、ポットのほうを見ている人間がいた!(その人間は、毒を盛った人間とグルであることがわかる。コーヒーを飲む人間は、犯人ではない。そこからの展開がすさまじい。)
タランティーノ監督と言えば、シネフィルを自称する映画オタクといわれるほど映画を見まくっている監督。日本映画では深作欣二監督の「バトル・ロワイアル」(2000)に心酔。出演者の一人、栗山千明を、自身のバイオレン映画「キル・ビル」(2003)に起用。千葉真一(Sonny Chiba)の熱狂的ファンで千葉真一も「キル・ビル」に出演させた。また「修羅雪姫」(梶芽衣子版)を彷彿させるシーンが多く、同じく梶芽衣子主演の映画「女囚さそり701号 怨み節」の主題歌がラストで流れるのも度肝を抜いた。
タランティーノ監督作品 | ||
1 | 「レザボア・ドッグス」 | 1992 |
2 | 「パルプ・フィクション」 | 1994 |
3 | 「ジャッキー・ブラウン」 | 1997 |
4 | 「キル・ビル Vol1&Vol.2」 | 2003/2004 |
5 | 「デス・プルーフINグラインドハウス」 | 2007 |
6 | 「イングロリアス・バスターズ」 | 2009 |
7 | 「ジャンゴ 繋がれざる者」 | 2012 |
8 | 「ヘイトフル・エイト」 | 2015 |
(5のみ未見)
個人的ベスト3
①「キル・ビル」(時間軸で最初に見た作品で衝撃)
②「イングロリアス・バスターズ」(クリストフ・ヴァルツの切れ味)
③「ヘイトフル・エイト」(エンタメ性)
次点:「レザボア・ドッグス」
☆☆☆