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スペシャルドラマ「女系家族」(2夜連続、2021、テレビ朝日)見る。

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山崎豊子の原作の面白さから、映画版(1963)数回のテレビドラマ化で人気の「女系家族」が、4日、5日の2夜連続特別ドラマとして放送されたので見た。

大阪の老舗の「矢島商店」の四代目当主がなくなり、出戻りの長女、次女、三女の3姉妹による遺産相続かと思いきや、当主の愛人の出現、大番頭の不正工作などで、ドロドロの戦いが描かれる。最後に笑うのは…だが、どんでん返しの面白さもある。

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四代目当主を演じるのは役所広司。日本映画界の大御所的な存在だが、今回は特別出演で、写真と病床のシーンなど登場シーンは少ないが、貫禄を見せる。

エンディングノートが流行っている現代だが、ドラマの時代は平成20年代末期に設定されており、自身の死後の財産分与や、愛人の処遇、さらにはその愛人が身ごもり、生まれてくるであろう子供に対して、胎児の段階で認知書を残しておくという徹底ぶり。

これが、女系の3姉妹の財産分与に衝撃的な一撃を加える切り札となった。

それだけでなく、財産目録も用意し、遺産相続の執行人に指名した大番頭に対して、万一不正があった場合の処置についても遺言を残すという手際よさにも驚かされる。

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この当主の愛人・浜田文乃を宮沢りえが演じる。無欲で正直さ、慎ましさを見せていたが、3姉妹とその叔母などの仕打ちに対して、静かに、たんたんとだが、相手にグーの音も出ないほどに、その強さを見せつけていく展開が面白い。

3姉妹と叔母が、妊娠中の文乃を訪ねてくるが、見舞いは名目せ、次女がかかりつけの医者を呼んでいて、中絶を目論む算段などを垣間見せる。

文乃には、この3姉妹と叔母たちは、人間ではなく、妖怪のように映るのだった。

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3姉妹や叔母は、子供を産ませてなるものかといった妨害に打って出るのだが・・・。叔母が浜田文乃をベッドの上で押さえ込もうと、飛びかかって羽交い締めにするシーンなど、滑稽だが凄まじい。

この渡辺えり扮する叔母は、文乃が仏壇の前で手を合わせようとするときにも、飛びかかってきた。「羽織はカーディガンのようなもので、羽織を脱がないのは作法知らずだ!」と猛烈に責め立てるのだ。過剰演技のようで、漫画チックでやりすぎ?!(笑)。

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原作では、矢島家の日常なども詳しく描かれるが、ドラマ版はかなり圧縮している。それでも、大番頭が、長女などの横暴ぶりを聞かないふりをして、阿波踊りのように、踊る格好で茶化したりする、新しい味付けもあった。

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遺産相続をテーマにしているが、愛人と矢島家の戦い、姉妹間の女同士の戦い、欲深い人間の強欲や、嫉妬など、山崎豊子の作品は面白い。