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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「Mank/マンク」(原題:Mank、2020)を見る。「市民ケーン」脚本家の伝記映画。

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Mank/マンク」(原題:Mank、2020)を見る。映画史に残る名作として知られる「市民ケーンの共同脚本家ハーマン・J・マンキーウィッツ(愛称:マンク)の伝記映画。モノクロ。

監督は「セブン」ゴーン・ガール」のデヴィッド・フィンチャー。父ジャック・フィンチャーの脚本を映画化。「イヴの総て」のアカデミー賞監督ジョセフ・L・マンキーウィッツは弟。

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アルコール依存症の脚本家ハーマン・J・マンキウィッツが「市民ケーン」の仕上げを急いでいた頃の1930年代のハリウッドを、機知と風刺に富んだ彼の視点から描く。

監督のフィンチャーは「市民ケーン」の撮影監督グレッグ・トーランド表現主義的な技法を再現するために、白黒で撮影をおこなった。30年代の雰囲気は白黒で重厚さが出ている。

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ハーマンを演じるゲイリー・オールドマンは「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」(2017)でアカデミー賞主演男優賞を受賞したが「マンク」もこれに劣らずの名演(怪演)で、再度アカデミー賞受賞の可能性もありそう。

共演は「マンマ・ミーア!」のアマンダ・サイフレッド、「しあわせの隠れ場所」のリリー・コリンズ、「フルメタル・ジャケット」のアーリス・ハワード、「ホステージ 人質奪還作戦」のトム・ペルフリー、「ゲーム・オブ・スローンズ」のチャールズ・ダンスなど。 

女優のマリオン・デイヴィス、プロデューサーのアーヴィング・タルバーグ、新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハースト、大プロデューサー・ルイス・B・メイヤーなど数多くの映画人が実名で登場する。ハリウッドスタジオのMGM、ラジオ局のRKOなどの時代背景の予備知識がないとわかりにくい面もある。

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アルコールで酔ったハーマン・J・マンキウィッツ(ゲイリー・オールドマン)が、会食の席上で、独演のようにしゃべるシーンは圧巻。幻覚症状のように、人々の顔のアップなどが交互に映し出されるシーンなどはド迫力。

市民ケーン」の発表を控えたオーソン・ウェルズトム・バーク)は、若干24歳だったが、大物プロデューサーらからも一目を置かれる存在で、醸し出す雰囲気が押し出しの強さと相まって、圧倒する。

マンキウィッツの速記を担当する女性リタ・アレクサンダー(リリー・コリンズ)は、聡明で控えめだが、芯の強さをみせるところが印象的。

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マリオン・デイヴィスアマンダ・セイフライド)は、ハーマン・J・マンキーウィッツの愛人で「市民ケーン」のヒロインのモデルとなる人物。30年代の女優然とした雰囲気がある。

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「今年度のアカデミー賞大本命」といわれている。アカデミー賞前にもう一度見てみたい。Netflixで昨日(12月4日)から配信開始された。

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物語は、ゲイリー・オールドマン演じるハーマン・J・マンキーウィッツが「市民ケーン」の脚本を執筆する“現在”の時間と、彼が脚本にかかる前、カリフォルニア州知事選の期間にハリウッドで過ごした日々が“過去”の時間として、「回想」という形の二つの時間が並行して語られていく。

この構成は、「市民ケーン」で、ケーンの死後の時間と、ケーンの半生が並行して語られていく試みに近い。そして、ベッドで酒ビンを落とすシーンなど「市民ケーン」にオマージュを捧げるような映像が、モノクロで再現されている。

ハーマン・J・マンキーウィッツは、持ち前のユーモアで一時はウィリアム・ハーストに気に入られていた。ジョークがうまいので「面白い奴」と喜ばれていたのだ。

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しかし、新企画の「市民ケーン」の内容がハーストや、その愛人で映画スターであるマリオン・デイヴィスを中傷するようなものであることが知れると、ハーストの息のかかった映画人たちから「モンキーウィッツ」などとののしられる。ハーストが「オルガンを弾く猿」の話を説明していたが、ハーマンは実業家ハーストからみれば、猿回しの猿としてしか扱われていなかったのだ。

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先日見た「シカゴ7裁判」で、今年度のアカデミー賞作品賞は決まり、と思ったが、「MANK/マンク」の登場で、一騎打ちの公算が強まった印象。どちらもNetflixというところが、時代の変化を感じさせる。