「シカゴ7裁判」(原題: The Trial of the Chicago 7、2020)を見る(Netflix)。骨太の実録法廷映画。アーロン・ソーキンのオリジナル脚本を自ら監督した。”シカゴ・セブン”と呼ばれた実在の被告たちを描く。
主演はエディ・レッドメイン。アメリカでは新型コロナウィルスの流行により配給のパラマウントは劇場公開を断念し、Netflixに権利を売却。Netflixは配信に先駆けて、一部の映画館で公開。アカデミー賞の有力候補になりそう。
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ベトナム戦争真っただ中の1968年。ケネディ大統領暗殺後、後任を選ぶ大統領選挙を控えた8月28日、イリノイ州シカゴで 民主党の全国大会が開かれていた。それに合わせて全国から反ベトナム戦争派の若者たちが集結し、集会やデモを繰り広げていた。
そして、会場近くのグランド・パークでは、デモ隊と警察が衝突し騒乱となり、数百名の負傷者を出す事件へと発展した。
共和党のニクソン政権が誕生した約5ヶ月後、デモに参加した各グループのリーダー的存在だった7人が、暴動を扇動したとして共謀罪などの罪に問われ、法廷に立つことになる。
型破りなメンバーたちは、保守的なジュリアス・ホフマン裁判長(フランク・ランジェラ)に反抗し、繰り返し法廷侮辱罪に問われる。中でもブラックパンサー党のボビー(ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世)は弁護士をつけずに自らを弁護、仲間が警察の捜査で射殺された怒りをぶつけ、ついには身体を拘束される。温厚なデリンジャー(ジョン・キャロル・リンチ)までも、裁判長への反発から職員に暴力をふるってしまう。
弁護士のウィリアム・クンスラ―(マーク・ライランス)は起死回生をかけて、クラーク前司法長官(マイケル・キートン)を証人として召喚する。
クラークは当時の捜査で暴動のきっかけを作ったのは警察側であるという結論に至った事を証言。検察側の弁護士のシュルツは、それは前政権の時の判断だと応戦する。
裁判の終盤、市民から録音テープが証拠として提出される。それはトム・ヘイデン(エディ・レッドメイン)が集会で、警察が友人に暴力をふるったことに逆上して聴衆に血を流せと扇動している声が記録されていた。証言に立ったアビー・ホフマン(サシャ・バロン・コーエン)は聖書を引用してヘイデンを弁護する。
裁判の最後、裁判長から陳述を求められたヘイデンは、裁判の最中も続いているベトナム戦争で戦死した米兵の名前を次々と読み上げる。激高する裁判長をよそに、他のメンバーや弁護士、傍聴人までもが起立する。ついにはシュルツも立ち上がり死者への哀悼を示した。ヘイデンらは懲役5年の判決を受けるが、後に再審理となり、検察側は追訴を断念する。
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「わが愛は消え去りて」(1970)でデビューしたフランク・ランジェラが判事(裁判長)を演じているが、その横暴ぶりがすさまじい。被告人に弁護の機会を与えず、結論ありきの裁判を進める。法廷の中では、なにか意見を言おうものなら、法廷侮辱罪で退けてしまう。弁護側が前司法長官を証人として喚問する。マイケル・キートン演じる前司法長官が登場すると流れが変わる。
弁護側は、裁判長の制止を振り切って、ベトナム戦争で亡くなった若者たち5,000人の名前と年齢を一人一人読み上げるシーンは感動的。傍聴席からは全員が起立し拍手をする。
今見るべき映画の1本かもしれない。
主な出演者:
ジョセフ・ゴードン=レヴィット:リチャード・シュルツ
アレックス・シャープ:アレックス・シャープレニー・デイヴィス
ケルヴィン・ハリソン・Jr.:フレッド・ハンプトン
ジョン・ドーマン:ジョン・N・ミッチェル
ノア・ロビンス:リー・ウィンナー
ダニエル・ハラハティ:ジョン・フロイネス
ベン・シェンクマン:レナード・ワイングラス
マックス・アドラー:スタン・ウォジョハウスキー
ウェイン・デュヴァル:ポール・デルカ刑事