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映画「ヒューゴの不思議な発明」(2012)を再見。映画草創期の制作者、映画へのリスペクト。

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ヒューゴの不思議な発明」(2012)を再見した。マーティン・スコセッシ監督による映画草創期の映画発明者や、映画の制作者に対するリスペクトと映画愛にあふれた作品。

パリ、モンパルナス駅に住み、父の形見である機械人形を修理する孤児ヒューゴ。彼は、玩具屋を営む老人ジュルジュと知り合う。そのジュルジュと機械人形は、彼が葬り去った過去と深い繋がりがあった。人形が二人を縁で結び、人生を再生させるハートフルドラマ映画。

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1895年リュミエール兄弟が世界最初の実写映画「工場の出口」と「ラ・シオタ駅への列車の到着」を上映。汽車がカメラに向かってくるのを見て観客が大騒ぎしたという伝説があり、そのシーンも劇中劇で紹介される。

この映画は、時計職人の父を亡くした息子ヒューゴ・カプレが、知り合った冒険好きの少女イザベルとともに機械人形に隠された秘密を探る冒険ファンタジーという面と、世界初の商業監督ジョルジュ・メリエスという人物を描いた作品とも受け取れる。

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ジョルジュは、今はおもちゃ屋の主人で修理を行っている老人だが、元々は手品師で、その後、フイルムを使って映画を撮った。それが1902年の「月世界旅行」だ。映画の時代は終わったと感じ、フイルムを燃やしてしまっていたし、制作した機械人形も失っていた。もう誰も、ジョルジュのことを覚えていないと思っていた。

しかし、ジョルジュを慕う映画研究者の一人がフイルム1本を持っていた。また、時計職人の父から遺品のように残った機械人形を受け継いだヒューゴは、それを修理することで、父親の遺言があるのではと思うようになった。

機械人形を修理して行くと、機械はペンを持ち、ペン先にインクをつけて、文字や絵を描いていくのだった。それは「月世界旅行」(映画は14分)のモチーフである月の表面に砲弾が突き刺さっている絵柄だ。

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映画の内容は、天文学会のメンバーである6人の学者が、月世界旅行を企て、巨大な砲弾に乗って彼らは月に着陸する。そこは、見たこともない景色が広がる奇妙奇天烈な世界。探索の途中で、彼らは異星人の襲撃を受け、奮闘むなしく生け捕りにされた彼らは、月の王に差し出される。果たして彼らは無事に地球に戻れるのか・・・といったSFもの。

また、ダグラス・フェアバンクスの「ロビンフット」や、その原書、映画ポスターでは、チャップリン、映画プロデューサーのハル・ローチ、コメディアンのチャーリー・チェイスといった名前のポスターも見られた。

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機械人形のストーリーと並行して、当時の時代のいくつかのほのぼのとしたラブストーリーも描かれる。盗難、治安などを取り締まる義足の鉄道公安官とウエイトレス、ダックスフントをかわいがる老婦人に好意を寄せる老人などのほほえましいエピソードがある。この老人を見るとダックスフントは吠えたり、かみついたりする。この老人は考えた。自分も別のダックスフントを連れていこうと。すると、ダックスフント同士が仲良くなり、老人に吠えなくなるのだった。

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      公安官とマクシミリアン

公安官の警察犬マクシミリアンは、孤児であるヒューゴを追いかけるのだ。公安官によると、「マクシミリアンが吠えるのは、お前の人相が気に入らないかららしい」というのだ(笑)。

ヒューゴの時計台をはじめてみたイザベルは「すばらしい場所ね。ジャン・バルジャンになった気分がする」という。ジャン・バルジャンは「レ・ミゼラブル」(1862年発表のビクトル・ユゴーの大河小説)の主人公。

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イザベラ
を演じるクロエ・グレース・モレッツ(撮影当時14歳)のキュートなこと。ジョルジュ・メリエスを演じるサー・ベンキングズレーは、「ガンジー」(1982)でアカデミー賞主演男優賞を獲得した名優。ジュード・ロウが時計職人役で出演。

時計台から見たパリの風景から始まり、パリの風景描写で終わる、スコセッシ監督作品の中では、やや異質な自身の幼いころの体験と草創期の映画へのオマージュを盛り込んだファンタジー映画だ。

 

■8年前の記事:

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