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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「神様のくれた赤ん坊」(1979)再見(HULU)で。

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神様のくれた赤ん坊」(1979)はお気に入り映画で、HULUで再見した。監督は「スチャラカ社員」(1966)などの前田陽一。主演は桃井かおり渡瀬恒彦。今回初めて知ったが「集金旅行」(1957、松竹)のリメイク。鞍馬天狗の「アラカン」こと嵐寛寿郎1903年12月8日~1980年10月21日)が出演いるのは驚き。

 

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突然預けられた小学生低学年の子供・新一と小夜子(桃井かおり)と晋作(渡瀬恒彦)の元同棲カップルの3人で、西日本を中心に父親探しの旅に出るロードムービー

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主人公の森崎小夜子(桃井かおり)は24歳の駆け出しの女優。初めてセリフのある役をもらったが、そのセリフは「もしかしたら私たちの考えていることって同じじゃないかしら」。このセリフがラストシーンで効いてくる

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森崎小夜子(桃井かおり)は同棲相手・三浦晋作(渡瀬恒彦)に子供ができたらしいと告げると「生む」「生むな」の口論となる。そんな時、東京の自宅に見知らぬ女(樹木希林)が現れ「この子の母親あけみに頼まれて連れてきた」と手紙と男の子・新一を置いて帰ってしまう。

手紙には、晋作を含めて5人の男の名前と住所が記されていて「新一は、この5人の男性の誰かの子供。父親に新一を引き取って欲しい」と書かれていた。

突然男の子の父親候補となった晋作は、新一を引き取ってくれる父親を探すため彼らが住んでいる西日本を巡ることになる。小夜子は、病院で検査したところ、妊娠でなかったことがわかる。

晋作から尾道に行くことを聞いた小夜子は、上京前に住んでいた尾道の町や母の故郷などを訪れて自身のルーツをたどるため旅について行くことを決めるのだが・・・。 

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各地の父親候補探しの旅は、直接会って子供を引き取ってもらうか、あるいはせめて、養育費をそれぞれからもらうかという”集金旅行”(オリジナル映画)ということになる。

小夜子は当初、晋作を疑う。血液型で晋作はAB型で、新一はB型。晋作は左ききで、新一も食事で箸を左手を使っていた。「鼻の形も似ている」と小夜子。晋作は新一に「車は左、箸は右」と言い聞かせる。

新幹線に乗りこむ晋作と新一。すると、小夜子も席に座っており、尾道に用事もあり、知り合いに会うという。結局3人旅が始まる。

尾道に着いた晋作はさっそく1人目の父親候補・田島に会って新一について話をする。彼がA型であることなど父親でない証拠を見せられるが、田島は市長選に立候補中であり、秘書から養育費の名目でお金の包みをもらい、その場を後にする。

一方、小夜子は数年ぶりに尾道を訪れて懐かしむ。が、幼少期に住んでいた別の町の地名と城が分からず、その後行く先々の町に訪れてはおぼろげな記憶と照らし合わせて探そうとする。

次に3人が訪れたのは別府。その日偶然2人目の父親候補・福田(吉幾三)が披露宴を挙げると知って式場に押しかけ、ご祝儀の袋をまとめて引出物の袋に入れてもらい、その額は100万円にもおよぶ養育費だった。

晋作が次の目的地は長崎だと告げると小夜子は、母の故郷である天草に足を運ぶことになる。母の生家を見た小夜子はその夜、昔母が歌ってくれた島原の子守唄を新一に聞かせて、母との幸せな日々を思い出し目を潤ませる。

翌日、再び父親探しの旅に戻った3人は長崎市に訪れ、晋作が3人目の父親候補・桑野にあう。桑野は、西鉄ライオンズの元野球選手(投手)で、稲尾二世と呼ばれ、ドラフトで契約金1千万円をもらった男。

今はお好み屋を経営しているが、東京遠征の時に関係を持ったことはあるという。西鉄の中西選手の200号記念ボールを子供に与えて、お茶を濁そうとするが、ジャイアンツファンの子供は、「王選手でなくちゃあいやだ!」と毅然とした態度を示した。 

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それに対して晋作は「ライオンズファンに囲まれている中で、筋を通したのは骨があり、江川投手みたいだった」と子供をほめる。

一方、天草の住民から若い頃、母が長崎市内で働いていたとの情報を得た小夜子は、市内で母を知る人物に会って詳しい話を聞くことができた。

自身が生まれる前後に母が唐津に引っ越したとの情報を掴んだ小夜子は、3人で唐津へ向かい唐津城の城下町を散策する。

昔ながらの郵便ポストたばこ屋など町並みを見て回る小夜子の脳裏に幼い頃の思い出が蘇り、その風景の先にはおぼろげながら記憶にある、さがしていた城があった。幼少期に住んでいた町と確信した彼女は懐かしさで胸がいっぱいになる。

そして、父親探しの旅もついに最後となり3人は、北九州市に向かうが、4人目の父親候補・高田ごろうは気が荒い人物と知った晋作は緊張した面持ちに。ごろうの父親(嵐寛寿郎)の案内で、三代目を紹介される。3人は高田家を訪れると父親候補の男が既に故人だと判明したため、高田の妻・まさ(吉行和子)に何とか新一を引き取ってもらおうとする。まさによると、夫・ごろうは、「酒・バクチ・オンナ」の遊び人で、これまでに何人か子供を引き受けたといい、引き取ってもいいという。子供は、大勢の子供たちの間に溶け込んで、楽しそうに遊んでいる。

 

楽しそうな子供を遠くから眺めながら、小夜子と晋作はあとを去る。「きょうで、九州、失礼しま~す!何か忘れ物をしてきたようだな」と晋作。

小夜子は「もしかしたら私たちの考えていることって同じじゃないかしら」とまた元の道を戻る。

主題歌の「もしかしたら」(高橋真梨子)が流れる。

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何度見ても、胸が締め付けられる感動を覚えるのは、小夜子が、昔のシーン(モノクロ)を思いだしながら、いまも昔も変わらない赤い郵便ポストや、その右側を曲がると「たばこ屋」があるはず、といってカメラがたばこ屋を映し出すシーン。亡くなった母親に対して、「森崎小夜子24歳。お母さん、頑張っているからね」と(世界の中心ではないが)叫ぶシーンがいい。

 

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