「リバーズ・エッジ」(2018)を見る。原作は、1993年から1994年にかけて雑誌「CUTiE」で岡崎京子が連載したコミック。監督は「世界の中心で、愛をさけぶ」「クローズド・ノート」「今度は愛妻家」などの行定勲。原作を気に入った二階堂ふみが監督に映画化を進言したという。過激な描写も多い。
1990年代の漫画を2010年代に映画化したが、オリジナルの空気感を換えないために映画の設定は1990年代のままとしている。電話は公衆電話、家庭用は黒電話で、スマートホンもインターネットもない世界。
暴走した青春時代を過ごす登場人物たちを、現代に焼き付けるために映画ならではの、メイン登場人物6人のインタビュー・シーンを挿入する手法を見せる。
画面は4:3のスタンダードサイズ。
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舞台は工業港が近い川べり(=リバーズエッジ)の住宅街。主人公・若草ハルナ(二階堂ふみ)は母(西田尚美)と二人暮しの女子高生。同級生の山田一郎(吉沢亮)は容姿の美しさとオシャレであることから一部の女子からは高い人気を得ているが、華奢でゲイであるということが男子たちの攻撃誘発剤となり、ハルナの彼氏・観音崎(上杉柊平)に必要以上に執着していじめられている。
そんなある日、いつものようにいじめられ、廃墟と化した旧校舎で裸にされ、手を縛られている山田を見かねたハルナは彼を助ける。それから山田はハルナにある秘密を共有しだす。
一郎は学生モデルをしている吉川こずえ(SUMIRE)と河原で白骨化した死体を見つけ、その死体を宝物にし、毎日その死体が腐敗していく様子を眺めることを日々の楽しみとしていた。
そんな危険な秘密を知らされたハルナと発見者の山田とこずえの3人はこの危険な秘密の共有者となり、不思議な仲間意識が生まれる。
しかし、観音崎はハルナと山田の距離が近くなっていくのを許せない。そのため、観音崎の山田へのいじめはエスカレートし、ハルナへも暴力的になっていく。
そんなハルナにレズビアンのこずえは好意を持ち出し、また、山田へ好意を持つ田島カンナ(森川葵)は山田とハルナの距離が近いことに嫉妬し、ある事件を起こす…。
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映画の冒頭、すすけたクマのぬいぐるみ、建物の前のゴミ置き場の火災、校舎の廃墟のようなところでの暴力、魚釣りの2人、町の煙突、川、川べりの草むら、猫の死体、などが脈絡なく登場し、タイトルがでる。点がやがて映像で線としてつながっていく。
散歩の犬が加えてきたのが人間の手の指(白骨の一部)だったり、女子高生で登場するシーンでほとんどプカプカとタバコをふかしていたり、LGBT(ゲイ、レズなど)や女子高生が、数人以上の男とほぼ同時に日替わりに性的関係を結び、日記につけているのをデブでコンプレックスの妹がその日記を覗いてみたりと、破天荒で、ハチャメチャな高校生のもがきや行動が描かれている。男から見たらうざい女子高生が付きまとうが、ゲイを隠すために利用されているとも知らない能天気でおバカな女も描かれている。
現代の映画では、タバコを吸うシーンは映画でほとんど登場しないが、時代設定が1990年代はじめということで、主人公のヒロイン・若草ハルナ(二階堂ふみ)は、各シーンが変わるたびにいつもタバコを吸っている。超ヘビースモーカーという設定だが、嫌煙家などは演じられない役かも知れない。
主な登場人物:
■若草ハルナ(二階堂ふみ)
物語のヒロイン。母子家庭で暮らす。観音崎と交際中。いつも煙草を吹かす程の愛煙家である裏の顔を持つ。
学校の不良である観音崎達にいじめられている。女子に人気があり一緒に遊ぶこともあるが本人はゲイ。
ハルナの元彼氏。容姿はいいがドラッグの売買をしたり、ハルナに近づく山田に嫉妬していじめたりなど素行の悪さが目立つ。
■吉川こずえ(SUMIRE)
ハルナの一年後輩。現役のモデル。
■ルミ(土居志央梨)
ハルナの友人。観音崎を含めて多くの男性と交友している。
■田島カンナ(森川葵)
山田の女友達。彼女の方は山田のことが好きなのだが、山田のほうは内心鬱陶しく思っており、ある時彼に拒絶されてしまう。山田にとっては自分の指向をカモフラージュする存在。
■よっちゃん(安藤輪子)
ハルナの友達。噂好きのタカハシ君と付き合っている。
■ルミの姉 (富山えり子)
■タカハシくん(松永拓野)
■ハルナの母親(西田尚美)