fpdの映画スクラップ貼

「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「さよなら、僕のマンハッタン」(原題:The Only Living Boy in New York、2017)。

 

        f:id:fpd:20190916145402j:plain

さよなら、僕のマンハッタン」(原題:The Only Living Boy in New York、2017)を見た。「(500)日のサマー」や「gifted/ギフテッド」などの作品で知られるマーク・ウェブ監督が、脚本に惚れ込んで10年越しに映画化を実現させた作品。

原題の「ニューヨークの少年」はこの映画の中で出版される本のタイトル。少年とは言っても、主人公のトーマス・ウェブは、大学卒業を機にニューヨークのアッパー・ウエストサイドにある親元を離れ、ロウワー・イーストサイドで一人暮らしを始める20代前半の青年。その青年の隣人となる初老の作家によるナレーション(後から作家であると分かる)と出版までの話が綴られるが、その青年の恋と、やがて知る両親の知られざる秘密などが明らかになる。伏線がたくさんあって、結末は…。

・・・

邦題が「さよなら、僕のマンハッタン」とされているのは、冒頭のナレーションの最後の言葉から取られているようだ。「(ニューヨークの)住民たちは平気なフリをしながらも喪失感を抱えている。(この映画の主人公の)トーマス・ウェブもそうだ。彼が見出した”答え”はミミ(ガールフレンド)だった」。

 

f:id:fpd:20190916145532j:plain

                ミミとトーマス

ナレーションが終わると、トーマス(カラム・ターナー)とミミ(カーシー・クレモンズ)の会話から物語が始まる。

トーマス:「1976年のNYは、汚くて犯罪の巣窟だった」

ミミ:「創造の中心だったわ」

トーマス:街は魂(ソウル)を失った。今はフィラデルフィアのほうが熱い」

ミミ:「それウケる.誰が言ったの?」

トーマス:「僕の言葉だ」

そんなたわいない会話から始まる。ナレーションの最初には老境に差し掛かった作家のニューヨーク(以下、NY)に対する思いの変化が語られていた。「20世紀、隣人づきあいは郊外が最高だった。NYの街に集まるのはヤバイ奴ばかり。今は逆だ。郊外はジャンキー(薬物依存症)だけ。隣はいまいましいスポーツ施設だ。NYのアートは商業主義に敗れた。若者はギャラリーで作品を眺め、愛は映画のように雨の中の告白で始まると信じてる。だが現実は違う。愛はいたって野蛮だ。(以下、一部省略)”最良の者が信念を失い、最悪の者が活気づく”イエーツ(注:ウィリアム・バトラー・イェイツアイルランドの詩人で劇作家)の言葉だが、ルー・リード(=ブルックリン出身のミュージシャン)もボトルライン(NYのキャバレー)で引用。ルー・リードボトムラインも亡き今、取り残された魂は高級ジム”ソウル・サイクル”だけだ」(魂=ソウル、とソウル・サイクルを掛けている。

・・・

就職はせず、個人教師のアルバイトをしながら暮らしているトーマスは虚無感を感じる毎日。一方、ミミにはミュージシャンの恋人がいるが、恋人がツアーに出ている間、二人は何かと行動を共にしていた。8月8日、夢のような夜を過ごすことが出来たが、ミミには「あれは一夜限りのこと」と釘をさされてしまう。

 

トーマスがアパートに帰ると階段にひとりの中年男が座っていた。男はW.F.ジェラルド(ジェフ・ブリッジス)と名乗り、引っ越してきたばかりだという。

     f:id:fpd:20190916151313j:plain

      トーマスの隣人ジェラルド(ジェフ・ブリッジス、右)

彼はトーマスの顔を見て「悩んでいるな」と言うといろんな質問を浴びせてきた。そして「せっかくだ。新しい隣人に頼れよ」と言うのだ。

あるとき、トーマスはミミとバーにいたところ、片隅に父イーサンが、女性と親密そうに会話をしていた。

 

f:id:fpd:20190916151500j:plain

      イーサン(ピアース・ブロスナン)とジョアンナ

トーマスは、後日、父と親しそうにしていた女性のあとをつける。父との関係を探るためだった。トーマスがその女性ジョアンナ(ケイト・べッキンセール)に話しかけると、ジョアンナは「あなたはトーマスでしょう。よく知って知っている」という。イーサンの机の上の写真に写っていたのを見たという。ジョアンナは、フリーの編集者で、出版社の社長であるイーサンとは1年半前から関係を持っていると告白。

 

f:id:fpd:20190916151618j:plain

f:id:fpd:20190916152947j:plain

そんな折、知人の結婚式にミミと一緒に出席したトーマスは会場にジョアンナが来ていることに気づき、ジョアンナのことが気になって仕方がない。トイレに行くと言ってミミから離れたトーマスはジョアンナに近づき、言葉を交わしているうちに思わず彼女にキスをするとジョアンナは激しいキスを返してきた。二人は会場を抜け出し、ジョアンナの家で関係を持ってしまう。

そんな中、トーマスは隣人のジェラルドとジョアンナの一件を話すと「彼女のことで頭がいっぱいだな」と言われたトーマスは「愛かな?」と自問し、ジェラルドに「愛の経験は?」と尋ねた。「ある。友だちだった女性だ。親友に奪われた」と彼は答えた。

・・・

”友達だった女性”とは、トーマスの母ジュディス(シンシア・ニクソン)であり、親友というのはトーマスの父イーサン(ピアース・ブロスナン)だった!さらに驚くべき事実が・・・。

 

(以下、反転)(ネタバレあり)

イーサン、ジェラルド、ジュディスは、かつて若い時期に仲の良い仲間だった。イーサンとジュディスが結婚するが、イーサンは不妊症で、イーサン、ジュディス納得のもとで、ジュディスとジェラルドの間に生まれたのがトーマスだった。イーサンとジョアンナは結婚(再婚)。「ニューヨークの少年」の発刊記念イベントで著者のジェラルドが話をしていたが、出席者の中に、ジュディスの顔もあった。トーマスは、ミミに告白するも、ミミは故郷のクロアチアに戻ると言って二人は別れることになる。

 

主な出演:

カラム・ターナー:トーマス・ウェブ

ケイト・ベッキンセイルジョアンナ

ピアース・ブロスナン:イーサン・ウェブ

シンシア・ニクソン:ジュディス・ウェブ

ジェフ・ブリッジス:W・F・ジェラルド

キアシー・クレモンズ:ミミ・パストーリ

映画は「卒業」へのオマージュという見方もあるようで、物語の節々にそれは感じられる。

 

☆☆☆