fpdの映画スクラップ貼

「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「妻よ薔薇のように  家族はつらいよIII」(2018)

f:id:fpd:20190903100532p:plain

f:id:fpd:20190903100559j:plain

妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII」(2018)を見た。

巨匠・山田洋次監督によるホームコメディの第3弾。主婦の史枝(ふみえ)の家出により、三世代が暮らす平田家の面々が新たな騒動に巻き込まれていくドタバタを描く。一家の主である周造(橋爪功)、その妻・富子(吉行和子)など個性派キャスト8人が再集結した。

専業主婦の家事全般の仕事は大変であるのに、夫からは「気楽でいい」と軽んじられ正当に評価されないという「あるある」などが多く描かれ、主婦や女性から共感を呼ぶ作品になっている。”奮闘する主婦”の家事は収入に換算すると、約720万円相当の労働という試算もあるようだ。

山田洋次監督の86作目。このタイトルは日本映画史上の名匠中の名匠、成瀬巳喜男(みきお)監督の「妻よ薔薇のやうに」(1935)から採ったもの。 

・・・

ある日の昼下がり、史枝(ふみえ)(夏川結衣)が家事の合間に居眠りをしている間に泥棒(笹野高史)が入り、史枝が冷蔵庫内に隠していたへそくりが盗まれてしまう。

夫・幸之助(西村まさ彦)からは「俺が苦労して稼いだ金でへそくりをしていたのか!」と心ない言葉に史枝は溜まっていた不満を爆発させ、家を飛び出し、今は空家となっている郷里の実家に戻ったのだ。

f:id:fpd:20190902222647j:plain

  f:id:fpd:20190902224951j:plain

主婦がいなくなった平田家は大混乱に陥り、体調の優れない富子(吉行和子)に代わって周造(橋爪功)が不慣れな家事に挑戦するものの、長続きしない。一同は史枝の存在のありがたみを実感するが、史枝が帰ってくる兆しは一向になく、平田家崩壊の危機に家族会議を緊急召集するのだが・・・。

・・・

この映画に登場する男たち(とくに父・周造=橋爪功、長男・幸之助=西村まさ彦)は、家事全般を当たり前のように妻任せにして、その労働の大変さを理解しないばかりか、財布の紐をがっちり握っていて、毎月一定額を妻に渡すというスタイル。これは一般的には少数派で、だいたいは妻ががっちり財布を握っていて、夫は、小遣いの増額を訴えるが、なかなか認められず却下されるのが関の山か。

f:id:fpd:20190902223431j:plain

f:id:fpd:20190902223556j:plain

そんな理解なしの夫への主婦の反乱といった面でも捉えられる。高校時代にダンス部で踊りを習っていた史枝がたまたまフラメンコのダンス教室を覗いた時に、そのビシバシと決まった掛け声と踊りに、目を輝かせるのだ。そして、家でウトウトしている時に自身がフラメンコを踊る夢を見る。風に揺れる赤いカーテンを見ていると、それが、次の瞬間には、カーテンのひらひらがフラメンコを踊る史枝のスカートの赤に変わる。

頑固な男どもの中で、唯一まともなのは、次男・庄太(妻夫木聡)で、兄嫁・史枝(夏川結衣)の理解者で、兄・幸之助(西村まさ彦)に、史枝を迎えに行くよう説得する。

f:id:fpd:20190902223351j:plain

幸之助は雨が降る中、史枝のいる実家まで車を走らせ、心を改め史枝に対して理解を示すのだった。

一方、家で幸之助を待つ家族たちは「幸之助は、史枝を連れ戻すのに失敗したに違いない。帰ってきたら、史枝はどうだったか、などと聞いてはいけない」と周造が皆に徹底する。果たして、やきもきして待つ家族のもとへ、幸之助はひとり落ち込んで戻ってくるのか、それとも…。

結論から言えば、すったもんだがあったが、周造が最後に呟く。「雨降って地固まるか。」

そんな中、庄太は妻・憲子(蒼井優)から「明日、病院に行く」といわれ「(看護婦であり)毎日、病院に行っているではないか。どこか具合でも」というと、「別の病院だ」という憲子。庄太は、ハタと気づき「もしかして・・・」と笑顔になるところで、終わる。第4弾がありそうな予感。

この映画の英語のタイトルは「What a Wonderful Family! III  My Wife, My Life」。なんと素晴らしい家族!の「!」の中には、家族とは厄介で、世話が焼けるものだという皮肉も込められているのではないか。

 

☆☆☆