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<span itemprop="headline">ドラマ:山田太一脚本「時は立ちどまらない」。</span>



 
山田太一脚本ドラマ「時は立ちどまらない」が、テレビ朝日開局55周年記念ドラマとして放送されたので見た。東日本大震災から3年を背景に二つの家族の再生を描いた物語。
 
東日本大震災がなければ結婚を機に結びつくはずだった2つの家族の、崩壊と再生を描いた作品。山田太一は「報道やドキュメンタリー番組に描かれなかった被災者の葛藤や、言えなかった気持ちを書きたかった」と話している。

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東北の海沿いの街で生活していた浜口家西郷家
震災により、漁業を営む浜口家は新郎を含む3人が亡くなり、家も漁船も失った。
一方、高台に住んでいた西郷家は被害を受けなかった。
ドラマでは、両家がすれ違いや対立を経て、再生する姿を丁寧に描いている。

かねて震災をテーマにしたドラマを作りたいと考えていた山田氏は、「事実」と報道・ドキュメンタリー番組との間のずれを感じていたという。

「自分が悪いわけではないのに、他の人に助けてもらうことへの無念さや屈辱。報道やドキュメンタリー番組だとそういうことは言えないが、人間だからそうした感情はあるはずです」

浜口家の祖父、吉也(橋爪功)は、西郷家にこう語って援助を拒絶する。

「こっちはなんにもない。ありがとうというしかない。網もロープも船も(中略)、女房に嫁に孫までいない。それ、俺のせいか、息子のせいか」

西郷家の家主、良介(中井貴一)は、「助けたい」という気持ちと、自分たちは被害を受けなかった後ろめたさとの間で揺れ動く。追い詰められた良介は、「津波に遭ったと聞けば、誰にでも優しぐしなぎゃなんないのか」と漏らしてしまう。

山田氏は「ドラマはフィクション。だからこそ口には出しにくい本音や、心の葛藤も描くことができた」と語る。

題名の「時は立ちどまらない」の意味について山田氏は、報道などで「私の時間は震災が起きたときのまま止まっています」と答える被災者が多いことを指摘した上で、「それは真実だと思う。ただその一方で、時間はそのままでいることはない。それは残酷かもしれないし、幸福なことなのかもしれない。とにかく、時は立ち止まらないということを言いたかった」と説明する。
 
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津波にあわんもんにはわからんよ」と妻、母親、長男を亡くした浜口吉也(橋爪功
は語り、流されてしまった家を再び見るのを拒んできた吉也だったが、良助の車に乗せられて3年後に元の家の場所を訪れる。「意気地がなくて来られなかった。じき
3年たつのに、まだこんなんなんだな(=まったく変わっていない)」とつぶやく吉也。
 


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ドラマは二つの家族だけが描かれる。
●西郷家
西郷良介…中井貴一
西郷麻子(良助の妻)…樋口可南子
西郷千晶(娘)…黒木メイサ
西郷奈美(良助の母)…吉行和子

●浜口家
浜口克己…柳葉敏郎
浜口吉也(克己の父)…橋爪功
浜口正代(克己の妻)…岸本加世子
浜口いく(克己の母)…倍賞美津子
浜口修一(克己の長男)…渡辺大
浜口光彦(同・次男)…神木隆之介
 
2011年3月6日、西郷家、浜口家の全員が、浜口家に集まり、千晶と修一の結婚について食事をしながら話し合っていた。浜口いく(倍賞美津子)は、漁師の家に嫁ぐものは、家で夫が漁から戻るのを出迎えて、夫を支えるものという考えをもっていて、千晶が、役所勤務を続け将来は政治の分野で仕事をしたいということに反対だった。
 
しかし、修一の母・正代(岸本加世子)は、「今は時代が変わった。面白いのではないか。」と千晶を皆で応援しようという立場をとり、いくを納得させ、これから二人の将来を見守ろうとした矢先だった。その5日後、すべてを一変させる地震津波が起こったのである。
 

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浜口家の正代、いく、修一の3人が津波で流されて亡くなってしまうのだった。
一方の西郷家は高台に家があり全員無事だった。吉也(橋爪功)は、「結婚の相手である修一がいなくなったのだから、両家は、一度会っただけだし、今後は縁を切ろう」と言い出す。西郷良介(中井貴一)は、「待ってください。われわれは、できることをしたいんです」と縁切りには反対と西郷家全員で訴えるのだが・・・。
 
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仮設住宅住まいとなった浜口家。
西郷家に招待されて、二階に上がり、家族3人で大声で泣き、叫び、モノを投げ窓も壊してしまう。「何をするんですか」と驚く良助に「津波にあったことを思えば、こんなことは大したことではない」と言って、3人で西郷家を飛び出す。
 
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橋爪功吉行和子は、映画「東京家族」で老夫婦を演じていたが、今回のドラマでは、別家族の祖父と祖母の役。奈美(吉行和子)が、しばらくぶりに相談のため仮設住宅の吉也(橋爪功)の元を訪ね、話が終わった後、家に帰ろうと近くのバス停(2時間に1本運行)までくると、見送りについてきた吉也が、「ハグしたい」という。
 
しかし、遅れていたバスが現れ、ハグすることはなく、バスから手を振る奈美。
 
西郷良介(中井貴一)と浜口克己(柳葉敏郎)が中学校の同級生であり、過去の因縁などもあって、それらのエピソードも語られる。両家の全員の集合写真も発見される。千晶が、婚約者で亡くなった修一の弟・光彦(神木隆之介)と交際が始まりかけたが、光彦が若い(18歳)ということもあって、いったん時間を置くことになった。克己が漁師の吉也の後を継がずに建築関係の仕事を始めることになり、孫の光彦が漁が好きだったこともあり後を継ぐことになった。
 
3年ぶりに元の家のあった場所に二組の家族の姿があった。
泣き崩れる吉也(橋爪功)に、後ろから寄り添う奈美(吉行和子)と、「ハグ」する時がやってきた。その場から離れる良助(中井貴一)を追ってきた麻子(樋口可南子)が、「お母さんが、ハグしているのが気に入らないの」という麻子に、「違う」という良助。涙ぐむ良助を遠くから心配そうに見ている浜口家の人たちに、麻子は、両手で
大きく「O」の字を書いて、OK(問題なし)のサインを送る。克己(柳葉敏郎)は、了解という意味で「O」の字を作る。
 
良助は、静かな海を見つめるが、一瞬、津波の光景が目に映るが、再び平穏な海となり、いつまでも海を見つめるのだった。
 
「3.11」は終わっていない、というメッセージでもあるようだ。
 
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このところコメデイタッチのドラマの多かった中井貴一だが、今回は銀行マンでシリアスな役だった。妻役の樋口可南子とのコンビもよかった。東北弁(福島弁)をみな話すが、柳葉敏郎秋田県出身で、東北弁はお手のもので、役柄もあっていた。黒木メイサは、久しぶりのドラマ出演か。
 
東日本大震災を風化させないというドラマでもあるが、報道、新聞などで書ききれない知られざる真実の一端を、架空の物語として描こうという意図だったようだ。
 
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山田太一のドラマと聞いては見ないわけにはいかない。
山田太一のドラマがあると知ったのは、放送が始まる5分前だった!(笑)。
これを野球では、”滑り込みセーフ”という。
 
 
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