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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「愛を乞うひと」(1998):日本アカデミー賞最優秀賞(「作品賞」ほか)を独占。

 
愛を乞うひと」(1998)を見た。重いテーマだが、ずしりときた。
やや誇張して言えば、10年に1本のすごい映画、かもしれない。
 
1999年の第22回日本アカデミー賞で、最優秀賞作品賞/監督賞/脚本賞/主演女優賞(原田美枝子)/美術賞/撮影賞/編集賞/照明賞を受賞。このほか、優秀賞(ノミネート)として助演女優賞/音楽賞/音響賞を受賞するなど、その年の賞を総ナメにしたのも納得。
 
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山岡照恵(原田美枝子)は幼い頃に死んだ台湾人の父・陳文雄(中井貴一の遺骨を探していく。そんな照恵の脳裏に浮かぶのは、実母の豊子(原田美枝子・2役)に虐待されつづけた記憶。照恵は娘の深草(野波麻帆)と共に遺骨探しを続け、台湾にまで出かけるのだが、とうとう見つけることができなかった。そして、娘・深草の勧めもあって実母に会うことにするのだが・・・。
 
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戦後の昭和20年代から30年代の時代が、現代と交互に描かれていくが、当時の時代背景がよく再現され描かれている。昭和33年当時では、「となりの○○ちゃんちは、テレビを買ったんだって」というと「うちは○○ちゃんちと違うんだよ。」「月光仮面みたいよね。」といった会話が、テレビの黎明期を物語っている。

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土砂降りの雨の中、女の子を手を引いて歩く男。後ろから女が追いかけてきて
「行っちまえ、バカヤロー。台湾でもどこでも行っちまえ。くたばっちまえ。バカヤロー。死んじまえ」と絶叫しながら、手当たり次第に石を投げつけている。ただ、その女は、しゃがみこみ、どうやって生きて言ったらいいのかと、未練もあるようだ。

妻の豊子(原田美枝子)が娘の照恵を虐待するのにたまりかねた父の陳文雄(中井貴一)は、娘の手を引いて家を出たのだが、後で繰り返し同じシーンがあり、手を引かれる娘は、最後まで、振り返って母を見ていた。

 
家を出たものの、陳文雄は、結核で倒れ、友人の王(小日向文世)に後を託して死んでしまう。生きていくだけで精一杯という時代だった。王は照恵を孤児院に入れたのだった。後から分かるが、王と妻の間には子供が2人いて、お腹にも赤ん坊がいたので、面倒を見ることはできなかったのだ。


そしてある日、孤児院に母の豊子が訪ねてきて、照恵を引き取るのだが、新しい父と新しい弟・武則がいた。平和な生活が始まるかに見えたが、2番目の夫とも別れた豊子は、3番目の夫、和知(國村隼)のところに照恵と武則を連れて転がり込むことになる。そして、そこから地獄が始まった・・・。

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幼い頃母から虐待され、額に生涯消えない傷を残し、顔がアザだらけになり、子供たちからは、「お岩」「お化け」「バイキン」などとあだ名され、いじめも受けるっさマジさ。
 
幼児虐待という凄惨な記憶から逃げていた娘が50年の時を経て再び過去に対峙する、母と娘の愛憎を描いた人間ドラマ。
 
母親から受けた凄まじい虐待という幼児体験から、母を捨て、過去を心の奥に封印してきた照恵だったが、自らも母親になり、一人娘も成長した今、照恵は幼い頃死に別れた父親の遺骨を探す旅に出る。
 
その過程で蘇る壮絶な過去の記憶。やがて、照恵はいまも生きている母・豊子に会うことを決意する・・・。母は年をとっていたが、一人でヘアサロンを営んでいた。豊子は、照恵の髪を切るため、前髪を上げて、額の傷に気づくのだが・・・。
 
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主演の原田美枝子(2役)の母・豊子の鬼のような、というより鬼そのものの娘・照代を殴る蹴るの暴力のすさまじさに圧倒される。虐待され大人になり母となった照代は、生きていた母・豊子に再会。ひとこと「元気で」と言い残し、会話を交わすことなく立ち去ったが、照代の娘・深草野波麻帆)に「母さん、泣いてもいいかな」「いいよ」と号泣するシーンでは、見ている側ももらい泣きしそうになるほどである。
 
 
娘役の野波麻帆が、現代っ子らしく、「チョームカつく」(1998年の時点で、いまの
”チョー~”という言葉を使っている)や「(ハイ、ハイという母親に対して)ハイは一回だけに」と意見するなどサバサバした性格で、しっかりしている。
 
演:
山岡照恵/陳豊子:原田美枝子小井沼愛(5歳時)、牛島ゆうき(10歳時)、浅川ちひろ(15歳時)
陳文雄:中井貴一
和知三郎:國村隼
和知武則:うじきつよし前田弘(4歳時)、塚田光(7歳時)、五十畑迅人(11歳時)
王東谷:小日向文世
王はつ:熊谷真実
竹内俊男:マギー司郎
片倉修司:中村有志
高田イネ:新村礼子
村田幸子:今吉諒子
酒井千鶴:西田尚美
照恵の子供時代の友達:大沢あかね
 
スタッフ:
監督:平山秀幸
製作:藤峰貞利、高井英幸、阿部忠道
脚本:鄭義信
撮影:柴崎幸三
美術:中澤克己
音楽:千住明、高桑忠男
編集:川島章生
 
 
 
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