京マチ子は映画出演時は31歳。10代の娘から老けメイクで60歳前後までを演じる。上演時間が90分と短く、コンパクトにまとめて一生を描いているが、あまりにも時代の変化が激しく、連続ドラマの総集編といった印象だった。
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■明治38年。旅順開城の祝勝気分に酔う提灯行列が東京の町を埋めていた。
そして、女主人しず(東山千栄子)に懇々と諭されたが、けいには帰る家がなかった。そんなけいを救ってくれたのは次男栄二(田宮二郎)だった。しずはこの薄幸な少女を引き取ることにした。けいは日増しに美しく成長していった。
ある日、しずはけいを一室に呼んで、もし堤家に恩を感じてるなら、長男伸太郎(高橋昌也)の妻になってくれるよう命令的口調で言った。その夜、けいは栄二への愛のかたみである櫛を泣きながら折った。
明治は大正になり、しずは死んだ。伸太郎とけいの間には知栄(叶順子)という女の子が生まれた。栄二は大陸へ出奔していた。
間もなく伸太郎は別居し、知栄もけいにかくれて父母の家を往復するようになった。
そんな堤家にひょっこり栄二が帰ってきた。
そして、左翼運動を煽動した罪で栄二が逮補された時、けいは冷然と見送った。知栄は母の冷たさを非難し父の許に去った。それから数年後、けいは知栄が松永(杉田康)という音楽家と結婚したことを聞いた。太平洋戦争が激しくなった。
その頃、老けこんだ伸太郎が訪ねてきた。
松永が出征した後に残された知栄とその子供の世話を頼みにきたのだ。
けいは喜んで承諾した。が、その瞬間こそ夫婦としての最後だった。
伸太郎は突然の発作で死んでいった。
■昭和20年。東京は焼野原と化し、営々と築き上げた堤家も灰燼と帰した。
その焼跡の壕舎の中でけいは終戦を迎えた。その時、栄二が牢獄から帰ってきた。暮れゆく堤家の焼跡に立つけいと栄二の胸中にはさまざまな想いが去来し、二人はいつまでも立ちつくすのだった(MovieWalker)。
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京マチ子演じるけいは、養子で家に入り中国貿易で隆盛を誇る大手商事・堤洋行の経営者として経営に辣腕を振るう女社長となる。先代の女社長・しず(東山千栄子)にどんどん似てきて、会社を取り仕切っていくところが凄い。
けいの娘を演じる叶順子が、母けいに負けず劣らずの性格でズバズバとモノをいう現代的な女性を演じている。
京マチ子が、10代では10代らしく若々しく見え、老けメイクをするとその年代に見える堂々とした演技ぶりに驚かされる。
田宮二郎は、当時26歳で大学生役と、40年後の老け役メイクで登場。
京マチ子は、舞台女優、松竹での映画出演の後、1949年(昭和24年)に大映にスカウトされ、大映で映画本格デビューする。時に26歳だった。「雨月物語」「羅生門」「地獄門」などで世界の映画賞を受賞し、”グランプリ女優”と呼ばれた。
京マチ子は、2000年の「キネマ旬報」による著名人の「20世紀の映画スター 女優編」の日本女優では3位(読者投票では7位)だった。ちなみに、1位原節子、2位吉永小百合、3位京マチ子、4位高峰秀子、5位田中絹代、6位山田五十鈴、7位夏目雅子、8位岸恵子、同8位若尾文子、10位岩下志麻、同10位藤純子(富司純子)だった。
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