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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

<span itemprop="headline">映画「春琴物語」(1954) 京マチ子主演。</span>



春琴物語」(1954)を、池袋・新文芸坐の「大映女優祭」(京マチ子特集)でみた。
16ミリフイルム上映。

原作は谷崎潤一郎による中編小説春琴抄
盲目三味線奏者・春琴に丁稚の佐助が献身的に仕えていく物語
監督は「番町皿屋敷 お菊と播磨」の伊藤大輔。音楽は「足摺岬」の伊福部昭
 
出演は「或る女」の京マチ子、「山椒大夫」の花柳喜章、「こんな美男子見たことない」の船越英二、「晩菊」の杉村春子青山杉作進藤英太郎などで、語り手の老女の声は東山千栄子
 
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大阪の道修町にある鵙屋は、数ある薬問屋の中でも、名の聞えた老舗だった。
そこの二女お琴は、幼い時に失明し、春松検校青山杉作を師匠として琴や三味線の稽古に通っていたが、その美しさは世間の評判となっていた。


 
少年時代から仕えてきた佐助(花柳喜章)はお琴京マチ子の唯一人のお気に入りであり、彼女は佐助以外の誰もが身の廻りの世話をすることを喜ばなかった。佐助も真心こめてお琴に仕えたが、何時も彼女が音曲の稽古をするのに耳を傾け、自己の給金を貯めて三味線を買い、音を立てずに手つきだけで秘かに練習するようになっていた。
 
それに感ずいてお琴は佐助に弾かせてみるが、その才能を認めて二人は師弟の間柄になった。お琴は常に佐助を召使いとして扱っていたが、心の中では彼に愛情を抱いてり、遂に佐助の子をはらむようになった。
 
生れた子は間もなく死んだが、依然として主従の間柄だった二人の愛はゆるがぬものとなっていた。お琴は師匠春松の名をもらって春琴と名乗ったが、一方鵙屋の店では商いも不振に陥り、つ主人も亡くなったので、春琴は佐助と二人で淀屋橋に住まい、生活を立てるために琴の教授をすることになった。
 
この頃春琴を見染めたのは金持の若旦那利太郎船越英二であったが、彼は春琴に対する野心から弟子入りをすることになった。だが彼に対する春琴は冷かった。
 
ある夜、彼の寝室に忍び入る一人の曲者があり、身を避ける拍子に鉄瓶の湯が彼女の顔にかかった。醜くなった顔を歎き悲しみ、決して自分の顔を見てくれるなと頼む春琴の言葉を守るために、佐助は自己の両眼に針をつきさして失明した。今や孤独の二人の心はこうして永久に結ばれることになったのだった
 
・・・
東山千栄子語り部として、映画の中では、後にお琴の弟子入りをする子供の役で、それまでのお琴京マチ子)と佐助(花柳喜章)のいきさつなどを回想する形で話が進んでいく。
 
鬼気迫るとは、このことか
お琴(京マチ子)が、醜くなった顔を佐助にだけは見せたくないと言うので、佐助が決意するシーンは、「やめてくれ」と叫びたくなり震えるほど鬼気迫るシーンだった。針山を前に座っている佐助が真横からカメラで捉えられ、その背景には、上方の小窓から洩れる光に照らし出された靄(もや)が立ち上っている。

ここでわずかな間、佐助は逡巡してしまうが、後ろ(もや)がしだいにわずかながらも強い調子に見えだしはじめて、画面に異様な雰囲気が漂ってくるそして鮮烈なカットバックが入り、針山、さらには針を手指でしっかり持つところ、と徐々にその決行へと近づいていく緊迫感がすさまじい。目を背けたくなるほどのシーンだった。

そして、お琴が、佐助の異変に気づいたときに「佐助、佐助どうした」と叫んで呼び寄せるが、佐助も盲目となっていて、二人の手がすれ違って、なかな手がつかめないところも胸に迫る。佐助が「もう私にも、お琴さまのお顔は見えません」というと「うれしい」とお琴は言うのだ。

盲目のお嬢という役京マチ子の美貌光るが、目は常に伏し目がちで閉ざされたままであるのにもかかわらず人形のように引き立っていた。
 
杉村春子は、琴のお師匠の弟子として7年間も習ってきて、師匠がお琴を後継者に選んだことに対して激高するなど、不満を爆発させる、その俗物ぶりもすごかった。「どうせ、私は器量なしですよ」と自嘲気味に言うのだが・・・。
 
春琴抄」はこれまでに6度映画化されている。
1935年『春琴抄 お琴と佐助』(制作:松竹蒲田、監督:島津保次郎) 
春琴:田中絹代/佐助:高田浩吉
1954年『春琴物語』(制作:大映、監督:伊藤大輔) 
春琴:京マチ子/佐助:花柳喜章
1961年『お琴と佐助』(制作:大映、監督:衣笠貞之助) 
春琴:山本富士子/佐助:本郷功次郎
1972年『讃歌』(制作:近代映画協会日本アート・シアター・ギルド、監督:新藤兼人
春琴:渡辺督子/佐助:原崎次郎
1976年『春琴抄』(配給:東宝、監督:西河克己) 
春琴:山口百恵/佐助:三浦友和
2008年『春琴抄』(配給:ビデオプランニング 監督:金田敬) 
春琴:長澤奈央/佐助:斎藤工
 
田中絹代山本富士子版などは見てみたい気がする。
 
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