高倉健を一躍スターダムに押し上げたシリーズ第1作「網走番外地」(1965)を見た。「昭和残侠伝」シリーズは、2-3本見ているので、”任侠映画”2大シリーズを見ずには死ねない、という願望は果たした(笑)。
高倉健の映画は、東映専属時代(1956年~1975年)と独立後(1976年~2014年)とあり、ざっくり言えば、専属時代は任侠・ヤクザ路線でヤクザを演じ、独立後は、過去を持つ無骨だが芯の強い寡黙男を演じていた。私生活を表に出すことはほとんどなく、昭和の”最後の映画俳優”とも言われた。
「網走番外地」は、ヤクザの切った張ったというよりも、”脱獄”映画である。タイトルは網走刑務所を意味するが、映画はアメリカ映画「手錠のままの脱獄」(原題:The Defiant Ones、スタンリー・クレーマー監督、1958)を意識したと言われている。「手錠のままの~」は、白人と黒人が手錠に繋がれたまま脱獄する話だが、「網走番外地」は、全く反発しあう者同士が手 「手錠のままの脱獄」↑
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網走刑務所に二人一組の手錠につながれた新入りの囚人たちがやってきた。そのなかの一組に橘真一(高倉健)と権田権三(南原宏治)の二人がいた。貧農の生れの橘は、義父・国造(沢彰謙)との仲がうまくいかず家をとびだし、やくざの世界に足を踏みいれ、親分のための傷害事件で懲役3年を言い渡されたのだった。
こんな依田に権田は共鳴し、橘はことごとく反抗した。
そんなある夜、依田と権田がしめしあわせて橘に襲いかかり、乱闘騒ぎが看守に発見されて三人はそれぞれ懲役房に入れられた。そんなとき、妹の手紙が舞いこみ、橘は母・秀子(風見章子)が義父・国造の虐待で病床に倒れたことを知った。
橘の家族の様子などを伝え、橘の仮釈放に尽力する妻木(丹波哲郎)
が、そのころ雑居房では依田、桑原、権田の三人を中心に脱獄計画が進められていた。だが決行寸前、阿久田の裏切りで脱獄計画は崩れ去った。
殺気だつ房内で阿久田は自分の正体をあかした。意外にも阿久田こそ、殺人鬼として恐れられた鬼寅だったのだ。数日後、山奥に作業に出た囚人たちは、護送トラックから飛び降り脱走を計った。
橘も権田に引きずられて路上に叩きつけられた。二人は手錠でつながれたまま雷の中をひた走った。一方、妻木は橘に裏切られた怒りを胸に二人を追った。
汽笛を聞いた二人は線路に手錠の鎖をのせ汽車に鎖を切らせた。
しかし権田は反動で谷間に落ちた。橘はそんな権田を捨てきれず、追ってきた妻木と共に重傷の権田を助けて病院に犬橇(いぬそり)を走らせた(MovieWalker)。
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マイナス20度という極寒の地、網走刑務所にトラックが到着し、次々に手を繋がれた犯罪者が収監される。「冬が越せるかな」という年寄りの受刑者がいたり、監獄の中では、新米の自己紹介が行われ、刑務所の主のような立場の依田(安部徹)が、橘真一(高倉健)に向かって「どこかの一家のものか」と聞いた。橘は「そんなようなもんですが、筋が通らないことだけは大嫌い」と応えた。
依田は、8人殺しの”鬼寅”の子分だと吹聴し、放火などで15年の刑だと自慢。
その中に、ひとり「42番」という老人がいた。老人が「(刑期は)あと21年残っている」というと、まわりからざわめきが起こる。よほどの極悪の罪を背負っているらしい。
そして、自分の名を名乗った。
「ワシが”鬼寅”だ。こんな年寄りにも、一人くらい冥土に付き合ってもらいましょうか」 嵐寛寿郎の貫禄と迫力!
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高倉健がこの映画では、ひょうきんなところも見せている。
おどけてみせる橘(高倉健)
あと半年で仮釈放の身であった橘は、手錠を繋がれた権田(南原宏治)が、輸送トラックから脱走を図ったため、巻き添えを食った形で逃亡することになった。仮釈放のために尽力していた保護司・妻木(丹波哲郎)の善意にも背くことになり、妻木から「大馬鹿者だ」と追われることになった。
手錠をいかに切断するか。
なんと、鉄道レールをまたいで、鉄道車両で切断しようとするのだ。
列車を待つ、うつ伏せの囚人二人の緊張感や、トロッコの追撃戦は見ごたえがった。
出演:
橘真一 - 高倉健 (トップクレジット)
保護司・妻木 - 丹波哲郎 (エンドクレジット)
権田権三 - 南原宏治
依田 - 安部徹
阿久田(鬼寅) - 嵐寛寿郎
大槻 - 田中邦衛
橘国造 - 沢彰謙
橘秀子 - 風見章子
パチクリ - 杉義一
囚人 - 潮健児、滝島孝二、 三重街恒二、ジョージ吉村
沢本:佐藤晟也
教育課長:関山耕司
冬木部長:菅沼正
担当看守:北山達也
秩父一家の親分:志摩栄
橘道子:宗方奈美
劇場公開:1965年4月18日
製作・配給: 東映
公開時の併映:鶴田浩二主演「関東流れ者」。
シネマスコープ、モノクロ92分。
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