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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「追想」(1975)フィリップ・ノワレ、ロミー・シュナイダー主演。

 
第二次世界大戦末期、ナチ親衛隊に最愛の妻と妹を虐殺された医師の凄まじい復讐を描く。監督は「ラムの大通り」のロベール・アンリコ
 
音楽は「冒険者たち」「サムライ」「さらば友よ」などドロン作品でお馴染みのフランソワ・ド・ルーベ。出演はロミー・シュナイダーフィリップ・ノワレ、ジャン・ブイーズ、マドレーヌ・オーズレー、ヨアヒム・ハンセン、ロバート・ホフマン、カトリーヌ・デラポルテなど。
 
追想」という同名タイトルでは、イングリッド・バーグマンが二度目のオスカーを受賞した「追想」(原題:Anastasia、1956)が有名で、あちらはロシア帝国アナスタシア皇女が存命するという巷間の伝説を元にした映画。 紛らわしいので、同じタイトルは付けるな、と言いたい(笑)。
 
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 ロミー・シュナイダーの美しさが際立つ「追想」だが、映画のオープニングで親子三人が緑の多い山間部を自転車で楽しそうに走るシーンが印象的で、映画は同じシーンで終わる。
 
 
 
1944年。ドイツ占領下フランスの小都市モントバン。
町の病院に勤務する外科医ジュリアン・ダンデュ(フィリップ・ノワレ)は、美しい妻クララ(ロミー・シュナイダー)、娘フロランス(カトリーヌ・デラポルテ)、母(マドレーヌ・オーズレー)の四人でつつましくも平和な家庭を築いていた。
 
しかし戦争の暗雲は容赦なくこの静かな町にもたれ込み始め、連合軍の上陸に備えるべく、ドイツ軍は親衛隊を先頭に全市町村の掃討作戦を開始した。
 
ジュリアンの病院にも連日ドイツの傷痍兵やテロリストの重傷者が担ぎ込まれてきた。家族の身を案じたジュリアンは、同僚であり友人でもあるフランソワ(ジャン・ブイーズ)の勧めもあって、クララとフロランスを自分の城のあるバルベリー村へ疎開させることにした。それが悲劇の発端だった。
 
妻子と別れてから5日、彼は無性に2人に会いたくなった。戦時下とは思えない南フランスの緑豊かな風景を横に見ながら彼は車をとばした。城は、村はずれの絶壁にいつもと変わらぬ偉容を誇り、そびえ立っていた。
 
宿舎の部屋には妻と娘の姿は見当らない。礼拝堂には老若男女、村人全員の射殺死体が転がっていた。地獄のきわみともいえる殺害現場に思わず嘔吐するジュリアン。彼は城の中庭へ走った。
 
そこにはフロランスが血に染まって倒れ、そのそばに黒こげの死体が転がっていた。ドイツ軍の集団暴行を受け、火炎放射器で焼き殺された最愛の妻の無残な姿、そして娘の惨殺死体。(このあたりの、ジュリアンが想像する、回想シーンが凄まじい!)
 
                 この恐怖感!
 
ジュリアンは勝手知った城の秘密通路を通り、隠してあった一挺のショットガンをとり出した。そして橋桁をはずして城館を孤立させた。地下室のワインをあおりジュリアン一家の幸福だった頃のホーム・ムービーに歓声をあげるドイツ兵。
 
それをマジック・ミラーの奥から涙にむせびながら身を震わせて凝視するジュリアン。クララとフロランスの楽しかった頃の想い出が走馬燈のように胸裡をかけめぐる。
 
ビリアッツの休暇でクララと初めてあった日のこと、妻と別れた直後、母の愛に飢えていたフロランスはたちまちクララになつき、仲のいい姉妹のようだった。永遠の愛を誓い、周囲に祝福されての再婚。フロランスの洗礼式、そして小学校の卒業式。
 
 
ジュリアンは神出鬼没の行動で整然とドイツ兵を粛清していった。
本隊への合流を急ぐあまり車もろとも橋桁と転落死するもの。ロープを伝って逃げようとして狙撃されるもの。城の地下で水責めにされるもの・・・。
 
残るは隊長(ヨアヒム・ハンセン)ただ一人になった。ジュリアンの怒りの火炎放射器が彼に向けられた。同時に城も炎に包まれた。ナチス・ドイツによる犠牲者たちを弔うかのように立ち昇る黒煙。
 
慰めにかけ寄るフランソワの言葉も上の空、放心したように遥か彼方を見つめるジュリアンの瞳には、しかし複雑な笑みが浮かんでいた(MovieWalker)。
 
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第二次大戦も、連合軍がノルマンディー上陸を果たし、フランスの村も、ドイツ軍から解放されるだろうという情勢が濃厚だった矢先のフランスの一家を襲った、あまりにも残酷な悲劇。医師であるジュリアン(フィリップ・ノワレ)が所有する古城に妻と娘を避難させていたが、数日してそこを訪れると、目を覆う地獄図。村民たちと、妻の丸焦げの焼死体や娘の死体があり、絶望と怒りの涙がこみ上げるジュリアン。
 
城に駐留しているヒトラーの親衛隊のドイツ軍兵士は12人ほど。ジュリアンは小さい頃、父親に狩猟に連れて行かれてことがあり、獲物を仕留めたあと、「これは散弾と言うんだよ」と聞かされ散弾銃(ショットガン)を見せられたことを思い出す。
 
ジュリアンは、城の中に隠し持っていた血塗られた散弾銃を磨き、復讐の鬼と化すのだが・・・。たった一人で10人以上の銃を持ったドイツ兵に立ち向かっていくというのは、いくらなんでも無謀で、犬死するのではないかとハラハラしたが、ひとり、またひとりと倒していくのだ。
 
その復讐の原動力となったのは、妻や娘との楽しかった思い出。そのシーンが、次々に”追想”として蘇る。その思い出が蘇るたびに、ショットガンに詰める散弾にも力が入るのだった。
 
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フィリップ・ノワレというと、晩年の「ニュー・シネマ・パラダイス」などフランスを代表する俳優の一人だったが、ソフィア・ローレンと共演の「レディL」や「トパーズ」「将軍たちの夜」などを見ていた。ハリウッドスターなどのスマートな二枚目俳優と違って、やや小太りでどこにでもいるような平凡な市民といった印象。
 
 
この「追想」では、妻となるクララとの出会いのシーンがいい。
友人の紹介で出会ったのだが、テーブルに座り、クララをじっと見つめていると、
会ったばかりのクララが言う。「私に関心があるの?」「なぜ見つめるの?」。ジュリアンは、真剣な表情で「近いうちに戦争になる。結婚して欲しい」といきなりプロポーズするのだった。
 
こういたシーンはすべて回想として描かれていき、いまは妻と娘を失い、こみ上げるものが出てくるジュリアン。ドイツ兵の最後の一人を倒し、全てが終わる。
 
フランソワの車に乗り、思わず「妻はどうしている?」と聞く。
複雑な表情のフランソワ。ジュリアンは「そうだ、そうだった」と自身で納得するように自分に言い聞かせ、現実を思い起こす。自転車で、3人でハイキングに行った時の思い出が蘇る。一瞬、ジュリアンの表情に笑みがこぼれる。
 
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戦争がもたらした悲劇の一家の物語としてはあまりにも残酷すぎるが、カメラはロミー・シュナイダーの美しさを映し出すことを意識しているようで、ロミー・シュナイダーの魅力を堪能できる映画だった。
 
ロミー・シュナイダーの映画は、友情出演的な「太陽がいっぱい」以外ではまだ数本しか見ていなかったので、これからロミー映画も少し追いかける予定。次は、手元にある「離愁」(1973)か。
 
ロミー・シュナイダーRomy Schneider、1938年9月23日 - 1982年5月29日、享年43歳)は、オーストリア・ウィーン出身の女優。当時の西ドイツ、フランスの映画界で活躍した。出演した映画の数は60本を超える。
主な出演作品:「ボッカチオ’70」(1962)「ちょっとご主人貸して」(1964)「トリプルクロス」(1966)「太陽が知っている」(1968)「すぎ去りし日の・・・」(1969)「夕なぎ」(1972)「ルードヴィッヒ 神々の黄昏」(1972)「離愁」(1973)「追想」(1975)「サン・スーシーの女」(1982)。
 
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