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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

<span itemprop="headline">映画「僕と彼女とオーソン・ウエルズ(2008)(劇場未公開)</span>





僕と彼女とオーソン・ウエルズ」(原題:Me and Orson Welles、2008)を見た。
”オーソン・ウエルズ”という稀代の怪優の名前に惹かれてみたが、劇場公開もされずにDVDスルーというのを知り、驚いた。こんなに面白い映画が・・・?

ビフォア・サンライズ」(映画公開時は「恋人までの距離(ディスタンス)」、1995)3部作のリチャード・リンクレイター監督と知って、映画の”瑞々しさ”が伝わってきたのも納得。

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映画は、1937年のニューヨークが舞台。
オーソン・ウェルズのマーキュリー劇団の旗揚げから、シェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」公演の成功までの過程が、駆け出し俳優としてそこに居合わせたリチャード(ザック・エフロン)の視点で語られている。

オーソン・ウェルズが引き起こしたラジ放送における伝説の「火星人襲来」騒動や、ハリウッドに招かれて「市民ケーン」(1941)を撮る直前に焦点を当てた話である。

ローレンス・オリビエや、「風と共に去りぬ」(1939)を準備中のデヴィッド・O・セルズニック(プロデューサー)といった映画界の大物の名前がポンポン出てくるところも興味深い。

映画のタイトルにあるとおり、オーソン・ウエルズの強烈な個性を描いている。

オーソン・ウエルズは1915年生まれで、1931年、彼は16歳でアイルランドのダブリンの劇場で脇役として舞台デビュー。1934年には、19歳の若さでアメリカに戻りラジオドラマのディレクター兼俳優となっており、後にマーキュリー劇場で共演する俳優たちと仕事をした。

1936年、アメリカ政府による演劇人救済と大衆への演劇供給を目的としたプロジェクト、「連邦劇場計画(FTP)」が始まったが、ウェルズは、FTP責任者たちから注目され、わずか21歳でニューヨーク市ハーレム地区でのアフリカ系アメリカ人の俳優・スタッフたちとの演劇制作事業に、演出家として赴任した。

そして、映画の舞台となる1937年に、22歳でマーキュリー劇団を立ち上げ、その劇場での「ジュリアス・シーザー」では、演出とともに、ブルータス役を演じて、大成功を収めるいきさつが描かれている。

20歳そこそこのウエルズだが、すでにカリスマ性があり劇団内では「ウエルズの言葉に従うこと」というのが鉄則だった。反抗しようものなら即クビという超ワンマンぶりが目立った。

ストーリー:
1937年11月ニューヨーク。俳優を目指す高校生のリチャード(ザック・エフロン)は、ある日、ブロードウェイの劇場前で揉めている劇団と出くわし、新進の演出家であり俳優、後に伝説的映画作家となるオーソン・ウェルズクリスチャン・マッケイと出会う。

ウェルズは自ら主催する「マーキュリー劇団」の舞台「ジュリアス・シーザー」で、ルシアス役の俳優を気まぐれに解雇したばかりで、そんな時に現れたリチャードを、これまた気まぐれにルシアス役に起用する。


                    年上の女性ソニアに心惹かれるリチャード。


憧れの演劇の世界に胸を躍らせるリチャードは、劇団の制作助手を務める年上の女性・ソニヤ(クレア・デインズ)に魅かれていく。しかし、彼女はウェルズの愛人という噂もある女性。トラブル続きの稽古や、不遜なカリスマであるウェルズに翻弄されながら、舞台デビューを目指すリチャードの姿と、ソニヤとの恋のゆくえが描かれる。

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               オーソン・ウエルズを演じたクリスチャン・マッケイがすごかった。

ウエルズの徹底した役作りや信念というのはすごかった。
役者は、演じていても観客から、その役者の本音が見えてしまうと嫌われると考え、役になりきっていた。

ラジオ劇では、突然即興で長々とした演説のような言葉を入れて、共演者も困り果てるが、ウエルズの即興にはうならせるものがあった。(ちなみに、「第三の男」の観覧車での、イタリアの隆盛とスイスのこじんまりした国との皮肉を込めた対比もウエルズの即興と言われる)。


    俳優やスタッフの一人ひとりに細かい指示を出すウエルズ(クリスチャン・マッケイ)。

劇団員に、辞めたければすぐいなくなってもいい、とカツをいれる一方で、やるからには世界一の劇団だということを証明してみせるというのだ。いくら厳しくてもそこまで言われて逃げ出す人間はいない。

初日には、行列ができ観客全てが我々の劇団を見直すと豪語する。
観客の中に「賛助会員は何人?」とウエルズが聞くと「40人」という返答。「彼らを驚かせてやる」と自信にあふれ、結果は、その通りになり、拍手喝采スタンディング・オベーションは延々と続いたのだった。




劇団員、ウエルズがそれこそ全身で大喜びするシーンも印象的だ。
役者や関係者は、観客の絶大な支持と拍手のために日夜戦っているのだ。 ウエルズが、どことなく、くりーむしちゅうの有田哲平に似ていた(笑)。

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18歳の高校生・リチャードを大人へと成長させる物語も描いている。
むしろそちらがメインかも知れない。若き日のアラン・ドロンを彷彿とさせるようなザック・エフロン演じるリチャードと、ウェルズの秘書の女性・ソニア(クレア・デインズ)との関係や、劇作家志望の女性・グレタ・アドラーゾーイ・カザンエリア・カザンの孫 とのこれからの将来を暗示した清々しいエンディングだった。

音楽もなかなかいい。特に最後に流れた「あなたに首ったけ♪」は、詩もメロディーも印象的だった。

※「Gyao」で配信中。

予告編はこちら。
 

オーソン・ウェルズGeorge Orson Welles, 1915年5月6日 - 1985年10月10日)はアメリカの映画監督、脚本家、俳優である。身長190cmで巨漢。代表作は「市民ケーン」(監督・主演)、「第三の男」「パリは燃えているか」「キャッチ22」など。

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