fpdの映画スクラップ貼

「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

女優:シルヴァーナ・マンガーノ(「にがい米」):ミス・ローマから”原爆女優”に。


 
イタリアの大女優・シルヴァーナ・マンガーノの主演作「にがい米」(1948)を見た。
マンガーノはイタリア・ローマ出身で7歳から13歳までジア・ルースカヤ舞踏研究所でバレエを習ったあと、16歳の時、ミス・ローマに選出された。
 
ミス・ローマがきっかけで、1946年に端役で映画デビュー。その後、映画実験センターに入学して、本格的に演技を学んだ後に、1948年、18歳でジュゼッペ・デ・サンティス監督に見出され「にがい米に主演し、当時としては強烈なセックス・アピールで一躍スターとなった。
 
日本では「原爆女優」と呼ばれたというのが強烈。
上のポスターの文言は肉体迫力!」「女の体臭と官能をぶち抜くイタリア映画
とても18歳とは思えない大迫力だった。
 
1960年代なら、アン・マーグレットを「ダイナマイト女優」と呼んだと思うが。
原爆にしろ、ダイナマイトにしろ、グラマー女優にしろ、とにかく圧倒するそのナイスバディ?が強烈だった。
 
こんな話:
ある駅でワルテルという男とフランチェスカという女が一緒に逃げようとしているが、実はこの二人は大変な悪党で前日に高価な宝石を奪っていた。警察から追われていたのだった。

季節は、毎年田植えの出稼ぎシーズンとなる5月。
フランチェスカは出稼ぎに出かける女たちにまぎれて、電車に乗り込み逃亡しようと企てる。一方のワルテルも、警察の目をくらますために逃げるのに必死。
 
後でフランチェスカの行く出稼ぎ場所のポー川流域に遅れていこうとするつもりでいた。フランチェスカは、出稼ぎ場所で、シルヴァーナ(シルヴァーナ・マンガーノ)と出会い、何故か二人は仲良くなる。

そんな時、米の出稼ぎ場所で労働ピサを持っていないものは、今すぐに退去を命じられるが、ドサクサに紛れて入り込んだフランチェスカだったが、労働ピサを持っていない。他にも労働ピサを持っていない女たちがはたくさんいて、追い出されそうになるが、それでも退去しないフランチェスカたち。
 
正規の労働ピサをもっている女たちのグループと争いごとになってしまう。
 
そこへマルコ(ラフ・ヴァローネ)という男がやって来て、彼は労働ピサを持っていない女たちを助け、フランチェスカはマルコ(ヴァローネ)を愛するようになる。

しかし、フランチェスカの宝石がどこかへ消えてしまう。
踊りまくるシルヴァーナ(マンガーノ)が首に宝石をつけているのに気づくフランチェスカ。やがて、ワルテルが遅れてやってくる。
 
一方、シルヴァーナ(マンガーノ)はワルテルを愛するようになるが、ワルテルはフランチェスカに対して未練がありマルコと喧嘩を始める。
 
そして、ワルテルは収穫された米を盗む事を思いつき、シルヴァーナ(マンガーノ)を悪事に誘い込むのだが・・・。シルヴァーナは、ワルテルらに騙され、非業の最期を遂げる。
 
・・・
戦後の貧しさの中で、生きるためのイタリア女性たちのバイタリティをうかがい知ることができる映画。田植えの出稼ぎの労働ビザを持っているグループと、持っていないグループが、田植えをしながら、歌で相手を非難するシーンも印象的だ。
 
労働ビザを持つグループのシルヴァーナが歌い始めると、同じグループが続く。
♪断られたのに必死に働いては それは裏切り者のすることよ♪
 
これに対して、労働ビザのないフランチェスカらが歌で応酬する。
♪太陽の照りつけない涼しいうちに精を出す 重労働に耐えながら 黙々と
 働くしかない私たち♪
 
これにシルヴァーナたちが、また歌う。
♪涼しかろうと暑かろうと 働いては困る♪
 
 
・・・
「にがい米」の翌年の1949年に「にがい米」のプロデューサーで、後に世界的なプロデューサーとなるディノ・デ・ラウレンティスと結婚し、夫がプロデュースする作品に数多く出演した。
 
当然のように”グラマー女優”(死語)としてキャリアを続けたが、「華やかな魔女たちが転機となって、その後はルキノ・ヴィスコンティ監督ピエル・パオロ・パゾリーニ監督の作品では主に貴族やブルジョワの中年女性を演じるようになった。
 
シルヴァーナ・マンガーノの作品を初めて見たのはピエル・パオロ・パゾリーニ監督の傑作「アポロンの地獄」(原題:イタリア:Edipo Re、英 : Oedipus Rex、「オイディプス王」、1967製作、日本公開1969)で、1969年に日比谷のみゆき座で見た。この映画はキネマ旬報(1969年度)ベストテンの1位に輝いた。2位は「真夜中のカーボーイ」。
 
 
 
古代ギリシャ三大悲劇詩人の一人であるソポクレスが、紀元前427年ごろに書いた戯曲。ギリシャ悲劇の最高傑作として取り上げられる作品。このドラマは、恐しい運命とは言え、実の父を殺し、実の母と親子婚を行ったため、オイディプースの名は「エディプス・コンプレックス」の語源にもなった。マンガーノは、眉を剃って、生気を失った能面のような顔が印象に残る。
 
同じパゾリーニ監督の「テオレマ」(原題:イタリア語: Teorema, 「定理・定式」の意、1968、日本公開1970)も劇場で見た。
 
ミラノ郊外に住む、工場経営者であるブルジョワ家庭(主人、妻=シルヴァーナ・マンガーノ、娘、息子、家政婦)に一人の男(テレンス・スタンプ)が姿を現わし、なぜか男と一家との共同生活が始まる。そのうち家族全員は男の謎めいた魅力の虜となっていくが、男が家族の前から立ち去ると、残された家族は奇妙な行動を取り始め、家庭は崩壊していくというストーリー。
 
       「ベニスに死す」では美少年の母の貴婦人に扮した。
 
ヴィスコンティ監督の「ベニスに死す」(1971)では、老境の主人公(ダーク・ボガード)が虜になる美少年タジオ(ビョルン・アンデルセン)の母親役で特別出演したが、気品のある役で印象に残る。
 
出演作品:
にがい米』 - Riso amaro (1948) 『シーラ山の狼』 - Il lupo della Sila (1949) 紅薔薇は山に散る』 - Il brigante Musolino (1950) アンナ』 - Anna (1951) 『マンボ』 - Mambo (1954) ユリシーズ』 - Ulisse (1954) 『人間と狼』 - Uomini e lupi (1957) テンペスト』 - Tempest (1958) 『海の壁』 - The Sea Wall (1958) 『戦争・はだかの兵隊』 - La Grande guerra (1959) 『五人の札つき娘』 - 5 Branded Women (1960) バラバ』 - Barabbas (1962) 『私は宇宙人を見た』 - Il disco volante (1964) 華やかな魔女たち』 - Le Streghe (1967) アポロンの地獄』 - Edipo re (1967) テオレマ』 - Teorema (1968) ベニスに死す』 - Morte a Venezia (1971) デカメロン』 - Il Decameron (1971) ルートヴィヒ』 - Ludwig (1972) 家族の肖像』 - Gruppo di famiglia in un interno (1974) デューン/砂の惑星』 - Dune (1984) 黒い瞳』 - Oci ciornie (1987)
 
シルヴァーナ・マンガーノは1989年で死去。満59歳だった。
 
  「にがい米」予告編
 
関連記事
■「女優:シルバーナ・マンガーノ」   http://blogs.yahoo.co.jp/fpdxw092/60475140.html 
 
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
「にほん映画村」に参加しています:ついでにクリック・ポン♪。