巨匠といわれるチャン・イーモウ監督の「初恋の来た道」の撮影を担当したホウ・ヨンの監督デビュー作。イーモウ監督と比較すると、女優の活かし方や、切れ味などで見劣りがした。
キャッチコピーは・・・
「激動の上海を生きた茉(モ-)・莉(リー)・花(ホア)の恋の行方は・・・。」
チャン・ツィイーが主演の親子三代に渡る女性を演じる三構成。
親、子、そのまた子供に渡るいずれも女性を主人公として、上海を舞台に、1930年代から1980年代までが描かれている。
第一部は、1930年代で、写真館を営む母と娘・茉(モ-)の話。
チャン・ツィイー演じる夢見がちな少女・茉(モ-)は女優に憧れ、写真館に来た映画会社の男に見初められ、女優となるも、不意の妊娠、あげくに男に裏切られ、再び写真館に戻り、子どもを産むが、母親が自殺し、一人で育てていくことになる。
第二部は、その子供・莉(リー)の話。
母と娘・莉(リー)で同じく写真館で暮らすが、莉が年頃になると、党員で労働者階級の男と恋におち、結婚し、庶民生活をすることになるが、生活が上手くいかず、再び写真館に戻ってきて、母、夫婦と三人で暮らすが、子どもが産めぬ体だとわかり、養子(養女)を持ち育てる。しかし夫と上手くいかなくなり、精神を病み、ある日、夫は家を出て戻らなくなり、娘も後を追う。
第三部は、莉(リー)の娘・花の話。
年頃になった娘・花は遠距離の恋人を持つが、恋人に裏切られ、妊娠に気付き、一緒に暮らしていた祖母も亡くなり、一人で産気づき、病院に向かうも間に合わず、雨が降りしきる中、路上で子供を産み落す。
・・・
どの時代もすべて男運がない三世代に渡る女性の物語だが、中国の時代背景などが感じられて興味深い。
【第一部】1930年代<電影(映画)黄金時代>
上海のノスタルジー(郷愁)をそそる雰囲気や、写真館を営む中流階級の暮らしや暮らし向きの上品さなどがみどころ。一方、日本軍が進駐し兵士が街中を歩くシーンがあり、子供たちの間から「8月13日、日本軍が爆弾を投下した」という歌のような言葉が聞かれた。これは、第二次上海事変(1937年8月13日から始まる中華民国軍の「日本租界」への攻撃とそれに続く日本軍の反撃のこと)で、一般に上海戦と呼ばれる。
茉(モ-)の母親は、「映画なんてヤクザな商売」と言って、茉の映画女優の夢に反対していたが、映画会社・孟社長の誘いがあり、茉は、スターになりかかるが、会社は倒産し、孟社長は、お金だけ持って、香港に逃げたのだった。茉は、孟社長との間の子供を身ごもっていて、額にシミの跡がある女の子供で、莉(リー)と名付けられた。蛇足だが、この第一部の茉(モ-)の表情、雰囲気などが「東京ラブストーリー」の鈴木保奈美に似ている。
【第二部】1950年<文革時代>
時代は18年後。額にシミのある莉(リー)のアップで始まる。
ロシア国旗を振るパレードの光景が見られる。莉は、工場に勤める偉(ジェ)という男と付き合っていたが、偉(ジェ)は「英米に追いつくためには、工場で働こう。手に汗して、社会主義を築こう」と労働者に訴えていた。莉の母・茉(モ-)は「男はよく選ばなければならない。私に会わせて」ということで、偉(ジェ)を家に招き食事をする。
茉(モ-)は、かつて人気俳優だった「高占非」という俳優の熱烈なファンで、偉(ジェ)に「高占非を知っているか?」と聞くが、「映画俳優なんて、ブルジョアの寄生虫だ」と主張。「寄生虫も才能がいるのよ」と反論する茉。結局、ふたりの間には子供ができず、養子(養女)を貰い、花(ホア)と名付けられることになるが、生活習慣などが合わず、偉(ジェ)は家を出てしまう。
第一部、第二部と全体的に暗い雰囲気が続くが、第三部の1980年代になってからは、やや明るい雰囲気になってくる。
【第三部】1980年<現在>
さらに10数年が経過し、1980年代になっていた。
20代になっていた花は、杜(ドゥ)という男と結婚。しかし、杜は日本に留学したいと日本に渡ってしまう。杜から航空便が届き、茉が先に文面を見てしまう。
花にはお腹に子供が宿っていて、花と杜が結婚の届けを出しているのを茉は後から知るのだが、手紙の文面は、中国には戻らないような文面だったようだ。そのため、子供を産むのに反対した茉だが、老衰でなくなってしまう。「話したいことがあったのに」と号泣する花だったが。これも蛇足だが、花の表情は、メガネをかけて、「ごくせん」の仲間由紀恵に似ていた。
・・・
1980年代はじめの会話で、「山口百恵に似た子もいた」と言った言葉が登場。
百恵の「赤いシリーズ」の中国での大ヒットを伺わせた。郵便配達人が、日本(東京都中野区・・・と読めた)からのエアメールを届けた時に、「切手をくれないか」というのもおかしかった。切手集めをしているからといって、配達人が、郵便物の配達先で、 ”切手”をもらえないかというのも(笑)。
映画は、物語の起伏がなく、ドラマ性に欠けるので評価が低い。
中国の文化大革命やその時代の背景を知る上では面白かったが・・・。
★★
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