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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「海外特派員」(1940、日本公開1976)ヒッチコック監督サスペンス。

 
アルフレッド・ヒッチコック監督のサスペンス映画「海外特派員」(1940、日本公開1976)を見た。第二次世界大戦直前のヨーロッパを舞台に、アメリカの新聞社から派遣されてきた特派員が巻き込まれる殺人事件と不穏な社会情勢を描いたサスペンス映画。
 
 
かつてTVで放映(一部だけテレビで見たことがあった)されたが、劇場では1976年に初公開された。
 
製作はウォルター・ウェンジャー、監督はアルフレッド・ヒッチコック、脚本はチャールズ・ベネットとジョーン・ハリソン、撮影はルドルフ・マテ、音楽はアルフレッド・ニューマンがそれぞれ担当。出演はジョエル・マクリー、ラレイン・デイハーバート・マーシャル、ジョージ・サンダース、アルバート・パッサーマン、ロバート・ベンチリーなど

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1938年のある日、ニューヨーク・モーニング・グローブ紙の社長は、不穏なヨーロッパ情勢を取材する特派員として、最も威勢のいい記者ジョン・ジョーンズジョエル・マクリー)を指名した。社長室に呼ばれたジョーンズは、そこでヨーロッパでの平和運動の大立者フィッシャー(ハーバート・マーシャル)と知りあった。
 
やがてジョーンズは、ロンドンへ向かった。
ジョーンズを迎えた前任者ステビンス(ロバート・ベンチリー)は既に記者魂を失った男だった。間もなくフィッシャーもロンドンに到着し、戦争防止の立役者オランダの元老政治家ヴァン・メア(アルバート・パッサーマン)の歓迎パーティを開き、ジョーンズは、そこでフィッシャーの美しい娘キャロル(ラレイン・デイ)と知りあった。
 
アムステルダムで平和会議が開かれることになり、雨が激しく降りつける中、ジョーンズも取材のために出かけたが、彼の目前でヴァン・メアがカメラマンを装った男に拳銃で撃たれた。
 
傘の間をぬって逃げた犯人は、待たせてあった車に乗り込んだ。
ジョーンズは追跡すべく通りがかりの車に無理矢理乗り込んだが、その車には新聞記者フォリオット(ジョージ・サンダース)とキャロルが乗っていた。
 
 

激しい追跡の末、3人の乗る車は風車の点在する田園地帯で停まった。
 
ジョーンズは風車の1つが奇妙な動きをしているのに気づき、単身、小屋へ忍び込むが、そこには数人の不審な男たちと、先ほど撃たれたばかりのヴァン・メアがいた。
 
ヴァン・メアはナチスのスパイに誘拐されていて、先の殺人は替え玉を使ったトリックだったのだ・・・(MovieWalkerより抜粋)。

 

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1940年製作の映画で、日本でしばらく公開されなかったのは、映画をみればある程度理解できる。世界情勢を考えれば、ヨーロッパにおける第二次世界大戦の突入前後の模様を描いており、映画のラストでは、アメリカの国歌が流れ、「ロンドンが空襲を受けている。アメリカの力(軍事力)で、最後の光を消してはならない」というアメリカの戦意高揚と取れるシーンで終わるからである。
 
日本といえば、日米開戦が始まっていた時期であり、敵国アメリカ製の映画の上映は禁止されたのだろう。戦時中は英語の使用も控えられ、野球用語も日本語に置き換えられたという時代。
 
「海外特派員」という映画、ヒッチコックの初期の名作というだけでなく、パニック映画としても、今見ても、後のデザスター&パニック映画の傑作ポセイドン・アドベンチャー」に勝るとも劣らないシーンがある。
 
ジョーンズがアメリカへ帰国する飛行機にフィッシャー父娘も乗りあわせていたのだが、ドイツ軍艦の攻撃で、飛行機は大西洋の洋上に不時着してしまうのだ。飛行機が浸水し、沈没寸前の飛行機のウイングにしがみつき、荒波と戦う姿は、迫力があった。オランダの風車のシーンも印象的だった。
 
ポセイドン・アドベンチャー」「大地震」「タワーリング・インフェルノ」「大空港」といった70年代のパニック映画のできる30年も前に、ヒッチコックがサスペンス&パニック映画を撮っていた事に今更ながら驚かされる。
 
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ジョーンズ、キャロルたちはアメリカ軍に救助された。
ジョーンズは、この事件を伏せようとするアメリカ軍を巧みにごまかして、本社へ連絡し、特ダネをものにした。このシーンは圧巻だった。本社の社長と電話がつながっていて、受話器を外したまま、アメリカ軍とジョーンズの会話のやりとりをすべて本社に聞かせていたのだ。本社サイドでは、社長もそれを聞いていたし、速記の女性が筆記していて、ヨーロッパの開戦という世紀の大スクープとなった。
 
サスペンスという点では、黒幕は誰か、その黒幕と誰が通じているのか、ジョーンズが恋心を抱き、結婚の約束もした女性・キャロルが、実は黒幕の娘だったのだが、その娘は父親の陰謀を知っていたのか・・といった見所が多い。
 

ヒッチコックは美人女優を使うというので定評があるが、この映画の黒幕の娘・キャロル役のラレイン・デイという女優も美人で魅力的だった。
 
Wikiでみたら、「海外特派員」に主演して一躍注目を浴び、1941年には「ハリウッドの明日のスター」1位に選ばれている。納得。
 
ヒッチコックらしいユーモアもある。
主人公が逃走するため、建物の窓からでて、窓際を歩いていくシーンで「HOTEL EUROPE」のネオンサインの「EL」が消えていて「HOT EUROPE」(字幕:危険なヨーロッパ)となっていたりヒッチコック自身がいつものように登場(新聞を読みながら歩く通行人)したりしてニヤリとさせる。
 
ヨーロッパの開戦前夜のイギリスの様子なども垣間見ることができ、やはり映画は面白い。
☆☆☆☆