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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「女」(1948、木下恵介監督):出演者は男女ふたりだけ。

 
木下恵介監督の「」(1948)を見た。
なんともシンプルなタイトルだが、DVDの説明書きに、登場人物がふたりだけでサスペンスタッチの映画とあったので見た。
 
なかなか面白く、引き込まれた!
”か弱き者は女なり”という言葉もあったようだが、男の言うなりになっていた女が、最後には、強烈パンチをお見舞いするというところもいい。
 
ずる賢い男の表情を伺う女の視線も強烈。
ダンサーの敏子(水戸光子)は、恋人でもあるやくざ稼業の正(ただし、小沢栄太郎)から「あすの朝の列車で、箱根のホテルに来い。俺はきょう出発する」と強引に言われるが、「舞台があるじゃない」と言い返すものの「お前の役など誰でもできる」と無理やり箱根へと連れていかされることになる。どうやら正は、また罪を犯したようなのだが、そんな彼から敏子はなかなか逃れられずにいた・・・。
 
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映画の冒頭のクレジットは、手書きの殴り書きのような文字が続く。昭和23年(1948年)完成という文字も出てくる。物資も予算も乏しい戦後の日本映画界の中、たったふたりきりのキャストを伴い、思い切って撮影所を飛び出してオール・ロケを敢行して完成させた、木下惠介監督ならではの実験精神に満ちた意欲的ヒロイン映画
 
どうしようもない男の内から醸し出される優しさと狡猾さ、そんな男に翻弄される中から頭をもたげていく女の強さと非情さ、その双方が舞鶴や箱根、熱海と、戦後まもない日本の牧歌的な景色を背景とするロード・ムービー感覚と、俳優の顔のサスペンスフルなアップの対比で描かれていく。
 
 
クライマックスの火事場シーンは、ライバルでもある黒澤明監督から絶賛されたという。なお、SKD(松竹歌劇団)のレビュー・シーンで群舞を踊るダンサーの中には、映画デビュー前の桂木洋子の姿も見られる。
 
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小沢栄太郎が若い(撮影時は39歳)。小沢栄太郎といえば、「白い巨塔」の鵜飼教授役など仇役や悪役が多いが、「女」でも、窃盗や強盗を戦争のせいにして自分の悪行を正当化し、女には凄んだり、甘い言葉を言ったり、なだめすかしたりと救いようのないいい加減な人物を演じている。女は、世間知らずだった頃に甘い言葉に騙されて、ダンサーになったりしてきたが、ついにヤクザな男に見切りをつけて、自我に目覚めていく過程を描いている。
 
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正という人間は、とにかく自分勝手な考えの持ち主。
小学校の校庭から「赤とんぼ」を歌う歌が聞こえてくると、敏子に対して「俺も、赤とんぼを歌った子供時代があった。暑いさなか、買出しに行ったこともある。戦争が悪いんだ。戦争に行って、戻ったら食っていけなかった。あんときからだ、うんと悪いことをしだしたんだ。」 敏子は反論する。「いい人だってたくさんいる。(食えないからって)悪いことをしていいということはない。」
 
新聞記事に、「3人で強盗」の記事があり、にやつく正。
それを見て、また悪いことをしてきたと直感する敏子。
敏子も「悪いことをしたのはあなた一人でたくさん。私を道ずれにするのはやめてください」と訴えるのだが、正は、「世の中にも見捨てられて、ひとりの女からも見捨てられて。」と弱い人間ぶったりと姑息。「あなたの金儲けは人間のすることじゃない。鬼だ」と敏子。しつこくつきまとう正に、最後の手段を取ることになるのだが・・・。
 
低予算の映画であることがわかるオールロケの映画で、登場人物は、2人だけ。
ただ、カメラの顔のアップや、口元のアップ、目のアップなど大写しのシーンが多く、迫力がある。また音楽もサスペンスタッチで、盛り上げている。
 
木下恵介監督の初期の頃の作品として注目されている作品のようだ。
 
YouTubeでも見られるようだ。
 
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