吉村実子は、高校在学中の17歳で今村監督にスカウトされて、この映画でヒロインを演じてデビューしたが、蓮っ葉な性格、言葉で圧倒する力強さを見せた。
「これはすべて架空の物語である」という文字が最初に現れる。
フィクションと断っているが、終戦後の日本の風俗や物質的にも貧しかった日本人の生活ぶりや、生きるためのたくましさなどを描いていた。
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基地の町・横須賀に米軍の残飯を流用した養豚でひと儲けをたくらむやくざ組織があった。豚の飼育係を任され一時出世の夢を見たものの、内輪揉めに巻き込まれて自滅していくチンピラ男・欣太(長門裕之)と、その恋人で、男たちに蹂躙されながらも自分の足で歩んでいく女(吉村実子)。二人の生きざまを通して、戦後日本の現実を寓意的に描く(Wiki)。
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この映画は、俳優たちのセリフの早口で、横須賀なまり?でついていくのが大変だが、威勢の良さがあり、とにかくテンポが速い。横須賀・米軍基地の兵隊相手の風俗(売春)や、チンピラヤクザなどの実態が描かれる。
タイトルの「軍艦」はほとんど登場しないが、「豚」が道路に溢れるほど、これでもかと登場するシーンは、CGもない時代に驚きだ。
後ろには豚の大群が迫ってきた・・・。
主人公の欣太(長門裕之)は、チンピラで使いっぱしりのような男だが、騙されやすい人間。「もう騙されないぞ」と小型機関銃をぶっぱなすシーンは、まるでギャング映画。数百頭の豚が路面に溢れ、人が押しつぶされそうになるシーンは驚愕。(ねずみの大群が迫ってくる「ウィラード」という映画もあったが・・・)。
チンピラを脅かしながらも、胃の具合が悪くお腹を押さえる丹波。
ヤクザの兄貴分(丹波哲郎)は、常に胃の調子がおかしく、病院でこっそりレントゲン写真(実は他人のだった)を見て胃がんと思い込み、列車に飛び込もうとするが、怖気付いて、電柱につかまってしまう。その線路の向こう側の看板には、皮肉にも「日産生命」とあり、元気にニコニコというコピーがあった。映画ポスターに「日産生命協賛」とあった(笑)。
戦後の混乱期の断片を切り取った、宣伝文句にあるような型破りの映画だった。
丹波哲郎は、この映画撮影時39歳で、この映画以降、映画スターの地位を確固たるものにしていった。
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