映画「自分の事ばかりで情けなくなるよ」(2013)は、タイトルの面白さと、いまや若手俳優の中では、映画「紙の月」や三谷幸喜のドラマ「オリエント急行殺人事件」などの出演と引っ張りだこの俳優・池松壮亮(いけまつ・そうすけ)が主演だったのでみた。監督は「アフロ田中」(2012)でデビューした松居大悟。松居大悟は、脚本家、演出家、映画監督、俳優で、1985年11月生まれの29歳。長編映画は、今年封切り作品を含めて5本。
かなりマイナー作品のようで、劇場公開すら知らなかった。この映画は、「音楽」バンドと、「物語」のコラボという点がユニーク。
いくつかのエピソードからなる、悩み、もがき苦しむ主人公たちの群像劇だが、その中の主人公の心情が、映画に挿入される歌詞と連動するような作り方になっている。
例えば、会社のOLが、その日、一人で気に入ったバンドのライブに行く予定があったが、上司から残業の業務命令がある。一応、「明日ではダメですか」と聞くが、上司は「今日、終えて欲しい。君しかできない」などと言われて「分かりました」と仕事を続ける。
それでもライブの終演、アンコールに間に合うかどうかわからないが、タクシーを使い会場も走って駆けつける。一応は終わって、アンコールの場面だった。
バンドのリーダーが語っている。
「アンコールというのを何にするか、いつも考える。アンコールは、もう一度聴きたい曲というのが普通だが、例えば、きょうのライブに仕事で間に合わなかった人もいるだろう。そんな人が、駆けつけた場合、アンコールだけ間に合ったとする。アンコールだけでも、来てよかったと思えるようなオリジナル曲を作ったので聴いてください。」というものだった。
駆けつけたOLの心情を見透かしたような言葉だったが、その歌詞が、またそのOLの気持ちを代弁しているようなものだったので、OLは号泣してしまう。
そのOLは、見かけがダサいので、当然社内でも、男子、女子を問わず飲み会の誘いもない。仕事中にもイヤホンでなにか聴いている。それを見た同僚の美人OLが、一言いうのだ。
「そういうの(イヤホン)をしていると、また、社内で嫌われる要素を作っているのよ」と嫌味を言われる。
”また?”って、いわれたOLは思うが・・・。
そのOL、トイレに入って、菓子パンを食べならが、イヤホンで音楽を聴き、”あと3時間”と、仕事のあとのライブを待ち遠しくしていた。そして、一人つぶやく。「どうせあたしには、サヨナラする相手もいませんよ。」しかし、一方では、「頑張れ、ワタシ。負けるなワタシ」と自分を鼓舞する。
このライブにいったOL、終了後一人でカラオケに行って思い切り、狂ったように歌っていたが、侘しい(笑)。
・・・
東京で、病院に勤めると言って田舎から出てきた女子。
実は風俗(ピンサロ)で働いている。店の名前はが「ハチミツとクローバー」。
ある日、田舎の妹から電話があり、病床にあった母が亡くなったので、あす戻って来いという。その女子、明日は「制服デー」だ(ピンサロでのコスチューム出勤)ということを思い出す。「行けないかも」と返事。当日、「早退」を申し出るが、マネジャーが、「指名も多いから、あなたに休まれると」とダメよダメダメだったが・・・。
その日、ピンク色のナースの格好で出勤。妹から確認の電話があったが、「急患が入ってしまって」・・・(笑)。
・・・
映画は、「イノチミジカシ コイセヨオトメ」「あたしの窓」「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」「傷つける」のパートがある群像劇だが、最後にまとまってくる。
映画の最後のライブシーンで、この「クリープハイプ」が登場する。
その新曲というのが「社会の窓」だった。歌詞は、「誰もわかってくれない、話を聞いてくれ~♪」といったもの。
タイトルは結局、人間というのは自分のことばかり考えて、他人のことを思いやらない、自己中が多いというのを嘆いているということなのか。
監督・脚本は、松居大悟。
俳優・宣伝は、SPOTTED PRODUCTIONS
制作は、ビクターエンタテイメント。
追加:「百円の恋」の主題曲”百八円の”恋”を歌っているのが、劇中登場するクリープ・ハイプ(音太郎さんのコメントより↓)。「百円の恋」を見ていたが、そういえばイメージが同じようだった。
★★ (興味のある人は)
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