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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「ブルー・ジャスミン」(2013)アカデミー賞主演女優賞(ケイト・ブランシェット)

 
 
ケイト・ブランシェットが今年のアカデミー賞・主演女優賞を獲得した「ブルー・ジャスミン」が今日(10日)から公開、朝一番の午前中に見た。この映画を見たら、主演女優賞はブランシェット以外には考えられない…と思った。
 
どこかの解説にも書いてあったが、ブランシェット演じる憂鬱な(ブルー)ジャスミンは、テネシー・ウイリアムズの戯曲の名作映画「欲望という名の電車」のブランチ(ヴィヴィアン・リー)をほうふつとさせる。
 
ジャスミンもブランチも、セレブの優雅な生活から、一転して一文無しの転落の人生を経験し、セレブ生活に這い上がろうとして、精神を病むというところは同じだ。
 
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ウディ・アレン監督が、ケイト・ブランシェットにラブコールを送って、初めてのコラボ作品となった。このところのアレン監督は、ヨーロッパを舞台にして、夫婦や男女間の葛藤を風刺をこめて抉り出すような映画が多い。
 
「ブルー・ジャスミン」も、男の身勝手さ、女の自己中さ加減、人間のおかしさ、愚かさ、ばかばかしさ、駆け引きなどを、鳥の目にでもなったように高みの見物をしているような印象を受ける。78歳になるアレン監督だが、まったく人間を描く鋭さは衰えていないようだ。
 
一言でいったら、大人の男女の悲喜劇を痛烈に描いている作品、といえそうだ。
 
 
 
 
物語は、エレガントで美しい女性、ジャスミン・フレンチ(ケイト・ブランシェット)がサンフランシスコの空港に降り立つ場面から始まる。ジャスミンはかつて、ニューヨークに住む大富豪の夫人だった。
 
実業家の夫、ハル(アレック・ボールドウィン)は上品でハンサム。
夫妻はぜいたくに夢のような日々を過ごしていた。しかし夫ハルはペテン師であることが発覚、愛人もいたことから、ジャスミンがFBIに通報して、結婚生活は破綻し、ジャスミンは財産を失った。
 
そして一文無しでニューヨークを後にしたのに、飛行機の座席はファーストクラスというちぐはぐぶりだ。隣の座席にいた老婦人に、一方的に自分のことをべらべらと話していた。
 
向かった先は西海岸に住む庶民的な妹・ジンジャー(サリー・ホーキンス)の家だった。当面の職探しのため、ジンジャーの家に泊まりこんで、新たに一歩を踏み出そうとしたのだが・・・。
 

ジャスミンは、虚栄心だけは人一倍強く、共感できるところがない。
そのため堅実に暮らしてきた妹や婚約中のボーイフレンドとの葛藤が起きる。
 
妹を筆頭に周囲の誰もがジャスミンの被害者。あこぎな実業家の夫でさえもかわいそうに思えるほど。徹頭徹尾シニカルな視点から描かれている。
 
見た目も性格も正反対の妹、華やかな過去と現在の落差、NYと西海岸・・・。
語り口は、衣装や美術などは洗練されていて、現在と過去が交互に映し出されている。
 
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ケイト・ブランシェットの、とにかく病的な表情、薬に頼った精神の不安定さのすごさと、その一方で、セレブの時の身のこなし、174センチの長身のたたずまいは優雅だ。
 
4日後の今月14日には45歳になるブランシェットだが、「アビエイター」でアカデミー賞助演女優賞、「ブルー・ジャスミン」でアカデミー賞主演女優賞と、これからどれだけアカデミー賞にノミネートされ受賞するのか楽しみだ。
 
ケイト・ブランシェットは、出演する映画によって全く違った顔を見せ、メリル・ストリープと並んで、演技派女優のトップを走り続けることになるだろう。
 
ケイト・ブランシェットの圧倒的なセリフ回し、表情、演技の凄みを見せつける映画だった。
 
ところで、パーティの会場で、ジャスミンが独り言をつぶやいていると、近くにいた老人が、「(Are) you talkin' to me?」というセリフがある。あの有名俳優の、あの「映画」(※)のセリフである。いい方まで、まねをしている。アレン監督のお遊びだ。
 
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(※)「タクシー・ドライバー」のロバート・デ・ニーロが、自分が写った鏡に向かっていう。 「オレに話しているのかぃ?」