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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

<span itemprop="headline">待望の文庫化!:「下町ロケット」(池井戸潤)を読む。</span>


 
半沢直樹」の原作者・池井戸潤直木賞受賞作下町のロケット」が、昨年12月26日に文庫版となって発売されたので、さっそく購入、一気に読んだ。
 
 
”半沢”に劣らぬ痛快な面白さがある。
すでにドラマ化(2011年8月~9月Wowow)もされているのだが、ドラマも見てみたい。
 (追加: 動画サイトで全5話見られるので、見た。別に記事にする予定。1月21日)
 
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中小企業と大企業の戦い、社内の亀裂、研究者から経営者に転身した夢を追う中小企業経営者と若い社員の現実的な考えとのかい離などが、丁寧に描かれている。
 
ロケットに自社の基幹部品が利用されることに情熱を傾ける社長に対して、一介の若手社員が「甘っちょろい、青臭い」と批判するのだ。「社長の夢なんぞを追求するために会社を経営されてはたまったものではない」と本音でぶつかる若い社員。
 
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ロケットを打ち上げる事業を請け負う日本有数の重厚長大企業・帝国重工は、部品からすべて自前(内製化)でそろえようするが、肝心のキーコンポーネントの特許を持っていたのが中小企業だった。あらゆる策略をめぐらして、技術を取り込もうとするのだが・・・。 ”天下の”帝国重工の申し出を蹴る、という中小企業がいることに驚きを隠さない事業の責任者。誰だ、そいつは・・・!
 
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町工場だと思って舐めんなよ!」と反撃する中小企業の社員たち。
 
作者が元・銀行員ということで、銀行と中小企業のやり取りも生々しい。
この中小企業に銀行から出向できている社員もいるが、この社員は「半沢直樹」の出向社員である近藤をほうふつとさせる。出向ということで、やや肩身も狭くおとなしくしていたのだが、大企業を向こうにまわして、相手を打ちのめすに十分なボディーブローを浴びせるのだ。この爽快感。
 
ドラマ「半沢直樹」で登場した言葉が、登場した。
部下の手柄は自分の手柄。失敗はすべて部下の責任
 
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単純に大企業=悪、中小企業=善、といった分け方をしていないところがいい。
大企業の中にも、いい技術を理解する人間もいるし、中小企業でも、わがままな人間がいる。文庫本は480頁ほどだが、370頁目を読んだときには、最初のわずか9行だが、目頭が熱くなるのである。
 
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会社とは何か、何のために働いているのか、誰のために生きているのか…などを考えさせるストーリーだ。
 
ある会社が「法廷戦略」をスローガンに掲げているというのが、悪徳だが説得力がある。アメリカなどではありがちだが、体力のなさそうな会社でありながら技術力がある会社に事実無根の特許侵害を起こすのだ。法廷闘争で長期化させ、体力を消耗させて、経営が悪化しお手上げになったところで買いたたく、”兵糧攻め”というやつだ。
 
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蛇足だが、ひらがなでは使うが普段はほとんど使わない漢字が登場する。
 ●静謐(に包まれて)・・・「せいひつ」
 ●眉を顰め・・・・「ひそめる」
 ●犇めく・・・・・・「ひしめく」
 ●嘯く・・・・・・・・「うそぶく」
 ●罅・・・・・・・・・「ひび」
 ●口を噤んだ ・・・「つぐんだ」
 ●蠟 ・・・・・・・「ろう」
 
舞台が、主に中小企業の本社がある大田区(上池台界隈)というので興味も倍増。
大田区に10年間住んでいたので、固有名詞は知り尽くしているため、風景も浮かぶ。国電工の本社は東京のど真ん中・丸の内。その研究所は、つくばと、リアルだ。
 
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しばらくぶりに引き込まれた本だった。
 
 
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