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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

<span itemprop="headline">映画「運命じゃない人」(2005)</span>


映画「運命じゃない人」予告編
 

 
 
運命じゃない人」(2005年公開)は、先日劇場公開された「鍵泥棒のメソッド」の
内田けんじ監督のデビュー作品
 
今年のテレビドラマで「運命の人」というのはあったが、「運命じゃない人」とは・・・。
ストーリーが、時系列でなく、後から後から、背景の事実が加えられて同じシーンが繰り返され、「そうだったのか」ということを知ることになる。
 
こんな作り方の映画は嫌いではない。
面白い。脚本も担当している内田けんじ監督の才能は高いのだろう。
 
鍵泥棒のメソッド」を見る前に、予習として、内田監督のどんでんがえしが面白い「アフタースクール」も見ているので、これで長編3作はすべて見たことになる。
 
運命じゃない人」の冒頭から引き込まれる。
若い女性が荷物を持って、アパートの鍵をかける。
そのカギは、ドアの郵便受けに未練を残しながらも投げ入れる。
 
”男のもとを黙って去っていくのだろう”と想像させる。
次に質屋のシーン。指輪を質入れすると、「3,000円ですね」。
「これ婚約指輪だったんですけど」というと、しぶしぶ「3,500円」となり、現金を受け取って、呆然と駅のベンチで、物思いにふける。
 
この女の一人称スタイルの「この世の中で、一人生きていくんだ。自分の幸せを、ほかの人に託すから、こんなことになるんだ。誰も頼らないで一人で生きていくんだ。がんばれ、がんばれ。まずいな、泣きそうだ」と自分を鼓舞するような言葉が胸の中に。
 
そこでタイトル「運命じゃない人」。
 
この映画に登場するのは、人の好いサラリーマン・宮田中村靖日)、その友だちである私立探偵・神田婚約者に捨てられた女・真紀、宮田を騙した女詐欺師・あゆみ板谷由夏)、あゆみに騙されかけている暴力団組長・浅井
 

 
この5人が織りなすわけだが、いろいろなドタバタやハラハラがあるが、すべてが一夜のドラマであることがわかり驚きを覚える。
 

最初にあるシーンを見せておいて、ほかの状況を映し出し、最初のシーンにつなげていく。こんなことやあんなことも同じ時間帯に起こってたのか、という見せ方が巧い。

時間軸をずらして観客を混乱させる映画は珍しくないが、効果的であったり、逆効果だったりということもありそうだ。最高に効果があったのは「逢びき」か。
 
運命じゃない人」は、構成の巧さに加えて、人のいい宮田のキャラクターの良さが、映画を成功させているかもしれない。友達から、
「11ケタの携帯番号を知っているか知らないかで、全くの他人かどうかの運命が分かれてしまう」といわれた宮田が、勇気を奮って、番号を聞き出した時の「自分をほめてやりたい」と言って、横断歩道で小躍りするシーンなど、見所も多い。
 
この映画の面白いところは、やはり脚本の良さであろうが、ディテールの面白さ。
タクシーの運転手(東京無線)が、一人沈んでいる女性客に、「さっきのあの人は、不器用なようだが、まじめで、ああいう人は安心だよ」とアドバイスしたりする(笑)。
レストランでは、ウエイターが、客の会話を耳にして、自分のことのように妙に納得してしまう…など。
 
テレビでは、アラサー、アラフォーの独身男女のドラマがはやっているが、この映画の主人公の友達の探偵のセリフで「いつかは、自分に合った素晴らしい女性が現れるだろうとか期待するな。自分から行動を起こさない限りありえない。まして、30代になったら、友達同士から始まり、惹かれあってラブラブなんていうのは一切ないからな。危機感を持て!大学などのように文化祭もないからな」というのが、切実感がある。

ラストシーン。
一瞬、あれ? 誰だったと思ったが、そうだった、そうだったと納得すると、憎いエンディングだったことを知る。
 

 
こういう映画は、予備知識なしで見て、新鮮な驚きを味わうに限るようだ。
女優では、霧島れいか(「ノルウェイの森」が印象に残る)がいいが、板谷由夏
(「GIRL」のシングルマザー役)の詐欺師の悪女ぶりが魅力的だった(笑)。
 
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