馳星周の「不夜城」がベストセラーとなっていた頃、この原作を読んだ。
中国系、台湾系、香港系など様々なアジア人種が激しく生存競争を繰り広げる無国籍都市・新宿歌舞伎町を舞台に、普段うかがい知れない暴力と抗争などアンダーグラウンドの世界を描いていた。
そうした中で、ある男と女の危険な純愛ものがたりを描いた映画「不夜城」(1998)が公開されて、見に行った。アジア圏では、人気の高かった金城武が主演。
無国籍映画だが、不思議な魅力があった。
新宿・歌舞伎町は24時間、眠らない街といわれるが、現実にあのようなアジア・マフィアが支配しているのか?
金城武に関しての予備知識はゼロだったが、台湾人と日本人のハーフで、自身の境遇と同じ役柄で、新境地を開いたといわれている。すでに、ウォン・カーウァイ監督作品(「恋する惑星」('94)「天使の涙」('95)=未見)などで実力を見せていた。
ヒロインの夏美役は、ジャッキー・チェン主演の香港映画「Who Am I?」に出演した山本未来。
映画的スケールと情感溢れる演技力で夏美の複雑な役柄を熱演している。
また、劉健一(金城武)のかつての相棒で事件の発端となる呉富春を、椎名桔平が強烈な個性で体当たりの演技を見せている。
監督は、「世界の涯てに」('96)などで知られるリー・チーガイ。
歌舞伎町のオープンセットは、約1億円を投じたという。
カメラワークがすばらしく、独特の「不夜城ワールド」が作られた。さらに、撮影では、歌舞伎町のオープニング、靖国通りでの銃撃戦、レインボーブリッジを背景に芝浦埠頭のラストシーンなど、これまで撮影不可能と思われた場所での大規模なロケが行われた。
主題歌は、日本のトップ・アーティストB’zの「THe Wild Wind」である。
当時の映画宣伝文句:
”愛は裏切り---
無国籍都市・歌舞伎町を疾走する男と女”
ストーリー:
台湾人と日本人の半々・劉健一(金城武)は、中国系3大マフィア=“台湾・上海・北京”の勢力が入り乱れる街・新宿歌舞伎町で、綱渡りのように生きている。
はじまりは健一のかつての相棒呉富春(椎名桔平)がこの街に帰ってきたことだった。その噂を聞きつけ、上海マフィアのボスは、自分の幹部を殺して逃亡した富春を殺すため、健一に彼を差し出すように命じた。
そこへ「富春を売りたい」という謎の女・夏美(山本未来)が現れる。健一は彼女に自分と同じ匂いを感じた。そして、鍵を握る夏美と共に、上海と対立する台湾と北京マフィアに保険をかけ、策略を巡らすが、逆に極限状態に追い込まれる・・・。
ふたりに残された時間は“3日間”---出会ったときからカウントダウンは始まっていた。誰が味方で、誰が敵か?
裏切りと謀略が渦巻く中、次第に健一と夏美の間に、ねじれた愛が芽生えていく。
しかし、はじめて愛を信じようとした彼らに、運命は皮肉な選択と、非情で圧倒的な結末を差し出した・・・。(HPより)
金城武の代表作の1本で、のちにアジアの大スター、アンディ・ラウ、トニー・レオンと「LOVERS」(2004)で共演するなど、一歩も引かない堂々とした演技で、アジアのトップスターの一人であることを証明して見せた。
山本未来も、体当たり演技で、存在感を示した。
山本未来は、ファッションデザイナー、山本寛斎を父に持つ芸術一家。
俳優の椎名桔平は夫。