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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「サイドカーに犬」(2007)再見。

 
サイドカーに犬」(2007)を再見した。
現在30歳になる女性が20年前に、どこからともなく現われて交流のあった女性と出会った当時を回想して勇気を起こして人生に前向きに立ち向かっていこうとする姿を描いた映画。
 
今見直すと、そうそうたる役者が出演していることに驚く。主演の竹内結子のほか、樹木希林、温水(ぬくみず)洋一、椎名桔平古田新太鈴木砂羽寺田農、チョイ役だが伊勢谷友介など。
 
竹内結子の男勝りで、気が強く自由気ままな性格の主人公ヨーコ(実際は、洋子だが漢字が気に入らないのでカタカナにしているという)と10歳の内気な少女・薫(松本花奈との交流を描いている。根岸芳太郎監督。キネマ旬報ベストテン邦画で第
6位キネマ旬報最優秀主演女優賞(竹内結子)受賞。
 
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不動産会社の営業として働く30歳の薫(ミムラは、久々に再会した弟から結婚披露宴の招待状を受け取る。それをきっかけに、薫は20年前にヨーコさんと過ごした刺激的な夏休みを回想する。
 
小学4年生の夏休みの初め、父(古田新太)と喧嘩の絶えなかった母鈴木砂羽が家を出た。その数日後に薫(松本花奈)の家に突然やって来たヨーコさん(竹内結子)は、薫の父の愛人という。
 
ヨーコさんは、何事にも神経質な薫の母親とは対照的な大らかな人だった。
煙草を吸い、さっぱりとした性格で気が強く、自由な精神にあふれた女性だが繊細な優しさも併せ持っていた。長女らしい生真面目さを持つ薫には、ヨーコさんとの生活は驚きの連続だった。だが、ヨーコさんは薫を子ども扱いすることなく、薫の長所を鋭く見抜く。そんなヨーコさんに、甘え下手だった薫も知らず知らず影響され、ありのままの自分を解放させる楽しさを味わっていくMovieWalker)
 
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母が家出した近藤家に突然、ヨーコと名乗る女性がやってきたが、突然の挨拶が「オス!というか初めましてかな」だった。小4の薫にとっては、きょとんとするばかりだが、それを見たヨーコは「その顔だと、お父さんから何も聞いてないな。ま、いいか、あとで」と言って、タバコをぷかぷか吸うのだ。驚く様子の薫に「そんなに驚かなくてもいいよ」と説明もなく強引だった。
 
あとからわかるが、出て行った母親代わりに、愛人を家に時々来させて、食事の世話をさせようと父がヨーコに頼んだようだ。どこに住んでいるのかもわからないヨーコは自転車で風のようにやってくる。
 
自転車というのがドイツ製で「これ高いよ」とヨーコ。「チェーンをかけないとすぐに盗まれる。前にサドルを盗られたことがある」というと、薫は「サドルを盗られてどうしたの」と聞く。ヨーコは平然として「隣の自転車のサドルを盗んで取り付けた」というのだ。
 
薫の父・近藤誠古田新太)は、中古車販売会社の社長。なんとなく胡散臭い筋ともかかわりがありそうな、さえない男。小学生の息子が帰ってくると、家に見知らぬ女性がいたので、「誰?」というと、父・誠は「新しいお母さん。うそ、うそ、本気にするやつがあるか」といったお調子もの。妻が出て行ったからと言って、愛人を自宅に呼んで、子供たちの食事などの世話を焼かせるというのだ。最終的には、離婚し、妻は娘を連れて家を出ることになり、愛人のヨーコもどこかにいなくなる。
 
時代背景は1980年代。
父・誠がどこからかゲームの機械を持ってくる。「なにそれ」と息子が言うと、「パックマン」と父。ヨーコと薫の会話で「コーラを飲むと歯が溶けるって」といったやり取りがある。「学校で教わった」と薫。(これは迷信に過ぎないが、実際に1970年ごろに学生運動が静まったころに、コーラは人体に悪影響があるということで不買運動めいたことがあった。)
 
ヨーコは「石油はあと何年で無くなるか教わった?」というと、薫は「30年」と答え、ヨーコも「私も30年と教わった」という会話もある。これは、オイルショックなどもあったことから、原作者か監督のメッセージでもあったのか。あとから、薫が「歯が抜けた」というシーンがあるが(コーラのせいではなく)乳歯だろう。
 
ヨーコが読んでいた本は太宰治の「ヴィヨンの妻」だった。今から思うと、根岸芳太郎監督は、「サイドカーに犬」の後の2年後に「ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ」(2009)として映画化している。
 
古田新太)の家では、男たちはマージャンをしている。ヨーコがいるので、「コーヒー」だの「タバコを買ってきて」だのと注文すると、「取り置きの”セブン”ならあるけど、200円いただきます」としっかりしている。
 
 
薫が自転車に乗れないというので、ヨーコは「自転車に乗れるようになると世界が変わるよ、大げさでなく」と勧め、野原などで自転車の練習をして、乗れるようになる。
 

印象的なシーンは、野原で、ヨーコが「私の足は固いよ。自転車に乗っているからね」というと薫は触ってみて「ほんとだ」という。この映画のラスト・シーンで、20年後の薫が、自転車で、薫が住んでいるかもしれないという住所に自転車で行ってみるが、引っ越しした後だったようだ。その時に自分の足を触ってみて「私の足も固いよ」と独り言をいうのがいい。
 
ヨーコと薫が、「百恵ちゃん(三浦(山口)百恵)の家は近くですごいらしいから行ってみない」といった会話や、テレビから流れてくる野球放送では「ピッチャー・江川、バッター・岡田(阪神)」などという実況が聞こえてくる。
 
古田新太)が、ヨーコに、おそらく別れるつもりで、お金の代わりに、「当たり馬券」を手渡す。あとで、競馬場(大井競馬場)の窓口で、馬券を渡すと、「229,600円です」だった。ヨーコは金額の大きさにびっくりするが、窓口のおばさんに「手切れ金なの」というと「あぁ、お客さん、ついていらっしゃる」だった(笑)。
 
 

これを軍資金にして、ヨーコは、薫と伊豆方面に小旅行をするのだった。
海水浴場に行くとアイスクリーム売りの増田治五郎温水洋一)がいて、「予約なしでは宿がないが、知らないか」と聞いてみる。「連れ込み、くらいしかないだろう。女性客のお二人さんではね」だった。「連れ込みって」(薫)。
 
アイスクリーム屋というのは夏の間の副業で、干物屋を営んでいる家だった。そこの留守番役の老婆・増田トメノ (樹木希林)がいて、モノをむしゃむしゃ食べ、アジア人のような風貌。そこはもぐりなのか、宿も提供しているようで治五郎は「1泊3,000円でどう」だった。
 
ヨーコは「お母さんいなくて寂しい?」と聞くと薫は「わかんない」と答える。
ヨーコは「ハードボイルドな女だねぇ、薫は」というと、なぜか目に涙を浮かべる。もう自分は、この家には必要ではないと思ったのだろうか。薫が「もうここへは来ないの」というと「わかんない、私も。でも来なくていいって言われたら、来ちゃあいけないんだろうね」といって、去っていくのだった。
 
 
タイトルの「サイドカーに犬」というのは、薫が車に乗っている時に、「サイドカーに乗っている犬を見たことがある」というセリフから取っている。
 
ヨーコが「人に命令する人、人を支配する人間になりたいか、人から命令される人間になりたいかどちらがいい」と薫に聞き、「どちらもよくないな」とひとりつぶやくヨーコ。薫が並んで歩くときに、いつも左側にいるので「左側のほうがいいのか」と聞く。「サイドカーに犬」の犬のように、居心地が良く安定していれば、サイドカーの犬の位置がいいということのようだ。
 
 
出演:
 ヨーコ - 竹内結子
 近藤薫 - 松本花奈ミムラ(20年後)
 近藤透(薫の弟) - 谷山毅川村陽介(20年後)
 近藤誠(薫の父) - 古田新太
 近藤良子(薫の母) - 鈴木砂羽
 浜口 - トミーズ雅
 渡辺寿男 - 山本浩司
 釣堀屋主人 - 寺田農
 マンションの下見に来る客 - 松永京子伊勢谷友介
 増田治五郎(干物屋、夏だけアイスクリームの行商) - 温水洋一
 増田トメノ - 樹木希林
 吉村 - 椎名桔平
 
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