
映画「ダブル/フェイス」(原題: Inconceivable、2017)を見る。代理母をめぐる人間関係と心理的緊張を描いたサイコ・サスペンス・スリラー。原題は「思いもよらない」「考えもしない」といった意味。
出演は「ショーガール」「フェイス/オフ」のジーナ・ガーション、「リービング・ラスベガス」のニコラス・ケイジ、「レフト・ビハインド」のニッキー・ウィーラン、ナタリー・エヴァ・マリー、フェイ・ダナウェイなど。監督はジョナサン・ベイカー。
日本では劇場の一般公開でなく「未体験ゾーンの映画たち2018」の上映作品の一つとして2018年1月30日に限定公開された。
タイトルは、表向きは天使のような微笑とやさしさ、裏の隠された顔は、サイコパスの連続殺人鬼の二つの顔、二面性を持つ人物のことだった。ホラーともいえる。
「俺たちに明日はない」(1967)から50年後のフェイ・ダナウェイには気がつかなかった(笑)。
<ストーリー>
医師のアンジェラ(アンジェラ・バセット)は同じく医師の夫ブライアン(ニコラス・ケイジ)と一人娘のコーラと裕福で幸せな家庭を築いていたが、数回の流産を経験したという辛い過去を背負っていた。
そんなある日、アンジェラは、友人のリンダ(ナタリー・エヴァ・マリー)の紹介で、シングルマザーのケイティ(ニッキー・ウィーラン)と知り合う。

アンジェラ(左)は友人のリンダ(中央)からケイティを紹介される。
意気投合した二人はあっという間に友人となり、そして家のないケイティと娘メイディの親子に同情したアンジェラは、彼女をベビーシッターとして雇い自分の家の敷地内に住まわせることにするのだった。
実はアンジェラの娘コーラは、別の女性に卵子の提供を受けて授かった子だった。アンジェラはもう一人子供がほしいというブライアンの期待に応えるため、代理母出産の計画を進めていたのだ。
ところが、代理母を依頼していた友人リンダが死体となって発見される。そこでケイティに代理母を依頼したアンジェラだったが、次第にケイティは隠していた恐ろしいもう一つの顔を露わにしていく。



・・・
裕福な一家の前に現れたケイティ(ニッキー・ウィーラン)は、メイディという女の子供を連れたシングルマザー。一見親切で魅力的な女性。
アンジェラ一家が、その素性も過去もまったくわからない女性をベビーシッターとして、住み込みで雇うが、それが恐ろしい事態を招くことになる。
ケイティが娘の世話や家事を手伝うようになり、アンジェラは、ある日、自分の娘コーラに対してケイティが母親のように接する姿を目撃してしまう。
ケイティは、アンジェラがもう一人子供が欲しいというので、自分が代理母として子どもを産むという提案をし、アンジェラ夫婦はそれを受け入れるのだが…。
ケイティの過去や本当の目的は謎に包まれていたが、アンジェラが、ケイティについてネットなどで調べていくと、驚くべき事実が隠されていた。
アンジェラが事実をブライアンに訴えるが、聞く耳を持たず、ケイティから吹き込まれていた、アンジェラがクスリに依存しているという言葉をうのみにして、家族関係は歪み、アンジェラは精神的に追い詰められていくのだった。

自宅のゲストハウスで、アンジェラとケイティが対決。ケイティに対してアンジェラがケイティの過去を暴露。ケイティは自傷して腹部を刺し「アンジェラに殺されかけた」と叫んで夫ブライアンの同情を得ようとする一方、アンジェラにも刃を向けるという争いに。
救急搬送されたケイティは緊急帝王切開で男児(ガブリエル)を出産。のちにDNA結果が戻り、コーラとメイディがケイティと血縁であることが確定。アンジェラの主張が正しかったと判明。
ケイティは警察に逮捕され収監。ラストは、アンジェラとブライアン、子どもたち(コーラ、メイディ、そして新生児ガブリエル)が家族として寄り添うカットで終わる。
娯楽性、笑いの一切ない、かなり重いシビアな映画。一般受けしない映画で、一般公開されなかったのも納得。見て損ではないが。

<主な登場人物>
■アンジェラ:ジーナ・ガーション…ブライアンの妻。夫とともに医師。家庭を大事にするが、過去の不妊経験と流産のトラウマを抱える。代理出産で生まれた1人娘コーラがいる。新しい友人ケイティに心を許すが、徐々に不安と疑念を募らせる。
■ケイティ:ニッキー・ウィーラン…一見、美しく社交的に見えるが、実は過去に複数の家庭で問題を起こしてきた人物。アンジェラ一家に入り込み、代理母を名目に支配的な立場を取ろうとする。
■ブライアン:ニコラス・ケイジ…アンジェラの夫。医師で家庭思いだが、ケイティに対して警戒心が薄い。妻の不安を理解しきれず、結果的に事態を悪化させる。
■ドナ:フェイ・ダナウェイ…ブライアンの母。息子夫婦に影響力を持つ。ケイティを好意的に迎えるが、判断力に欠け、ケイティの危険性に気づくのが遅い。
■リンダ:ナタリー・エヴァ・マリー…アンジェラの友人。アンジェラが代理出産を頼んでいたが、ケイティに殺害される。
・・・
この映画は、ラスト15分の怒涛のプロットがドラマティック。
1. リンダ殺害の露見(回想と証拠)…アンジェラはリンダ(友人)が突然連絡を絶った件を調べ、ケイティの過去とつながっていると確信。
回想シーンで、ケイティがリンダを訪ね、秘密(ケイティの過去の代理母歴や、子を奪った事実)を知ったリンダを薬物で無力化→海水中で絞殺する描写が挿入。遺体は隠される。
2. 薬物使用の発覚…アンジェラは、自分の頭痛や混乱が薬物のせいだったと気づく。ケイティがキッチンでワインや飲み物に精神安定剤を混入している場面が映る(過去の回想と現在が交互に)。アンジェラが「不安定」に見えたのはケイティの計画的な細工だった。
3. 夫ブライアンとの最後の誤解…アンジェラはブライアンに「ケイティは危険だ」と訴えるが、ブライアンは依然として懐疑的。ケイティが外面を良く保ち、妊婦として同情を誘っているためで、ブライアンはアンジェラに「君の被害妄想だ」と受け取る。この時点では、ブライアンの信頼はまだケイティ寄り。
4. ゲストハウスでの直接対決…アンジェラは単独でゲストハウスへ行き、ケイティを問い詰める。ケイティは冷静さを失い、過去の犯罪や代理母から子を奪った事実をほのめかす。口論がエスカレートし、ケイティは自分の腹部を包丁で刺して流血。
直後に叫び声をあげ、「アンジェラに襲われた!」と嘘をつき、駆け付けたブライアンに助けを求める。ブライアンは衝撃を受け、アンジェラは完全に孤立。
5. 病院での出産と逆転劇…ケイティは救急搬送され、緊急帝王切開で男児を出産。アンジェラは病院に同行できず、状況を見守るしかない。同時進行で、以前依頼していたDNA鑑定の結果が届く。
6. DNA鑑定による事実判明…検査結果は衝撃的で、コーラ(アンジェラの娘)とメイディ(ケイティの娘)が血縁関係にあること、つまりケイティがコーラの卵子提供者(実母)であることが確定。
この事実が、アンジェラの「ケイティは家族を奪おうとしている」という主張を完全に裏付ける。
7. ケイティの失脚…DNA結果を突きつけられたブライアンは、衝撃を受け、初めてアンジェラを信じる。ケイティは病院で警察に拘束され、リンダ殺害や過去の犯行も捜査対象になった。ケイティの「被害者」イメージは崩れ、完全な加害者として連行される。
8. エピローグ…新たに生まれた男児ガブリエルはアンジェラとブライアンが引き取り、コーラ、メイディと共に家族4人+新生児の穏やかな場面で締められる。
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