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映画「君たちはどう生きるか」(2023)を見る(MOVIXさいたま)。

映画「君たちはどう生きるか」(2023)を見る(MOVIXさいたま)。ゴールデングローブ(GG)賞のアニメーション作品賞を受賞するなど賞レースをにぎわせていることもあり、再上映されている。

またアニメ界のアカデミー賞と呼ばれる「第51回アニー賞の各賞候補が11日発表され、君たちはどう生きるか」と新海誠監督の「すずめの戸締まり」が長編作品賞など7部門ずつにノミネートされた。3月のアカデミー賞でも大本命と言われているので、楽しみ。

君たちはどう生きるか」は国内の興行収入は終盤鈍化したとはいえ、すでに86億円を突破。北米では昨年12月に公開され、日本映画オリジナル作品として初となる北米週末興行収入ランキング第1位を獲得。

宮崎駿監督としては「風立ちぬ」以来10年ぶりに世に送り出した長編アニメーション。「風立ちぬ」公開後に表明した長編作品からの引退を撤回して手がけた。

宮崎監督の記憶に残るかつての日本を舞台に、自らの少年時代を重ねた、自伝的要素を含むファンタジー。音楽はGG賞作曲賞(久石譲)にノミネートされた。

エンドロールで流れる主題歌は米津玄師「地球儀」。「時に人を傷つけながら」「この道の行く先に誰かが待ってる」と、眞人が最後に至った答えに基づく歌詞が歌われている。

映像では、屋敷や車の動き、緑の田園風景、カッターを研ぎ、弓矢の鑓(やり)の先を削る場面や音づくりなど細部に至るまで微細でリアルで素晴らしかった。

映画はどうだったかと言われると「謎解き」のような描写が多く、一度見ただけではなかなか理解できないところが多い。頭の中の理解が追い付いていない(笑)。

アオサギが登場し人間の言葉を話すが、あれは何者?空から飛んできた「塔」は何だった?大叔父が、様々な形の石で積木をしていたが、意味するところは?「悪意に染まっていない13個の石」とは?「墓」にはだれが眠っている?…などだ。

しわくちゃ婆さんたちが大勢出てくるが、豪華声優陣の声が聞き分けられなかった。

         新しい奥様(夏子)が勝ってきた缶詰の食料

・・・
母親を火事(東京大空襲)で失った少年・眞人(まひと)は父の勝一とともに東京を離れ「青鷺(あおさぎ)屋敷」と呼ばれる広大な屋敷に引っ越してくる。

亡き母の妹であり、新たな母親になった夏子に対して複雑な感情を抱き、転校先の学校でも孤立した日々を送る眞人。

そんな彼の前にある日、鳥と人間の姿を行き来する不思議な青サギが現れる。その青サギに導かれ、眞人は生と死が渾然一体となった世界に迷い込んでいく。
・・・
時系列に見ていくと…。

舞台は、戦時中の1944年。東京大空襲で起きた火災で母を失った牧眞人(まきまひと)は、父と共に疎開して東京を出る。

そこで、父の子を妊娠した母の妹・夏子と共に新しい暮らしを始めることになるが、眞人は夏子のことを新しい母だと認めることができない。お手伝いのキリコとの会話でも「夏子おばさん」と距離を置いた呼び方をしている。

           新しい母・夏子(亡くなった実母の妹)

眞人は、家が裕福で転校先には父の運転で車(ダットサン)で乗り付けた。帰り道で、同級生らに暴力を振るわれる。眞人は石で自ら額の横を叩き、血みどろになる。

頭の怪我は、戦争の恩恵を受けて裕福な家庭で育った眞人が同級生たちとそりが合わず、取っ組み合いの喧嘩になった結果「自分でこけた」と言い訳するためにつけた傷だった。

そして、親に聞かれた時も、キリコ(老婆の使用人の一人)に聞かれた時も自分でつけた傷だと言えず嘘をつき続けた悪意の印だった。

そうとは知らず父親は激怒して、眞人を殴った生徒に仕返しをすると息巻く。

そんな中、失踪した夏子を追って塔のある森へ入った眞人とキリコは、大叔父から指示を受けたアオサギの案内で“下”の世界へ行くことになる。

母君が待っていると告げるアオサギに夢中になっていた眞人が失踪した夏子を追うことにした動機は、本の山の中から吉野源三郎の小説「君たちはどう生きるか」(1937) を見つけ、それを読んだことによるものだった。

君たちはどう生きるか」には母の自筆で「未来の眞人へ」というメッセージが書かれていた。

若き日のキリコに助けられ、アオサギとも和解した眞人は大叔父が住む異世界で夏子を捜して旅を続けるのだが…。

・・・
インコたちから助けてくれた女性ヒミと共に眞人は夏子の元に辿り着くが、そこは意思を持った「石」(ダジャレでなく。笑)に囲まれた産屋(うぶや)だった。

産屋というのはかつて出産時の血が“穢(けが)れ”とされて忌み嫌われていた頃に、産婦が人から離れて過ごすために用意されていた場所のこと。

出産が近づいた夏子は自ら、下の世界の産屋に入ってしまったのだ。夏子は、血を流して帰ってきた眞人の“不幸”が自らの“穢れ”のせいだと考えたのか。

小説では、貧富の問題も扱われる。主人公のコペルもまた知識階級の家庭の子どもであり、自分と異なる立場にある人々に思いを巡らせる展開がある。

小説を通して社会の構造が個人の行動や生き方にどんな影響を与えるのかということを学んだ眞人は、自らの悪意を受け止め、その悪意をきっかけに産屋に入らざるを得なくなった夏子に対する責任を感じたようだ。

眞人はそこでは初めて夏子のことを「母さん」と呼び、夏子を母と認める。下の世界に来る前にはキリコに「夏子おばさん」と言っていたが、ここでは夏子を「夏子母さん」と呼ぶのだ。

眞人は産屋に入るという禁忌を侵したことで、下の世界を治めるインコの大王に目をつけられ、捕えられたヒミは大王によって大叔父の元へ届けられる。

「本を読みすぎておかしくなり、姿を消した」と言われていた眞人の大叔父は、空から降ってきた隕石を囲う塔を作り、石と契約して海のあるこの世界を作り出していた

大叔父は、積み木でこの世界のバランスをとっていた。大叔父は石との契約によって血縁関係がある者にしかその仕事を継ぐことはできないといい、より良い世界を作るために眞人にその役割を継いでもらおうとしていた。

キリコ、夏子と共に父の待つ現実に帰るのか、それとも世界のバランスを保つためにここに残るのか、眞人は選択を迫られることになる。

眞人は、一度は積み木を「墓と同じ石」「悪意がある」と拒否する。確かにそれ自体が自立して育っていく木とは異なり、積み木とはすでに切り取られた過去の積み重ねでしかない。

ラストで再びヒミと共に大叔父の前に現れた眞人は、改めて大叔父との問答に臨むことになる。

大叔父は、今度は「悪意に染まっていない石」を差し出す。旅をして見つけた13個の石を3日に一つ積み上げろと言っており、単純計算で39日間かかることになる。

悪意のない平和な世界を作るよう促す大叔父に対し、眞人は自らの頭の傷を指して、これが自分の「悪意のしるし」だと主張する。自分には悪意のない世界を築く資格はない、だから元の世界に帰ると言うのだ。

眞人は、傷について父に聞かれた時は一人でこけたと嘘をつき、キリコに聞かれた時には絆創膏が取れたと誤魔化していた。

だが、この場面では初めてその傷が自分の悪意を示していると認めたのである。

そして、戦争が続く世界に戻っても、キリコやアオサギのような友達を見つけると言う眞人の姿勢は、友人を大切にすることを掲げた小説『君たちはどう生きるか』のメッセージに則ったものだ。

大叔父がこだわっていた「積み木」と「世界」とは、何を意味していたのか。「創作活動」の比喩だったのではないだろうか。

創作=空想でこそ理想を描くべきだが「これから」を生きる眞人は創作に使われる材料を墓石=過去の積み重ねだと言い、それよりも現実と向き合うことだと言う。

大叔父が世界を巡って拾ってきた綺麗な石を引き継ぐよりも、まずは自分の悪意を受け止めて、現実世界で友人を作ると言う。

空想よりも現実をというのが宮﨑駿監督のメッセージのようだ。大叔父の世界が壊れゆく中、眞人は扉を通って元の世界へと戻る

日本の敗戦から2年が経ち、眞人の一家は東京へ戻ることになる。眞人は新しい時代を、戦後の日本を生きていくことになる。

それでも、眞人は自分に影響を与えた小説「君たちはどう生きるか」はカバンに入れている。同時に眞人はポケットに手をやるが、2年が経ち東京へ行くことになってもまだ積み木を持っていることを示唆している。

創作は現実を生きていくためのヒントを与えてくれるもの、というのがメッセージか。

動画配信になったらもう一度、再見したい。

■追加メモ:

■オープニングから最後までの物語の流れ。

「母親の喪失」→「眞人(眞人)の孤独」→「サギ男の誘惑」→「異世界へ」→

「キリコ登場」→「ヒミ(母親の若いころ)」合流→「夏子(母の妹)と再会」→「大叔父との対話」。

宮崎駿の子供時代の過ごした場所。

東京→宇都宮→東京(戦争には反対だが、父が戦争によって利益を得て裕福だったという矛盾。友人とらとの貧富の格差からいじめにあうが、自傷。)

 

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