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【アカデミー賞シリーズ】「伯爵」(2023)を見る。第96回アカデミー賞撮影賞にノミネート。

伯爵」(原題:El Conde, 2023)を見る。第80回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で最優秀脚本賞を受賞し、第96回アカデミー賞では撮影賞にノミネートされた。本作の主人公は独裁政権の象徴アウグスト・ピノチェト(※)で、250年間生き続けた吸血鬼として登場する。

監督は「スペンサー ダイアナの決意」などで知られるチリの名匠パブロ・ラライン。チリ近代史を下敷きにした異世界を舞台に、独裁者ピノチェトを吸血鬼として描き出すダーク・ホラーコメディ

終盤登場するマーガレットという女性はアウグストの右腕の執事の母親で、なんと”鉄の女”マーガレット・サッチャーというのが笑わせる。

                                 ヴァンパイヤ・マーガレット・サッチャー

ピノチェトの遺産を巡って、5人の子供たちが、父親の隠し財産や証書がないか欲に目がくらむ中、ルイ16世時代のキリスト協会がカルメンという若いフランス人修道女にミッションを与える。

         遺産相続を狙う5人の子供たち

それはピノチェトの隠し財産や証書、書類を持ち出すというもので、会計士カルメンとなって現れ、5人の子供たち一人一人と面談し、それぞれの隠された犯罪や違法行為などを探り出す。

マリー・アントワネットのギロチンによる斬首や、グロいシーンが多いので、苦手な人は要注意。

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アウグスト・ピノチェトハイメ・バデル)は、寒々しい大陸南端にある廃墟のような邸宅で、吸血鬼としてひっそり暮らしている。邪悪な欲望を満たすのは、この世で生き延びるため。

250年ものあいだ生きながらえてきた末に、ピノチェトは生き血を飲むのをやめ、永遠の命という特権を手放す決意を固めていた。

人殺しと呼ばれるのは構わないが、泥棒として人々の記憶に残ることに、これ以上耐えられなくなったのだ。

しかし、自分と相容れないご都合主義な家族の企みに反して、彼はある人との思いがけない関係を通じて、意気揚々と反革命的な情熱を持って人生を生き続けるという、新たな希望を見出す。

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映画は全編セピア調のモノクロで、ラストの1分間だけカラー映像となる。アカデミー撮影賞の候補に挙がるだけあって、全体の色調や雰囲気などは、フェデリコ・フェリーニ作品を彷彿とさせる。

全体がナレーションで進められて、ラストで語られていたのは「伯爵には殺人の才能よりも、人を強欲にする才能があった」という言葉で結ばれている。

劇中で「伯爵が狩りに出かけた」という時の狩りとは生き血を吸うこと。伯爵は、召使の男、会計士の若い女性などの首を噛み、吸血鬼にしてしまった。吸血鬼になると、スーパーマンのように空を飛べるのだった。

       ピノチェト夫人と不倫している召使

1980年代~90年代には、吸血鬼がランニングマシンで運動していたりしている。元修道女の女性会計士は、家族の遺産相続の処理に係るが、家族の争い、揉め事は好むところだという。この会計士も、生き血を吸われて吸血鬼になり、空を飛んでいく。時代を超えたSFファンタジー要素と撮影の画で見どころがあった。

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(※)アウグスト・ホセ・ラモン・ピノチェト・ウガルテ、1915年11月25日- 2006年12月10日)はチリの陸軍軍人、政治家。第30代チリ共和国大統領(在任:1974年-1990年)。

1973年9月11日のチリ・クーデターで政権を掌握し、長期に亘って強権をふるい、独裁者としてチリに君臨した。1974年3月に発表された国家再建方針により、ピノチェトは議会制民主主義の否定による軍事政権の長期化と、軍事政権による政治、教育、経済などチリのあらゆる部分の改変を打ち出した。

1974年6月27日には大統領に就任。アメリカ合衆国の政財界、チリ国内の保守層や軍部の支援を受けながら、その後1990年3月までの16年間に亘って軍事政権を率いて強権政治を行い「独裁者」と呼ばれた

 

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