「海辺の映画館―キネマの玉手箱」(2019)を見る。劇場公開は2020年7月31日。大林宣彦監督の遺作。3時間(179分)の長尺映画で、途中「INTERMISSION」(休憩)が入る。3時間見るのは忍耐も必要(笑)。
大林監督は集大成といわれた前作「花筐/HANAGATAMI」(2017年12月公開)を完成させたが、休暇を兼ねて故郷の広島・尾道で兼ねて気軽にエンターテインメント作品を撮ってみてはとの誘いを受けて、直後から広島での巡演中に被爆し全滅した移動劇団「桜隊」を題材として本作の企画に着手し完成させた。評価は賛否あるようだ。2時間以内にコンパクトにできなかったのか。
・・・
尾道の海辺にある唯一の映画館「瀬戸内キネマ」が閉館を迎えた。最終日は「日本の戦争映画大特集」のオールナイト興行。そこで映画を観ていた若者3人は、突然劇場を襲った稲妻の閃光に包まれ、スクリーンの世界 にタイムリープする。
戊辰戦争、日中戦争、沖縄戦、そして原爆投下前夜の広島。そこで出会ったのは移動劇団「桜隊」だった。「桜隊」を救うため、3人の男たちは運命を変えようと奔走するのだが…。
・・・
「赤紙」(召集令状)1枚で、戦争に駆り出されるのは若者たち。届ける人は今でいう公務員か役所の人で「おめでとうございます」と言って届ける。「ついに来たか」と家族は本来、肩を落とすはずが、反対すれば憲兵(国家警察)に捕らえられるので、赤飯を炊いて「万歳三唱」で戦地に送り出さなければならない。
移動劇団が列車で広島方面に移動するシーンでは、タイムスリップした3人が、劇団員に時間を聞くと「8月6日」という。8月6日といえば原子爆弾が落ちた日で、まさにその現場に向かうところだった。
作品名の「海辺の映画館」は大林の妻でプロデューサーの恭子が、副題の「キネマの玉手箱」は「その誕生以来、世界中の人々を驚嘆させ、感動の嵐に巻き込んだキネマ=映画なる人類の玉手箱に敬意を捧げ」として大林が名付けた。
「気軽にエンターテインメントを」のつもりで着手したという作品だが、やり始めたら本気になり、キャスト、スタッフ総勢300人が関わり、上映時間がなんと3時間に及ぶ映画となった。大林の抱く「反戦」「厭戦」の思いが全編に貫かれた前作を上回る大作として完成した(Wikiより)。
「アラビアのロレンス」や「ドクトル・ジバゴ」ならいざ知らず、邦画で「インターミッション」が入るとは!(笑)。劇中、インターミッションの際には、ナレーションで「休憩タイム」「おトイレタイム」などと説明まで入る。
晴れた日であってもざあざあ「雨」のシーンが多く、子供時代の童謡「蛇の目でお迎え、うれしいな♪」という歌が登場していた。子供が雨の日には、母親が蛇の目傘で迎えに来てくれる嬉しさを歌ったものだ。
大正から昭和初期の詩人・中原中也(30歳没)の詩が随所に登場している。沖縄の方言などは琉球語として殆ど分からないが「字幕」があった。白虎隊などを演じるシーンなど、劇中劇も本格的な撮影だった。
観客が映画の中に入り込んだり、鮮やかな原色に近い色やモノクロなどの映像美の他、サイレント、ミュージカル、時代劇、アクションなど様々な要素が詰め込まれ、反戦へのメッセージが込められている。
成海璃子がヌードを見せるなどで「PG12」。脇役陣が豪華で、常盤貴子、小林稔侍、白石加代子、尾美としのり、武田鉄矢、片岡鶴太郎、柄本時生、浅野忠信、伊藤歩、品川徹、笹野高史、満島真之介、渡辺えり、などが出演。笹野高史は3役を演じるが、まさかのシーンもある。
■主な登場人物:
馬場毬男:厚木拓郎
鳥鳳介:細山田隆人
団茂:細田善彦
希子(のりこ):吉田玲
芳山和子:山崎紘菜
橘百合子:常盤貴子
杵馬(瀬戸内キネマ支配人):小林稔侍
爺・ファンタ:高橋幸宏
老婆(チケット売場):白石加代子
能を踊る男:南原清隆
酒匂允(苦力姿):浅野忠信
お通:入江若葉
お季:根岸季衣
奈美子 (新聞記者、爺・ファンタの娘):中江有里
愛姫 (滝の中国女) :川上麻衣子
成田中尉:マフィア梶田
金城亀二:満島真之介
金城亀吉(村長):大森嘉之
宮地節子(列車のおばさん):渡辺えり
ほか
■「にほんブログ村」にポチッとお願いします。